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情報|五島美術館「一生に一度は観たい古写経」2024/9/3~10/14[東京]

情報-博物館・美術館

一生に一度は観たい古写経 展

秋の五島美術館は「一生に一度は観たい古写経」展で、古写経と聞くと地味で渋そうなイメージかもしれませんが、チラシを観ると分かるように、和歌懐紙のようにキラキラだったり、絵本のような挿絵があったり、とても賑やかです。 経典は時の有力者が作ったものも多く、今回観られる中にも長屋王、光明皇后、称徳天皇、藤原道長と歴史上の人物が奉納したり書写した経典もたくさんあります。 

公開される国宝は期間限定の2件ですが、元は国宝と一連だった「断簡」も多くありますので、とても見応えのある展覧会だと思います。 小さい方の部屋は「絵巻・絵本」がテーマで、秋恒例の紫式部日記や重文の北野天神縁起絵巻が公開される他、酒呑童子や曽我物語など江戸時代の本が十数点も公開されるのが楽しそうです。 

秋晴れの日には、広大な庭園を散策するのもおすすめですし、館蔵品が中心なので豪華な内容のわりにお手頃価格だと思います。 ぐるっとパスが使えるのもうれしいですね。

この展覧会で観られる国宝

国宝『理趣経(目無経)

9/10~9/23のみ公開

後白河法皇の周辺で絵巻物が作られていたのが、途中で法皇が崩御されたので、下絵の状態の紙に写経をして供養としたのだそうです。 源氏物語のような十二単の貴人が描かれていて、顔は輪郭のみで目鼻口が描かれていないので「目無経」と呼ばれています。 五島美術館所蔵の国宝の中では公開が少なめです。

国宝『紫式部日記絵詞

10/5~10/14のみ公開

五島美術館は、毎年春には源氏物語絵巻を、秋には紫式部日記を公開するのが恒例です。 今年は大河ドラマで盛り上がっているので、公開期間は混みそうですね。 3段分が公開され、第2段は出産した中宮彰子を女房達が取り巻く様子が、第1段と3段は宮中での公達との交流が描かれています。 光る君へでお馴染みの人物も描かれていて、第3段には顕光、実資、公任、斉信がそれぞれ個性的な動きをしています。 10日間限定公開ですが、これ以外の期間には現状模写が展示されますし、制作当時の姿を再現した復元模写は期間を通して公開されるので、空いている時期が良い方はあえて公開期間を外すのもアリかもしれません。

元は国宝の一部でした

日本の書画を鑑賞していると「断簡」という言葉が出てきまして、名前の通り切断された一部分で、切断というと取り返しがつかない破壊のように聞こえますが、複数枚の紙を継いだ巻物などの、継ぎめではがしたり、冊子をほどいたものなども含まれます。(本当に切っている場合も多々あります) 断簡以外にも、複数セットだった経典などの1巻だけが流出している場合もあります。 

国宝などの文化財の指定は所有者ごとにされるので、バラバラになっている場合は、その内で量が多いものが指定されるケースが多いです。 今回の展覧会にはそういった断簡がたくさん出ますので、作品名から元は国宝と一体だったことが分かるものを以下に記載しました。 ここにあげた以外にも、国宝と同一だったものがあるかもしれません。

大般若波羅密多経 (長屋王願経 和銅経) 

前期:巻二百四十八 
後期:巻三百四十三 重要美術品

和銅5年(712年)に長屋王の発願で書写された大般若経600巻の一部で、「長屋王願経」とか「和銅経」などと呼ばれていて、滋賀県の太平寺に伝わる『大般若経』142帖と、同じく滋賀県にある常明寺の27帖が国宝に指定されています。 経典は界線という枠線を引いて、その中に書くのが一般的ですが、こちらには界線が引かれていないのが珍しいです。 前期と後期で1巻ずつが公開されます。

紺紙金字法華経(金峯山埋経)藤原道長筆 重要文化財

通期

今年の新国宝、金峯山寺と金峯神社が所有する『金峯山経塚出土紺紙金字経』は、藤原道長が自ら書写して吉野山に埋納した経巻です。 道長の直筆といわれると、ほんと?と疑いたくなりますが、公家筆頭の近衛家に伝わる道長の日記に自分で書写したことが書かれていて、経巻の日付などと一致するので、直筆であることが確実なんだそうです。

紺紙金銀交書倶舎論(中尊寺経)

通期:巻第四、巻第二十三・二十四 重要美術品

名前の通り、奥州藤原氏が中尊寺に奉納した経典の一部で、金字と銀字が1行おきに書かれている手の込んだもので、見返しという先頭に描かれた仏画も金銀で華やかに描かれています。 中尊寺の大長寿院に伝わる『紺紙金字一切経』のほか、高野山の金剛峯寺に移された『金銀字一切経』も国宝に指定されています。

法華経(久能寺経)

前期:序品 第一 重要文化財
後期:法師功徳品 巻第十九 重要文化財

創建が推古天皇の時代までさかのぼるという静岡県の古刹「久能寺」は、明治時代の山岡鉄舟が再興したので現在は「鉄舟寺」となっています。 この法華経は、鳥羽天皇と皇后の待賢門院を中心とした人々30人が1巻ずつ書写したもので、この時代に流行った装飾経と呼ばれるものです。 金箔などが多用されて、院政期らしい豪華で華やかな経典です。 鉄舟寺に残る『久能寺経』19巻と、個人が所有する『久能寺経』4巻が国宝に指定されています。 前後期で1巻ずつが公開され、そのどちらもが重要文化財に指定されています。

賢愚経断簡(大聖武)伝聖武天皇筆

通期

聖武天皇が書写したという伝説があった大きな字の経典なので「大聖武」と呼ばれて、古写経の中では特に珍重されるものです。 手鑑という名筆のスクラップブックの先頭に、これが数行でも貼られているとグッと格があがるといわれるもので、こちらの断簡は19行ほどのようです。 大聖武は所有者の異なる4件が国宝に指定されています。

賢愚経(大聖武)[東大寺/奈良]
賢愚経残巻(大聖武)[前田育徳会/東京]
賢愚経残巻(大聖武)[白鶴美術館/兵庫]
賢愚経残巻(大聖武)[東京国立博物館]

展覧会 概要

日程:2024/9/3~10/14
休館:毎月曜日(祝日は開館して翌火曜が休館)
時間:10:00~17:00(入館は30分前まで)
料金:一般¥1,100、高大生¥800、中学生以下無料

五島美術館 公式サイト

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