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国宝-工芸|梵鐘[観世音寺/福岡]

国宝DB-工芸

国宝『観世音寺 梵鐘』

現存する最古級の梵鐘で、国宝に指定されている京都の『妙心寺 梵鐘』と同じ型で作られた「兄弟鐘」だと考えられており、ほぼ同じ大きさをしている。 妙心寺の梵鐘には「戊戌年(698年)」の銘が入っており、観世音寺の梵鐘もそれほど遠くない時代のものだと考えられる。

上帯・下帯(鐘の上下にリボン状に入る装飾)はそれぞれ異なる唐草模様で、妙心寺鐘の模様とも異なる。 上部に「天満」という文字が2か所入り、他にも文字が刻まれているが部分的にしか読み取ることができない。

菅原道真の漢詩「都府楼纔看瓦色 観音寺唯聴鐘聲(都府楼はわずかに瓦色を看る 観音寺はただ鐘声を聴く)」は、この鐘を詠んだもの。 現在でも境内にある鐘楼に吊られており、大晦日には整理券式で一般でも撞くことができる。

国宝 梵鐘[観世音寺/福岡]
国宝 梵鐘[観世音寺/福岡]
国宝 梵鐘[観世音寺/福岡]

観世音寺のこと

大宰府政庁の東に位置する観世音寺は、天智天皇が母である斉明天皇の菩提を弔うために発願した。 奈良時代には中国から渡ってきた鑑真によって、僧に位を授けるための「戒壇」を行う戒壇院が設けられた。(現在は別の寺院「戒壇院」として残っている) 日本で3寺のみの戒壇院として繁栄するが、平安期以降は衰退し、現在の建造物は江戸時代に黒田家の寄進により再建されたもの。 国宝の『梵鐘』の他に、平安~鎌倉時代の仏像などの宝物があり、宝蔵で公開されている。

福岡県太宰府市「観世音寺」

この国宝を観るには

2023/4/3追記
以前は境内の鐘楼に吊るされていたが、2020/9/1から九州国立博物館で展示され、引き続き2024/3/31までは博物館で展示される模様。

境内(無料)にある鐘楼に吊るされており、9~17時は自由に観ることができる。 大晦日の除夜の鐘は、整理券式で一般でも撞くことができるが、人気があり夕方ごろから並ぶ人もいる。

文化財指定データ

【台帳・管理ID】201-431
【指定番号】00136-00
【指定名称】梵鐘
【ふりがな】ぼんしょう
【員数】1口
【国】日本
【時代・年】奈良時代
【寸法・重量】総高159.4cm、竜頭高35.4cm、笠形高5.5cm、肩以下高118.5、口径86.4cm、口厚5.6~6.5cm、撞座径17.0cm、撞座中心高49.4cm
【品質・形状】鋳銅製。竜頭はあらけづりの力強い表現になり、極めて大形で丈は総高の二割を超す。笠形は低平。紐をめぐらして内外両区に分かち、上帯、下帯は各々異なる連続唐草文を力強い掻き彫りで陽鋳する。撞座は蓮肉の大きい複弁十二葉で、姿美しく、その位置は古式で中心の高さは高く、肩までの約四割に及ぶ。身の下端には二条の紐めぐらすのみで駒の爪はなく、乳は四段七列とする。外型は肩以下二段で、鋳帯中央で上下に分かち、中型には挽目が見える。総体に火中の火膚が著しい。
【画賛・銘等】笠上に「天満」「天満」二カ所陰刻。口唇下面に「上三毛[   漆カ]麻[呂カ   」陰刻。(空欄字数不明)
【所在地】観世音寺
【国宝指定日】1953.11.14
【説明】上下帯の文様を除いて鐘身は妙心寺鐘とほとんど同寸で、竜頭は同趣ながらさらに雄渾である。上下帯の文様もまた力強いが、恐らく妙心寺鐘と相前後して同じ鋳物場で製作されたものであろうとされている。

出典:国指定文化財等データベース一部抜粋

鑑賞ログ

2019年8月

九州国立博物館での「室町将軍展」に行く途中で立ち寄り。 境内は静かで華やかさはないけど、さりげなく国宝が吊るされていました。 国宝の看板はあるけどあまり注目されることもなく、もったいない。 ¥500の宝蔵には5mを超える平安期の馬頭観音立像があって大迫力。 そのうち国宝になるのでは。

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