絵因果経とは
絵因果経は「過去現在因果経」という釈迦の前世から現世で悟りを得るまでの経典で、巻物の下半分には経を書き、上半分にはその内容を絵で描く「絵解き」をしている。 中国で始まったものが日本には奈良時代に伝わり、日本でも制作されるようになった。 現在、東京藝術大学所蔵の『絵因果経』と、京都の上品蓮台寺所蔵の『絵因果経』が国宝に指定されている。
過去現在因果経は4巻で構成されているが、絵因果経になると1巻が上下の2巻で作られるため、全8巻となる。 奈良時代頃に制作されたものは、経は楷書で端正に書かれ、絵は素朴な表現で描かれている。 鎌倉時代頃に制作されたものも残っているが、奈良時代とは書画の作風が異なる。
国宝『絵因果経』
醍醐寺に伝わる絵因果経は、醍醐寺の塔頭「報恩院」に伝わった奈良時代の絵因果経。 全8巻の絵因果経の内「第三上」が完全な形で残っており、「苦行六年」や「降魔成道」の場面が書かれている。
末尾に「月七日写書生従八位」の字がみられ、月の前部分には年月が入っていたと思われるが、制作年は不明。 従八位の書生によって書かれ、官営または有力貴族や大寺院の写経所で制作されたもの。
この国宝を観るには
2012年に醍醐寺霊宝館で公開されているが、あまり頻繁には公開されない。 展覧会への出品も少ない。
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-22
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00019-00
【種別】絵画
【指定名称】紙本著色絵因果経
【員数】1巻
【時代・年】奈良時代
【ト書】軸付に「月七日写書生従八位」の九字が残存する
【所有者】醍醐寺(京都 報恩院旧蔵)
【国宝指定日】1951.06.09