国宝『赤韋威鎧(兜・大袖付)』
平安時代後期に作られた大鎧で、小札を赤い韋で威して(小さな板を革紐で結びあわせること)おり、この様式は絵巻物などに描かれているが、現存はこの1点のみ。 この時代の現存する大鎧としては、装飾性の高い寺社への奉納用に作られたものではなく、実用のために作られたという点で大変貴重である。 備中国(現在の岡山県の一部)の赤木家に伝わったもので、赤木家は承久の乱で功績をあげた恩賞として備中地方を与えられた一族。
この国宝を観るには
2020年4月から3年をかけた大規模改修で休館していた岡山県立博物館では、毎年お正月に公開されていたが、リニューアル開館後の正月には公開されず2024年4月に公開される。 今後の展示については不明。
公開履歴
2025/4/26~6/15 大阪市立美術館「日本国宝展」※展示期間未確認
2024/4/12~5/6 岡山県立博物館「赤韋威鎧と備前の名刀」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-6968
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00255-00
【種別】工芸品
【指定名称】赤韋威鎧〈兜、大袖付/〉
【ふりがな】あかかわおどしよろい〈かぶと、おおそでつき〉
【員数】1領
【時代・年】平安時代
【附指定】唐櫃 1合
【品質・形状】兜と大袖を具備した大鎧である。胴の仕立ては前立挙二段、後立挙三段、衡胴四段とし、草摺は脇楯を含め四間としてその前後を四段、左右を五段下がりとする。札は黒漆塗の大型三ツ目札で、要所を鉄革交ぜとしている。威毛は赤引染革の毛引威とする。金具廻りの染韋は菱襷に撫子丸文、獅子丸文、桜草丸文などである。脇楯の壺板は鉄製二枚矧ぎ、後立挙の二段目中央には総角付鐶を打っている。 兜鉢は鉄製黒漆塗、一〇間の星兜で、鉄の無垢星を一行五点ずつ一〇行並べている。正面には鉄の鎬垂を一条伏せ、天辺には金銅八幡座後補)を打つ。眉庇・吹返は獅子牡丹文の染韋包で、大型の金銅据文金物を打っている。しころ(革毎)は三ツ目札五段下がりで、札の要所を鉄革交ぜとしている。大袖は三ツ目札六段下がりで、仕様は胴に準ずる。また胴に栴檀板・鳩尾板が付属している。
【所有者】岡山県
【保管場所】岡山県立博物館
【重文指定日】1969.06.20
【国宝指定日】1999.06.07
【説明】本鎧はかつて備中国赤木家に伝来したもので、兜の眉庇の染韋や金銅据文金物など、一部に鎌倉時代の改変が加えられているものの、総体に製作当初の姿をそのままに伝え、かつ大型三ツ目札を用いる点、草摺を前後四段、左右五段下がりとし、前の裾を分割しない点、菱襷に撫子、桜草、獅子の丸文などの染韋、粒の粗い星を有する小振りな兜鉢など、平安時代後期の大鎧に共通する古様な形制を随所に示す。実用性の高い豪壮な趣を有する大鎧として、昭和四十四年に重要文化財に指定された。すでに国宝に指定されている平安時代大鎧の多くが神前に奉納されたもので、近世以降に大幅な補修を受けているなか、そうした後補の手が加えられずに伝えられた大鎧の遺例として、その価値は甚だ貴重である。