十一面観音像[奈良国立博物館]

十一面観音像[奈良国立博物館]

国宝『十一面観音像』

平安時代に描かれた仏画で、一般的に仏画は正面を向き色彩はベタ塗されることが多いが、やや右(向かって左)を向き、立体的に見えるように色のグラデーションを付ける「隈取」が施されるのが珍しい。 これは類例品などをみると、奈良時代~平安初期の様式に近いと思われる。 江戸時代に修理された墨書が表具に残り、歓喜天の本地仏として文政4年(1821年)当時は法起寺にあったことがわかる。

右手は手首に数珠をかけて与願印をやや内側に向け、左手には蓮華を挿した水瓶を胸にかかげる。 頭上には観音の頭上には、菩薩面3面・瞋怒面3面・狗牙上出面3面・暴悪大笑面1面に、頂上仏面1面のあわせて11面を数える。 これは玄奘(西遊記の三蔵法師のモデル)が漢訳した「十一面神呪心経」で説いた十一面観音の姿をしている。 二重円光背と天蓋が付き蓮華座に坐して、衣は装飾性が高く瓔珞で飾られて、どれも華やかな色彩と截金で飾られ、繧繝彩色もみられる。

この国宝を観るには

所蔵する奈良国立博物館で、数年に1度程度は公開される。

公開履歴

2020/7/18~9/22 奈良国立博物館「仏教美術名宝展」※展示期間未確認
2013/7/20~8/18 奈良国立博物館「みほとけのかたち」

文化財指定データ

【台帳・管理ID】201-162
【指定番号】00153-00
【種別】絵画
【指定名称】絹本著色十一面観音像
【ふりがな】けんぽんちゃくしょくじゅういちめんかんのんぞう
【員数】1幅
【時代・年】平安時代
【所在地】奈良国立博物館
【国宝指定日】1992.06.22
【説明】十一面観音は変化【へんげ】観音のなかでも早くに成立し、日本でも奈良時代以来信仰され続けている。本図観音像は唐の玄奘【げんじよう】訳『十一面神呪心経【じゆういちめんしんじゆしんぎよう】』に説かれる姿に等しく、右手に数珠、左手には蓮華を挿した瓶(軍持【ぐんじ】)を持っている。頭上には仏面を含め菩薩【ぼさつ】面・瞋怒【しんぬ】面・狗牙上出面【くがじよしゆつ】・大笑【だいしよう】面を表す計十面の顔を載せ、悟りに至る十一の段階に対応しているとされる。
 本像の特色は顔を斜め向きに表現していることと、肉身に強い隈取【くまど】りが施されていることである。前者に関しては、平安時代後期の図像集『別尊雑記【べつそんざつき】』に掲載されている像と合致するものの、正面向きに表されることが一般的な仏画遺品のなかにあって特異な位置を占める。類例としては宝山寺蔵弥勒【みろく】菩薩像(鎌倉時代)や、図像集『諸観音図像』所載の大安寺東塔聖観音像【しようかんのん】像がある。これらは奈良時代の伝統を守る復古的な作品とみられるが、本像のように腹部に下裳を表す例が、大安寺蔵楊柳【ようりゆう】観音立像や正倉院の漆仏龕扉梵天【うるしぶつがんとびらぼんてん】像にかろうじて認められることとあわせて、本像が奈良時代の図像に則っていることを推測させる。淡い肉身表現による全体に穏和な色調を好んだ平安仏画のなかにあって、本像が強い隈取りを肌に施していることも、奈良あるいは平安時代初期の仏画表現に倣ったものと考えられる。
 いっぽうで、色隈【いろぐま】と暈繝【うんげん】を多用し豊富な切金【きりかね】文様によって荘厳【しようごん】する様式は平安時代後期の仏画に共通する。とくに同種の切金文様が峰寺蔵聖観音像や峰定寺蔵木造不動明王立像(久寿元年〈一一五四〉作)に認められることから、本図の制作期もほぼ同時期に想定される。平安時代に遡る本格的な十一面観音画像として本図は唯一の大作であり、保存状態も甚だ良好な本図の価値はきわめて高い。

出典:国指定文化財等データベース一部抜粋

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