榮山寺(栄山寺)のこと
藤原不比等の長男で、藤原南家の家祖となる「藤原武智麻呂(ふじわらのむちまろ)」が養老3年(719年)に建立した寺院で、藤原南家の菩提寺となる。 南北朝時代には、南朝の後村上天皇・長慶天皇・後亀山天皇の仮の御所「行宮」になったこともある。
榮山寺の前には、深い緑色で緩やかに吉野川が流れており、この付近では「音無川」と呼ばれる。 これは、空海が榮山寺で修業していた時に、川音がうるさくて集中できず、仏に祈り筆(または石)を投げたところ、川音が静かになったという伝承による。
国宝『八角堂』
榮山寺を創建した藤原武智麻呂ら藤原4兄弟が天然痘で亡くなると、武智麻呂の子で後に恵美押勝(えみのおしかつ)に改名する藤原仲麻呂が、父の菩提を弔うために八角堂を建立した。 天平宝字4年(760年)~天平宝字8年(764年)頃の建立とされる。
堂の中心には正方形の須弥壇があり、その4隅に建つ八角柱が構造上重要な柱になっている。 かなり剥落は進んでしまっているが、内陣の柱や天井には奈良時代の壁画が残っており、絵画として重要文化財に指定されている。 描かれる菩薩や飛天、迦陵頻伽などは、正倉院宝物にみられるような典型的な天平美人のように描かれ、東大寺に残る仏画資料との共通点が指摘されている。
この国宝を観るには
榮山寺は常時拝観を受け付けているので、9:00~16:00には¥500の拝観料で、外観を観ることができる。 本堂の奥には資料館が併設されており、八角堂内部壁画の写真などが展示されている。
4/25~5月最終日曜日と、10/25~11月最終日曜日までは「特別ご開帳」として、拝観料と別に¥400の特別拝観料で、八角堂の中に入ることができる。 境内には国宝『梵鐘』を吊るす鐘楼堂があり、梵鐘を間近で観ることができる。
文化財指定データ
【台帳・管理ID】102-02655
出典:国指定文化財等データベース一部抜
【指定番号】00069
【種別】近世以前/寺院
【指定名称】榮山寺八角堂
【ふりがな】えいざんじはっかくどう
【員数】1棟
【時代・年】天平宝字
【構造・形式】八角円堂、一重、本瓦葺
【附指定】旧石露盤残欠(宝珠)1箇
【所在地】奈良県五條市小島町
【国宝指定日】1952.03.29