金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図[中尊寺/岩手]

金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図[中尊寺/岩手]

国宝『金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図』

名称を分解すると「金光明最勝王経」「金字」「宝塔曼荼羅図」となり、紺紙に金泥で十重の塔が描かれているが、この塔は「金光明最勝王経」を細字で写経して作られているというもの。 経典だが「絵画」として国宝に指定されている。

宝塔曼荼羅は平安~鎌倉時代に作成されたが、国宝の指定は本品のみで重要文化財に2点指定されている。 「写経」「造塔造仏」「経典解説」と3つの功徳を一度で成就できるとされた。

1幀が経典1巻で、初層には釈迦が、塔の周りには色々な仏や衆生などが描かれている。 塔(=経典)部分や仏像は金泥で描かれているが、背景や衆生には色とりどりの色彩が使われている。

公開履歴

2019/9/3~9/29 東京国立博物館 国宝室

文化財登録データ

【台帳・管理ID】201-874
【指定番号】00155-0
【指定名称】紺紙著色金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図
【員数】10幀
【国・時代】日本・平安時代
【所在地】岩手県
【所有者】中尊寺大長寿院
【国宝指定日】2001.06.22
【解説】各幀はそれぞれ、紺色に染めた紙を二枚継いだ上に金泥で経文を宝塔の形に書き、左右および下方に紺紙を足し、金銀泥および彩色により経意を絵画化した場面を配している。さらに上下に金銀泥による宝相華文帯を継いでいる。上部に付けられた文様帯の中央に短冊形を画し、金泥で「最勝王経巻第一塔」等と題を記している。宝塔は九重で、経は塔の最上部、相輪頂上から起筆している。塔の初層に説法相の釈迦如来一体を描いている。塔の下辺および諸所に風景を背景に礼拝する人物が描かれているが、多くは唐装の王侯もしくは貴人男女およびその侍者たちの姿である。
 各幀とも中央に二紙を縦に継いだ本紙に宝塔を表しているが、この二紙分は周囲の紙と地色の明度が異なっており、始めに宝塔を書いた二紙の周囲に、紺に染めた紙を継ぎ足し、絵を描いたとみられる。上下の宝相華文帯はさらにその後で足されたものであろう。各幀の宝塔は同寸同型であり、型紙の使用が推測されている。
 各幀は一巻分の経文を書写している。すなわち、第一幀には序品第一と如来寿量品第二、第二幀には分別三身品第三と夢見金鼓懺悔品第四、第三幀は滅業障品第五、第四幀は最浄地陀羅尼品第六、第五幀は蓮華喩讃品第七・金勝陀羅尼品第八・重顕空性品第九・依空満願品第十・四天王観察人天品第十一、第六幀は四天王護国品第十二、第七幀は無染著陀羅尼品第十三・如意宝珠品第十四・大弁才天女品第十五之一、第八幀は大弁才天女品第十五之二・大吉祥天女品第十六・大吉祥天女増長財物品第十七・堅牢地神品第十八・僧慎爾耶薬叉大将品第十九・王法正論品第二十、第九幀は善生王品第二十一・諸天薬叉護持品第二十二・授記品第二十三・除病品第二十四・長者子流水品第二十五、第十幀は捨身品第二十六・十方菩薩讃歎品第二十七・妙幀菩薩讃歎品第二十八・菩提樹神讃歎品第二十九・大弁才天女讃歎品第三十・付属品第三十一、以上である。
 唐の義浄訳『金光明最勝王経』十巻は、代表的な護国経典として奈良時代に特に篤く信奉され、平安時代以降も読誦・写経され続けた。本図の制作背景は不詳であるが、この経を弘布する国王があれば四天王や弁才天がその国土を擁護し、人民を安穏ならしめると本経に説かれており、本図でも四天王あるいは財福神としての女天が繰り返し描かれていることから、奥州経営の安穏を藤原氏が願って制作を発願したことが推測される。
 中尊寺関連の経絵としては清衡願経といわれる金銀字交書一切経(和歌山・金剛峯寺ほかに分蔵)、基衡願経の法華経(静岡・妙立寺ほかに分蔵)、秀衡願経の金字一切経(岩手・大長寿院ほかに分蔵)などが知られている。これらの見返絵と比べると、本図は秀衡願経とともに本格的な絵画と言うべき出来映えを示しているが、両者では画風が若干異なっている。ただし、本図では宝塔初層内における釈迦如来は細緻に描いている一方で、霊鷲山をはじめとする風景や説法図等に、経典見返絵に共通する略画風の表現が認められる。また、本図の上部に付けられている宝相華文様も経典見返絵と共通性が高く、保延六年七月の奥書がある基衡願経法華経表紙の宝相華などと近似しているが、他方秀衡願経ではより形式化が進んでいるように見え、さらに厳島神社に奉納された数種の法華経表紙の宝相華文様より古様を示している。すなわち、本図の制作期は一二世紀半ばより遡ることが推測される。また、松平家旧蔵の香川県所有法華経は彩色による見返絵を持つ点で本図と共通するが、山岳の表現などよく似ている。本経は「志ん女かく」と三巻分の巻末に書されていることから、女性の発願と考えられているが、最勝王経が弁才天や吉祥天といった女天に対する信仰を説いていることに着目し、本図についても奥州藤原氏の特に女性による発願ではないかとする説も立てられている。
 本図は宝塔曼荼羅として特異な形式をもつ絵画ジャンルの代表作であり、かつ金銀泥と彩色を共存させる画風は他に例がなく、独自の表現として注目されている。また、本図には複数の四天王像や阿弥陀三尊、虚空蔵菩薩など仏教図像学的に興味深いものや、捨身飼虎図のような説話画、さらに多数描き込まれた女性像や情緒豊かなやまと絵風景など、平安時代の仏画あるいはやまと絵資料として美術史的に極めて高い価値を有している。十巻が完存していることも特筆されよう。

出典:国指定文化財等データベース一部抜粋

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