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特集|令和6年(2024年)新指定国宝

特集・まとめ・資料

令和6年(2024年)新指定国宝

2024年3月15日の文化審議会で、6件の美術工芸品が国宝に、36件の美術工芸品が重要文化財に指定を答申したことが発表されました。 実際に国宝や重要文化財に指定されるのは、官報告示のタイミングなので、まだ数か月先になります。 発表されたのは令和5年度(2023年度)ですが、指定される頃には令和6年度(2024年度)になっていると予想されますので、タイトルは令和6年(2024年)にしました。

美術工芸品の前回の国宝発表は令和4年(2022年)の11月18日で、その前年に続き三の丸尚蔵館の所蔵品が多く、それ以外の国宝は『北海道白滝遺跡群出土品』だけでした。 今回の三の丸尚蔵館は、国宝は1件のみですが、重要文化財は4件が指定されるようで、近代の美術工芸品が増えてきました。 仏像が国宝に指定されるのは久しぶりで、2020年に指定された法金剛院の『阿弥陀如来坐像(院覚作)』以来なので、仏像ファンはきっと盛り上がりますね。 それから、調査結果がニュースになっていた藤原道長埋納の経巻は、金峯神社と金峯山寺と各1件ずつが国宝に指定されます。

東京国立博物館「令和6年新指定国宝・重要文化財」4/23~5/12

※国宝に指定されることが発表された段階で、まだ国宝に指定されていません

国宝『木造六観音菩薩像・地蔵菩薩立像』[大報恩寺/京都]
国宝『金峯山経塚出土紺紙金字経』[金峯神社/奈良]
国宝『金峯山経塚出土紺紙金字経』[金峯山寺/奈良]
国宝『三重県宝塚一号墳出土埴輪』[三重県松阪市]

※以下2件は写真パネルやモニターでの展示で現物は公開されません
国宝『和漢朗詠集(雲紙)』[皇居三の丸尚蔵館/東京]
国宝『多賀城碑』[国(文化庁)]

皇居三の丸尚蔵館「皇室のみやび-第3期 近世の御所を飾った品々」3/12~5/12

国宝『和漢朗詠集(雲紙)』
国宝『更級日記』藤原定家筆(2023年国宝指定)

新しく指定される国宝

木造六観音菩薩像・地蔵菩薩立像[大報恩寺/京都]

正式名称よりも通称の「千本釈迦堂」の方が通りがいい西陣の大報恩寺、国宝の『本堂』は京都市内で一番古い木造建築です。

今回国宝に指定される六観音像は、慶派仏師の肥後定慶らによって製作されたもので、等身大よりもやや大きく、着色をしない素木の檀像です。 輪廻で巡る6つの世界=六道に、それぞれを救うという観音が充てられた六観音は平安~鎌倉頃に流行ったのだそうで、こちらは6躯全てが揃った現存唯一の作例です。 像内に納められた納入経も附として指定されます。

六観音と一緒に伝来した地蔵菩薩像は、作風に共通点が多く、セットとして作られたと考えられていて、今回7躯があわせて国宝に指定されるようです。

大報恩寺の霊宝殿に安置されていますが、現在は数躯が不在のようです。

和漢朗詠集(雲紙)[皇居三の丸尚蔵館/東京]

倭漢朗詠集は、和漢朗詠抄や和漢集などとも呼ばれて、平安中期の公家で歌人の藤原公任によって選ばれた朗詠(声に出して歌うように読むこと)のための歌集です。 名前の通り、和歌と漢詩が交互に書かれているので、行書などで書かれた漢詩と仮名で書かれた和歌の形式の異なる書を楽しむことができます。 倭漢朗詠集はすでに3件が国宝に指定されていてそれぞれに魅力がありますが、こちらは右下と左上に藍で染めた紙を透きかけた「雲紙(くもがみ)」という料紙を使っていて、その配置が珍しいだけでなく、現存最古の雲紙というのも国宝に指定されたポイントのようです。

2024/3/12~5/12に皇居三の丸尚蔵館で開催されている「皇室のみやび-第3期 近世の御所を飾った品々」展で公開されています。

金峯山経塚出土紺紙金字経[金峯神社/奈良]

藤原道長が41歳の寛弘4年(1007年)に、吉野の金峯山に参拝して自筆の法華経を金銅製の経筒に入れて埋納しました。 この様子は国宝『御堂関白記』にも記されていて、出土した金峯神社所有の国宝『金銅藤原道長経筒』の表面に彫られた銘文の記録とも一致します。 その後約80年後の寛治2 年(1088年)には、道長のひ孫の藤原師通が自筆の法華経を埋納しています。

今回は、金峯神社と金峯山寺の経典が、同じ名称で同時に国宝に指定されるようで、文化庁の資料を見ると金峯神社の項目には藤原師通による経巻の写真が載っています。 同資料によると、79 紙が一括で国宝に指定されたようで、この中に道長筆の写経が含まれるのか不明です。

2024/4/27~5/19に大津市歴史博物館で開催される「紫式部と仏教」展に、金峯神社所蔵の重要文化財として出展予定の記載があります。

参考:国宝『金銅藤原道長経筒』複製

金峯山経塚出土紺紙金字経[金峯山寺/奈良]

1つ上の金峯神社の埋納経と一連のもので、2015年に金峯山寺の納戸から、風呂敷に包まれて木箱に入った状態で発見されたのだそうです。 その後、調査されていたようで、昨年12月頃に道長の直筆ということがニュースになっていました。

こちらは、2024年度「紡ぐプロジェクト」の修理助成の対象に選ばれて修理中のようで、順調なら2026年度に公開されるようです。 ということは、東博で開催される新国宝お披露目展示では観られないのでしょうか。

2024/4/27~5/6に五島美術館で開催される「王朝文化へのあこがれ」で、過去に流出して現在は同美術館が所蔵する、藤原道長筆が長徳4年(998年)に書写した断簡が公開されます。(五島美術館の所蔵品が今回国宝に指定されたわけではなく、元々金峯山寺と金峯神社のどちらのものだったか不明です)

多賀城碑[国(文化庁)]

多賀城(たがじょう)は、仙台と松島の中間あたり(現在の多賀城市)にあった陸奥国の国府で、この石碑には多賀城に関する様々な情報が彫られています。 神亀元年(724年)の多賀城設立など古事記にも記されていない記録があるのだそうで、1952年に国宝に指定された『那須国造碑』や群馬県高崎市にある「多胡碑」と共に「日本三古碑」に数えられていています。 古い石碑なので考古資料かと思いきや「古文書」として国宝に指定されるようで、今も東北歴史博物館からJRの国府多賀城駅を挟んで反対側約1kmほどの場所に立っているので、いつでも観に行くことができます。

三重県宝塚一号墳出土埴輪[三重県松阪市]

三重県松坂市の宝塚一号墳は全長111mもある前方後円墳で、そのくびれの辺りにある「造り出し」と呼ばれる場所から船や家などたくさんの埴輪が発掘されました。 文化庁の資料には点数が書いてありませんが、276点が重要文化財に指定されていたので、内容は同じではないでしょうか。 埴輪の中でも特に代表的なのが、全長140cm土台を含めた高さ94cmもある大型の船形埴輪で、有力者の威厳を示すように日傘や太刀がマストのように立てられていて、とても複雑に装飾されています。 古墳の壁画にもこのような船がみられるそうで、歴史的にも貴重な資料です。 国宝の古墳というと、東博所蔵の『埴輪武装男子立像』や『群馬県綿貫観音山古墳出土品』など人型のものを思い浮かべがちですが、こちらは船の他に家形や甲冑型、円筒形や壺型などで、当時の文化や生活を思い浮かべることができて面白いです。

松坂城跡に隣接する松阪市文化財センター(通称:はにわ館)で常設展示されているので、毎週月曜と年末年始などの休館日以外の日中は、いつでも観ることができます。

新しく指定される重要文化財

絵画

天子摂関大臣影[皇居三の丸尚蔵館/東京]
厩図[皇居三の丸尚蔵館/東京]
披錦斎図[根津美術館/東京]
日吉山王・祇園祭礼図(土佐光茂筆)[サントリー美術館/東京]
釈迦三尊像[林泉寺/愛知]
遊行上人絵伝[金蓮寺/京都]
五百羅漢図[知恩院/京都]
繋馬図(狩野山雪筆)[清水寺/京都]
羽衣天女(本多錦吉郎筆)[兵庫県立美術館]
波切村(小野竹喬筆)[笠岡市立竹喬美術館]

彫刻

如来立像(法隆寺献納)[東京国立博物館]
牛頭天王座像・女神座像[八坂神社/京都]
南禅寺伝来諸像[河津平安の仏像展示館]
阿弥陀如来立像・地蔵菩薩立像[安楽寺/三重]
観音菩薩立像(玉虫厨子安置)[法隆寺/奈良]

工芸品

銅色絵太平楽置物[皇居三の丸尚蔵館/東京]
菊蒔絵螺鈿書棚(川之邊一朝・海野勝珉作)[皇居三の丸尚蔵館/東京]
小袖裂幡[国(文化庁)]
赤地牡丹唐草文錦直垂[東京国立博物館/東京]
百草蒔絵薬簞笥(飯塚桃葉作)[根津美術館/東京]
金銅雲龍文簪[沖縄県立博物館・美術館]

書跡・典籍

元版一切経[園城寺(三井寺)/滋賀]
北野天満宮聖廟法楽和歌[北野天満宮/京都]

古文書

多賀城関連遺跡群出土木簡[多賀城市/宮城]
多賀城関連遺跡群出土漆紙文書[多賀城市/宮城]
中山法華経寺文書[法華経寺/千葉]
西福寺文書[西福寺/福井]
青方文書「長崎歴史文化博物館」

考古資料

北海道西島松5遺跡出土品[恵庭市/北海道]
宮城県多賀城跡出土品[多賀城市/宮城]
福島県天王山遺跡出土品[白河市/福島]
栃木県上神主・茂原官衙遺跡出土刻書瓦[宇都宮市・上三川町/栃木]
千葉県殿塚古墳・姫塚古墳出土埴輪[観音教寺/千葉]
奈良県ホケノ山古墳出土品[奈良県]

歴史資料

飛脚問屋井野口屋記録[大阪経済大学]
広島頼家関係資料[広島県]


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