春日大社国宝殿
春日大社の所蔵する宝物を保管・展示するために、平成28年にリニューアルオープンした施設です。 1Fは神域をイメージした音と光の空間からスタートし、外からも見える舞楽の大型楽器「鼉太鼓(だだいこ)」が展示されています。 本格的な展示室は2Fにあり、20~30点ほどが展示できる大きい部屋と、その1/3ほどの小さい部屋に分かれています。 国立博物館に比べると値段の割に品数が少なく感じるかもしれませんが、キャプションも丁寧に書かれていて、所蔵館ならではの凝った企画をされています。
鼉太鼓【Da-daiko】―超迫力の鎌倉彫刻、復活した世界最大級の太鼓―展
1Fに展示されている一対の大型の打楽器が「鼉太鼓(だだいこ)」で、12月に行われる「春日若宮御祭」の演奏にも使われます。 源頼朝の寄進と伝わる重要文化財の鼉太鼓は傷みが激しく、レプリカを作り現在はそちらが使われています。 1Fに展示してある鼉太鼓はそのレプリカで、オリジナルの鼉太鼓は4年に及ぶ修理が完了して、今回がそのお披露目の企画展です。
修理が完了した鼉太鼓の他、鼉太鼓が使われる「舞楽」に関する展示や、神様に供えられた「神宝」の中から楽器類が出展されていました。 源氏物語などお好きな方はグッと来る企画なのではないでしょうか。 前期・後期に分かれていますが、1つだけ2点ある面を前後で入れ替えるだけで、その他は前後通して展示されるようです。
展示 雅楽器
まず重要文化財の「鼉太鼓」です。 太鼓の革を貼ったまわりに、龍と鳳凰の彫刻がありますが、これは慶派によるものだそうです。 仏像以外の慶派の作例では最大級とのこと。 色彩は落ちていますが、彫刻を観るにはそれがちょうどよく、とても見事な姿を堪能できました。 龍の方はスペースの関係上少し短めなので、東洋の龍というよりヨーロッパのドラゴンのようです。
国宝 『本宮御料古神宝類』から「蒔絵筝」「和琴」「銀琴」「蒔絵笙」
春日大社本殿の神々に供えられた宝物類から、楽器が4点展示されます。
「蒔絵筝」は、水流と雲を蒔絵で描いた豪華なもの。
「和琴」は、装飾が少なく実用的な雰囲気ですが、細工の説明もありました。
「銀琴」は、雛道具のような小型のものです。
「蒔絵笙」は、雅楽でも使う笙で、現在の笙と同じくらいのサイズでしょうか。
どれも平安時代に作られたものです。
その他、室町~江戸時代の雅楽で使用する楽器類が10点ほど展示されています。
展示 舞楽面・装束
平安~江戸時代の面が出ていて、シルクロードの影響を受けたエキゾチックな面を摸したものから、和様が定着した時期のものまで展示されています。 15点のうち重要文化財が8点を占めています。 特にオススメなのが慶派の仏師定慶による「散手」の面でしょうか。 髭や髪も植えられていて、さすがの定慶、表情がいいですよ。 面も衣装もなかなか近くで見られませんから、絵巻物の世界を間近に感じられました。
同時開催「アート・オブ・ザ・サムライ ART OF THE SAMURAI」
外国の方向きでしょうか、外には英語と中国語のポスターも貼られていました。 7点ほどの展示ですが、サムライの身の回りの品を一通り見せてくれます。 それでも、このミニ企画で国宝の鎧兜を出してくれるのですから、さすがの春日大社です。
国宝『黒韋威矢筈札胴丸』波蛇籠蒔絵鞍・鐙
楠木正成が奉納したと伝わる鎧です。 鎧の腰や袖の部分には、小さな板を糸や革で繋げて装飾も兼ねることが多く、「黒韋威」というのは、黒い韋(革)で繋げているということです。 糸威のものより状態がよく残っていて、黒くて重々しい鎧兜です。
その他、蒔絵の馬具や籠手のような武士の拵えと、刀剣は太刀・脇差・薙刀と、まさにダイジェストですが、外国の方は見入っておられました。刀剣類は江戸~現代のもので、文化財ではないようです。
展覧会 概要
期間:2019/4/1~9/1(6/12は休館)
住所:奈良市春日野町160
時間:10:00~17:00(入館は30分前まで)
料金:大人¥500、大・高生¥300、中・小生¥200
施設:ミュージアムショップ、カフェ
場所:一の鳥居から見て本殿の手前にある、本殿と万葉植物園の間。
WEBサイト:http://www.kasugataisha.or.jp/h_s_tearoom/museum/museum2.html