国宝『刺繍釈迦如来説法図(勧修寺繡帳)』
京都の勧修寺に伝来した刺繡の大作で、菩薩や弟子に説法する釈迦を表している。 刺繍の技術が高く、中国から請来されたとする説と、飛鳥~奈良時代の日本で作られたとする説がある。 白平絹の生地を用い、一部分に表に玉止めを作る「相良繍い(さがらぬい)」を使うほか、大半の部分が現代のチェーンステッチ「鎖繡い(くさりぬい)」で埋め尽くされている。
中央に、獅子が支える椅子型の座に腰掛ける赤衣の釈迦如来を大きく描き、頭上は天蓋と樹木の周りで天人が楽器を奏でている。 釈迦如来の両脇には、高い位置に菩薩、その下の中央寄りに十大弟子、その外側には俗形の人々が配置される。
勧修寺(かじゅうじ)のこと
藤原高藤の娘で、宇多天皇に入内して女御となり、後の醍醐天皇を産んだ「藤原胤子」のために創建された寺院で、後世には門跡寺院となり「山科門跡」と呼ばれた。 藤原氏の一族で公家の勧修寺流一門の菩提寺であり、現在は真言宗山階派の大本山となっている。
この国宝を観るには
奈良国立博物館に所蔵されているが、布製品は劣化の影響が高いため、公開はあまり多くない。
公開履歴
2025/4/19~6/15 奈良国立博物館「超・国宝」※展示期間未確認
2023/4/15~5/21 東北歴史博物館「悠久の絆 奈良・東北のみほとけ展」
2022/4/23~5/22 奈良国立博物館「大安寺のすべて」
2021/7/17~8/15 奈良国立博物館「奈良博三昧」
2018/7/14~8/26 奈良国立博物館「糸のみほとけ」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-371
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00083-00
【種別】工芸品
【指定名称】刺繍釈迦如来説法図
【ふりがな】ししゅうしゃかにょらいせっぽうず
【員数】1面
【国】日本
【時代・年】奈良時代
【寸法・重量】縦207.5cm、横158.2cm
【品質・形状】宝樹天蓋の下に、獅子座に座って説法する赤衣偏袒右肩の釈迦を大きく中央に配し、上部には飛鳥にまたがり空をかける神仙の群れ、雲上で楽奏する天人らを、また中辺から下部にかけて…
【所在地】奈良国立博物館
【重文指定日】1902.04.17
【国宝指定日】1952.11.22
【説明】元は京都勧修寺に伝えられたもので、「勧修寺繡帳」の名で知られる。
飛鳥・奈良時代における繡仏造顕はかなり盛んであったことがうかがえるものの、その遺例は少ない。本繡帳は、二種の繡技で糸の配色、太細などを変え、変化に富んだ細やかで立体感を出した表現をした大作である。天寿国繡帳と共に、古代刺繡の双璧である。