国宝『梵鐘』
梵鐘の銘に「劔御子寺鐘神護景雲四年九月十一日」とあり、奈良時代の神護景雲4年(770年)に制作(または奉納)され、有銘の鐘では、日本で3番目に古いもの。 劔御子寺は、劔神社境内にあった寺院名で、劔神社は劔御子寺の神宮寺であり、神仏習合が進んでいたことがわかる。
社伝では、吉備真備が銘を書き光仁天皇が奉納したとされ、これには道鏡の失脚がかかわっているとされる。 また、豊後から運ばれた梵鐘2つのうち1つが沈み、引き上げようとすると恐ろしいことが起きたという伝説があり、沈まなかった鐘がこの梵鐘だといわれる。
梵鐘は、高さに対して口径がやや大きく、中帯と下帯の間の「草の間」に、縦書3行16文字で銘が陽刻されている。 昭和44年(1969)に宝物殿が完成してからは、鳴らされることはなくなったが、音色は妙心寺の国宝『梵鐘』と同じ黄鐘調(おうじきちょう)といわれる。
劔神社のこと
劔神社(つるぎじんじゃ)は越前町織田にあり、同地は織田一族の発祥の地といわれ、信長は劔神社を厚く保護した。 仲哀天皇の皇子で応神天皇の異母兄「忍熊王」が、神剣によってこの地を平定し、剣を祀ったことに始まるという。
梵鐘の銘からは、神護景雲4年(770年)に神宮寺として存在し、続日本紀によると、翌年の宝亀2年(771年)には「剣神」に御位と封戸が充てられている。 平安時代の「延喜式新名帳」に記される越前国二宮「剣神社」は、劔神社だとされる。
この国宝を観るには
劔神社に隣接する「越前町 織田文化歴史館」に寄託され、常時公開されている。
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-479
出典:国指定文化財等データベース一部抜
【指定番号】00188-00
【種別】工芸品
【指定名称】梵鐘
【ふりがな】ぼんしょう
【員数】1口
【国】日本
【時代・年】神護景雲4年(770年)
【寸法・重量】総高110.0cm、龍頭高13.6cm、笠形高7.9cm、肩以下高88.5cm、撞座中心高31.5cm、口径74.0cm、笠径53.6cm、撞座横径12.4cm、縦径11.5cm、口唇厚5.7cm
【品質・形状】鋳銅製。龍頭は宝珠火焔を欠損するが、厚みのある力強い構成でしっかと笠上を噛む形に作る。笠形はやや中央に小高く盛り、圏條二本をめぐらして内外二区に分かち、笠上周辺に近く
【画賛・銘等】「劔御子寺鐘/神護景雲四/年九月十一日」
【所在地】越前町織田文化歴史館
【所有者】劔神社
【国宝指定日】1956.06.28
【説明】鐘の形状、細部の手法などは奈良時代の特色をよく示し、龍頭は形状優れ、肌の荒びと相まって趣を呈する。奈良時代の紀年銘を有する鐘三口のうちの一つである。