婚礼調度(初音調度・胡蝶調度・他)[徳川美術館/愛知]

婚礼調度(初音調度・胡蝶調度・他)[徳川美術館/愛知]

国宝『婚礼調度類』

徳川家光の第1子として誕生した「千代姫」は、わずか3歳で尾張徳川家藩主の長男で当時「徳川光友」へ嫁ぐ。 その時に持参した婚礼道具が、尾張徳川家にまとまって伝わっている。 作られた年代や目的がはっきりした調度類が、これだけまとまって残るのは珍しい。

婚礼道具の中心は、「初音の調度」と呼ばれる源氏物語の「初音」巻をテーマにした調度で、書中に出てくる和歌と松や鶯をモチーフにしている。 代表的な婚礼道具の貝桶のほか、硯箱などの文具類、化粧道具や香道具など47点が揃う。

国宝指定の中で、次に数が多いのが「胡蝶の調度」10点で、源氏物語「胡蝶」巻をモチーフとしており、船遊びを楽しむ貴人の様子が描かれている。 これらは、足利将軍家の頃から幕府の御用を務める蒔絵師の家系「幸阿弥家」によって整えられたことが、幸阿弥家の記録に残る。

国宝の内容

初音蒔絵調度 47種
胡蝶蒔絵調度 10種
蒔絵香箱 5合
蒔絵伽羅割道具 1対
長持 2棹
長袴 2腰
長刀(中身共) 1対
糸巻太刀(中身、袋共) 1口

この国宝を観るには

所蔵している徳川美術館では、常設展の第5展示室に「大名の雅び」というコーナーがあり、ここでは婚礼道具から交替で1~数点が出展されるので、開館期間であれば観ることができる。

文化財指定データ

【台帳・管理ID】201-538
【指定番号】00254-00
【種別】工芸品
【指定名称】婚礼調度類〈(徳川光友夫人千代姫所用)/〉
【ふりがな】こんれいちょうどるい〈とくがわみつともふじんちよひめしょよう〉
【時代・年】江戸時代
【所在地】徳川美術館
【国宝指定日】1996.06.27
【説明】寛永十六年(一六三九)九月二十一日、三代将軍徳川家光の長女千代姫が、二歳六か月の年齢で尾張徳川家二代藩主である光友に嫁いだ際に携えた婚礼調度類の一群である。
 本婚礼調度の中核をなす初音蒔絵調度【はつねまきえちようど】は、棚飾りや貝合わせを中心に、諸調度がまとまった大揃いの婚礼調度である。蒔絵の意匠は『源氏物語』初音の巻より取材したもので、殿舎や庭園の景を表し、明石の上が詠んだ「年月を松にひかれてふる人にけふ鶯【うぐいす】の初音きかせよ」の文字(松と鶯は実際のモチーフとして表す)を散らしている。金銀の高蒔絵【たかまきえ】を中心に、金銀の切金【きりかね】や金貝【かながい】、紅珊瑚【べにさんご】などをふんだんに使用した細緻な蒔絵により、優美華麗な王朝世界が表現されている。胡蝶蒔絵調度【こちようまきえちようど】も同様に『源氏物語』胡蝶の巻に取材しており、池に龍頭鷁首【りゆうとうげきしゆ】を浮かべた邸内の様子を表した意匠で統一されている。これら二種の調度類については、幕府のお抱え蒔絵師であった幸阿弥家十代長重の手になることが『幸阿弥家伝書』より明らかとなっている。
 初音・胡蝶蒔絵調度は、卓越した技術を用いあらゆる蒔絵技法を駆使した優品であるとともに、製作者、製作年代、製作の経緯が判明する稀有な例であり、さらには婚礼調度類としてまとまって遺存する最古の一括資料であることから、昭和二十八年に重要文化財に指定されている。しかし、千代姫の婚礼調度類がこれにとどまらないであろうことは、ほぼ同時期の、徳川家光養女亀姫が加賀前田家四代光高に嫁いだ際の三百余種にものぼる婚礼調度類の記録「清泰公諸器帳」に、膳椀具、服飾類、書籍類など多種多様の品々が記載されていることからも推察され、近世大名の婚礼調度の実態を知るうえでは蒔絵香箱以下の品々も欠かすことのできない重要な存在である。かついずれもが寛永期における工芸技術の水準の高さを如実に物語る作品であり、総体として工芸史上、文化史上の記念碑的作例ともいうべき重要な存在意義を有している。

出典:国指定文化財等データベース一部抜粋

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