国宝『刀(名物 富田江)』
南北朝時代の越中(現在の富山県)の刀工「郷義弘(ごうのよしひろ、江義弘とも)」は、相模の刀工「正宗」の弟子で、正宗十哲にも数えられる。 古くから名物として珍重されてきたが在銘のものはなく、本物と極められた刀剣も非常に少ないため「郷とお化けは見たことがない」と、無いに等しい珍しいものの例えにされた。
豊臣秀吉の側近だった富田左近(富田一白)の所有だったため「富田江」の名物号がある。 同じく秀吉の家臣だった堀秀政が、富田左近から買い取って秀吉に献上した。 秀吉の没後に前田利長へ贈られ、一度は将軍家に献上されるが、また前田家に戻されて現在に至る。 江戸時代には「天下一」とされた。
この国宝を観るには
加賀前田家伝来の美術品や資料を所蔵する「前田育徳会」は東京にあるが、展示施設は持たないので、石川県立美術館や国立博物館などで公開される。
公開履歴
2024/3/26~5/26 石川県立美術館 前田育徳会尊経閣文庫分館
2021/7/24~8/22 京都国立博物館「京の国宝」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-475
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00184-00
【種別】工芸品
【指定名称】刀〈無銘義弘(名物富田江)/〉
【ふりがな】かたな〈むめいよしひろ(めいぶつとみたごう〉
【員数】1口
【国】日本
【時代・年】南北朝時代
【寸法・重量】身長64.8cm、反1.4cm
【品質・形状】鎬造、庵棟、中鋒少し延びる。鍛小板目最もよく約み、地沸厚く地斑ごころ交じる。刃文浅い湾れに互の目交じり、足葉よく入り、匂深く小沸つき、金筋ところどころにかかり
【所有者】前田育徳会
【重文指定日】1936.09.18
【国宝指定日】1956.06.28
【説明】現存する江義弘の作中で、出来と健全さの両面から稲葉江と双璧をなすものであり、江戸時代には江戸第一の称があった。享保名物牒によると、もと富田左近が所持したことから富田江の号があり、後に豊臣秀吉の所有、その後秀吉の遺物として前田利長がもらったものと伝える。