明恵上人のこと
明恵は、子供の頃に両親を亡くすと親類の僧を頼り神護寺に入り、東大寺や仁和寺などで修業を重ね、後鳥羽上皇から栂尾にあった古寺を賜り高山寺を開く。 華厳の教えに密教を取り入れ、後年には栄西について禅の修行もしたという。 時代は法然が念仏を説いた頃で、明恵は旧仏教を守る立場として、著書の「摧邪輪(さいじゃりん)」で法然の批判をしている。
釈迦に強い思慕を持ち、天竺(インド)への渡航を望んだが、果たせなかったという。 非常に厳しく戒律を守り、座禅などの修行を欠かさず、著書も数多く残している。 一方、夢を40年以上にわたって書きとめたり、遺愛の品として愛らしい動物像が伝わるなど、その人柄が窺える。
国宝『明恵上人像』
鎌倉時代に描かれた明恵上人の肖像画だが、画面の大半は樹木の生い茂る山あいで、中央下部の樹上で座禅する明恵が描かれている。 明恵の弟子「恵日坊成忍」が描いたものだと伝わり、明恵の人物像をよく表しているとされ、画中には鳥やリスが描き込まれている。 同じく弟子の高信が編纂した『明恵上人歌集』が国宝に指定されている。
明恵が高山寺に入ったのは晩年だが、寺の裏山に「華宮殿」という庵を結び、その西にあった二股にわかれた松を「縄床樹」と名付け、その上で座禅をしたという。 これは樹上で座禅をする様子を描いたもので、画面上部の賛にもそれが書かれている。
この国宝を観るには
高山寺の文化財類は、国立博物館に寄託されており、現地で観ることはできない。 数年に1度程度は、展覧会などで公開されている。
公開履歴
2024/8/6~9/1 北海道立近代美術館「京都 高山寺展」
2023/11/7~12/3 東京国立博物館「やまと絵」
2022/9/3~10/16 福岡市美術館「国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」
2019/4/16~5/6 中之島香雪美術館「明恵の夢と高山寺展」
2015/4/28~5/17 東京国立博物館「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-61
出典:国指定文化財等データベース一部抜
【指定番号】00057-00
【種別】絵画
【指定名称】紙本著色明恵上人像
【ふりがな】しほんちゃくしょくきょうえしょうにんぞう
【員数】1幅
【時代・年】鎌倉時代
【所有者】高山寺
【国宝指定日】1952.11.22
鑑賞ログ
2015年5月
東京国立博物館の高山寺展です。 鳥獣戯画が大人気になってしまった展覧会で、私は(たしか)3時間半ほどで観ることができましたが、最長5時間待ちだったという噂です。
それ以外の展示はそれほど混んでいなくて、明恵上人の肖像画もじっくり観ることができました。 とても穏やかな表情で瞑想していて、この方が戒律に厳しかったというのは想像しずらい。 あの小首をかしげた子犬像や、ほっそり美しい鹿など、明恵上人遺愛と伝わる品はカワイイものが多いんです。 この画にも、カワイイ小鳥やリスが描き込まれ、枝には数珠が引っかけられていたりと、厳しい中にも愛嬌のある方だったのではと想像できます。