土佐日記のこと
平安時代の貴族で、三十六歌仙にも選ばれる和歌の名手「紀貫之」による紀行文で、作者が女性であるかのように仮名文字で書かれている。 紀貫之が地方官「土佐守」の任を終えて、京に戻るまでの様子が面白くつづられ、その後の平安女流文学に多大な影響を与えたといわれる。
室町時代頃までは、貫之による自筆本が存在していたと伝わるが、現在は不明となっている。 鎌倉時代には蓮華王院の所蔵だった時期があり、藤原定家とその子息の藤原為家は自筆本から書写している。 その写本は現在まで伝わっており、書かれた当時の内容がほぼそのまま伝わっていると考えら、写本はいずれも国宝に指定されている。
国宝『土佐日記』藤原定家筆
現在は失われた紀貫之自筆の土佐日記は、鎌倉時代には蓮華王院(三十三間堂)の宝蔵に所蔵されており、この写本は藤原定家がその自筆本から書写したもので、現存最古の写本。 書写の奥書には文暦2年(1235年)の日付と、晩年の定家が貫之の自筆に感激し、体調が万全ではない中2日間で書写されたことなどが書かれている。
定家は、一部分を筆跡を真似して写す「臨摸」を行っているが、他の部分では別の仮名を使うこともあり、嘉禎2年(1236年)に定家の子の藤原為家が書写した「為家本」の方が、原本に近いと言われる。
この国宝を観るには
所有する前田育徳会には展示施設は無く、石川県立美術館で開催される前田家関連の展覧会で公開されることがある。
公開履歴
2024/1/4~2/12 石川県立美術館「よみがえった文化財」
2021/7/10~7/30 石川県立美術館「文武の誉れ」
2020/7/25~8/30 石川県立美術館「加賀百万石 文武の誉」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-566
出典:国指定文化財等データベース一部抜
【指定番号】00013-00
【種別】書跡・典籍
【指定名称】土佐日記〈藤原定家筆/〉
【ふりがな】とさにっき
【員数】1帖
【時代・年】文暦2年(1235年)
【作者】藤原定家
【ト書】文暦二年五月十三日奥書
【所有者】前田育徳会
【国宝指定日】1951.06.09