湖南三山 常楽寺のこと
滋賀県、琵琶湖の南東に位置する3寺「常楽寺」「長寿寺」「善水寺」は、平成16年(2004年)に合併で「湖南市」ができたのを機に「湖南三山」と称するようになる。
常楽寺は、良弁僧正を開基として、紫香楽宮の鬼門封じとして建立されたと伝わる。 1kmほどの距離にある「長寿寺」と共に、平安~鎌倉時代には歴代天皇の帰依が厚く、阿星山五千坊と呼ばれるほど栄えた。 長寿寺は「東寺(ひがしでら)」、常楽寺は「西寺(にしでら)」と呼ばれている。
国宝『常楽寺 三重塔』
常楽寺は、延文5年(1360年)に落雷で伽藍を焼失するが、本堂は翌年には再建された。 三重塔は40年後の応永7年(1400年)に再建されたもの。 本堂を正面から見た時に、左奥のやや小高い位置に建てられ、三重塔を回るように裏山の歩道が整備され、様々な角度から三重塔を眺めることができる。
和様で建てられており、高さ23m弱と天台宗の三重塔では一番高い。 三重塔の本尊は釈迦如来座像で、壁には釈迦説法図が描かれている。 「塔」は本来は釈迦の歯骨を仏舎利としてまつるものだったが、天台宗では釈迦の根本経典となる法華経を安置して、その功徳によって国家安泰などを祈願した。
この寺院の国宝
この国宝を観るには
毎年秋に「湖南三山紅葉めぐり」キャンペーンがあり、その期間は予約無しで拝観することができる。 それ以外の期間は事前予約が必要だが、法要などの関係で拝観不可な日も多いので注意が必要。 長寿寺までは徒歩15~20分ほどで移動できる。
文化財指定データ
【台帳・管理ID】102-1458
出典:国指定文化財等データベース一部抜
【指定番号】00114
【種別】近世以前/寺院
【指定名称】常楽寺三重塔
【ふりがな】じょうらくじさんじゅうのとう
【員数】1基
【時代・年】応永7年(1400年)
【構造・形式】三間三重塔婆、本瓦葺
【附指定】丸瓦及び平瓦 1個
【所在地】滋賀県湖南市西寺
【国宝指定日】1953.03.31
【説明】常楽寺は延暦寺に属する天台宗寺院で、通称西寺といい、近在の東寺‐長寿寺とともに栄えてきた。三重塔は本堂後方左手の一段高いところに建つもので、建立年代については応永五年(一三九八)の勧進状が残っているほか、瓦に同七年の箆書をもつものがあって明らかである。
初重総間四・五六メートル、総高二二・八メートル、三重塔としては標準的な規模をもつ。全体の比例をみると、相輪長さは総高のちょうど三分の一、総高は初重総間の五倍、塔身高は同じく三・三倍で、これまた遺構の平均的な数値である。柱間寸法の決定は、初重総間を一五尺として中央間一二枝、脇間十枝に割つけ、二重・三重はそれより中央間で二枝脇間で一枝ずつ減らすといった、明快な枝割によっている。その結果、三重総間は初重の七割五分となるが、この平面の逓減も三重塔の平均値にあたる。様式手法は内部の須弥壇を除いては純和様からなり、きわめて正統的である。初重内部に仏画や装飾文様を描いているのはめずらしくないが、天台宗寺院の塔でありながら板壁に真言八祖像を描くのは興味深い。
この塔は伝統的な手法をもつ形通りの三重塔で、均整のとれた比例や整然とした枝割計画をもち、室町時代三重塔の代表作といえる。本堂後方の高いところに塔を建てる配置も、中世の地方密教寺院には多い。