国宝『五部心観』
延暦寺の第5世座主で、園城寺(三井寺)を本山とする天台宗寺門派の開祖「智証大師円珍(えんちん)」が、唐に留学した際に師から譲り受けた画像集。 唐で描かれた1巻と、日本にもたらされてから書写した1巻が伝わる。
唐で描かれた巻の末尾には、長安の都において、師である青竜寺の法全阿闍梨から譲られたと書かれている。 このような諸尊像は、入唐僧らによって日本に多くもたらされたが、その原本が残っているのは非常に珍しい。
金剛界曼荼羅の5部(仏部・金剛部・宝部・蓮華部・羯磨部)の諸尊像を、彩色をしない墨線の「白描画」で描いたもの。 尊像の下には、その像の真言が梵字で書かれ、その下には像を象徴する持物などの「三昧耶形」と印を結ぶ手先が書かれている。 巻末には、真言八祖の第5で、大日経などを漢訳した「善無畏(ぜんむい)」の肖像が描かれる。
この国宝を観るには
公開されることが少なく、何度か展覧会に出展されたことがある。 2019年には寺内の文化財収蔵庫で公開された。
公開履歴
2022/4/12~5/1 京都国立博物館「最澄と天台宗のすべて」
2021/10/12~10/31 東京国立博物館「最澄と天台宗のすべて」
2019/10/1~12/8 三井寺文化財収蔵庫「特別展示」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-77
【指定番号】00073-01
【指定名称】紙本墨画五部心観(完本)
【員数】1巻
【国】中国
【時代・年】唐時代
【ト書】円珍の大中九年の奥書がある
【台帳・管理ID】201-76
【指定番号】00073-02
【指定名称】紙本墨画五部心観(前欠本)
【員数】1巻
【国】日本
【時代・年】平安時代
【種別】絵画
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【所有者】園城寺
【国宝指定日】1953.03.31