井戸茶碗とは
15~16世紀頃に朝鮮半島で焼かれた陶器で、当地では白磁や青磁などが価値が高く、庶民の雑器として使用されていたという。 室町時代に日本にもたらされ、桃山時代になると茶の湯の「侘び」の好みにあい、抹茶茶碗として珍重された。
黄褐色や灰白色の土に枇杷色の釉薬をかけ、焼くと表面が鮫肌状になる。 焼成でできるひび割れの「貫入(かんにゅう)」や、高台にできる釉薬だまりの「梅花皮(かいらぎ)」の変化を楽しんだ。
国宝『井戸茶碗』銘 喜左衛門
井戸茶碗の中で大ぶりなものを「大井戸」といい、名物とされるものが多かった。 この喜左衛門は、大井戸の代表ともいえる豪快なもので、井戸茶碗では唯一国宝に指定されている。 やや色の濃い枇杷色で、ところどころ茶褐色が入り、口はゆったりとしたゆがみがあり、梅花皮は変化に富む。
町人の「竹田喜左衛門」が所有したが、体中に腫物ができても手放さず、その後の所有者も腫物に悩まされる。 やがて、松平治郷(不昧)の所有となるが、やはり腫物に悩まされ、没後にはこの茶碗を譲られた長男にも腫物ができたため、文政5年(1822年)に大徳寺の塔頭「孤篷庵」に寄進された。
この国宝を観るには
孤篷庵では公開されず、展覧会などで観られることがある。
公開履歴
2022/10/8~12/4 京都国立博物館「京に生きる文化-茶の湯-」
2018/4/21~6/17 三井記念美術館「大名茶人・松平不昧」
2017/10/31~11/29 京都国立博物館「国宝展」
2017/4/28~6/4 東京国立博物館「茶の湯」
2014/10/15~12/7 東京国立博物館「日本国宝展」
2013/11/2~12/15 根津美術館「井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-312
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00026-00
【種別】工芸品
【指定名称】井戸茶碗〈銘喜左衛門/〉
【ふりがな】いどぢゃわん(めいきさえもん)
【員数】1口
【国】朝鮮
【時代・年】李朝時代
【寸法・重量】高9.8cm、口径15.4cm、底径5.3cm
【品質・形状】やや開き気味に立ち上がった形姿で、内外にかかった釉薬は枇杷色をした長石と土灰の混合釉。高台から高台際にかけてカイラギがある。胴の一部に漆繕いが見られる。
【伝来・他】竹田喜左衛門-本多能登守忠義-寛永11年・中村宗雪-寛延4年・塘氏-安永年間・松平不昧-文政5年・孤篷庵
【所有者】孤篷庵
【国宝指定日】1951.06.09
【説明】高麗茶碗の中でも桃山時代以来尊重された井戸茶碗は、名物手、小井戸、小貫入、青井戸などにわけられ、このうち特に重視されたのは名物手、大井戸茶碗であり、喜左衛門はその代表作である。茶碗の荘重な形姿、高台まわりに生じる井戸特有のカイラギ状の釉景色の見事さが特色である。