大雅と蕪村―文人画の大成者 展
名古屋市博物館の冬の特別展は、日本の文人画を代表する「池大雅」と「与謝蕪村」がテーマです。 文人画というのは、元は中国で始まったもので、職業画家ではない風流を愛する文化的で高潔な「文人」が趣味の1つとして描いた絵で、日本では江戸時代に独自の発展を遂げました。 南画とも呼ばれる日本の文人画の代表的な人物が、京都で妻の玉瀾と共に扇屋を営んだ「池大雅」や、俳人としても名高い「与謝蕪村」です。
この2人と名古屋の組み合わせでピンときた方は、かなりの日本美術好きではないでしょうか。 池大雅と与謝蕪村が合作した国宝絵画『十便図・十宜図』は、東海道五十三次の40番目「鳴海宿」の素封家が依頼したものなんだそうです。 この十便十宜図は、あの川端康成が家の購入資金を充てて買ったという名品で、1951年に現行法での第1回の国宝指定を受けています。 現在は川端康成記念会の所蔵で、名古屋への里帰りは2009年以来になるようです。 絞り染めで有名な鳴海宿は、現在でも残る古い宿場町の雰囲気と、現代風な絞り作家のショップやオシャレカフェの混在する素敵な街ですので、どうぞあわせて散策してみて下さい。
この展覧会で観られる国宝
十便図・十宜図 池大雅・与謝蕪村筆[川端康成記念会]
お里帰りする十便十宜図は、池大雅による10の便利なことを描いた「十便図」と、与謝蕪村による10の宜いこと(良いこと)を描いた「十宜図」が1冊ずつあります。 それぞれ10枚の絵ですが、冊子状になっているため一挙に公開できず、4日~1週間ほどでページがめくられていくようです。 田舎暮らしの良さをゆる~く描いた冊子は、まるで現代のコミックエッセイのようです。
耕便図・宜春図 12/4~12/8
課農便図・宜夏図 12/9~12/14
釣便図・宜秋図 12/15~12/18
灌園便図・宜冬図 12/19~12/24
汲便図・宜暁図 12/25~1/5
浣濯便図・宜晩図 1/6~1/9
樵便図・宜晴図 1/10~1/14
防夜便図・宜陰図 1/15~1/19
吟便図・宜雨図 1/20~1/23
眺便図・宜風図 1/26~1/30
楼閣山水図 池大雅筆[東京国立博物館]
1/4~1/16のみ公開
六曲一双屏風で、右隻には湖南省洞庭湖に建つ楼閣「岳陽楼」を、左隻には欧陽脩が安徽省琅琊山に建てた庵「酔翁亭」の風景で、山と水辺それぞれに建てられた楼閣が魅力的に描かれています。 人物が細かく描き込まれていて、これが何とも可愛らしいんです。
夜色楼台図 与謝蕪村筆[個人蔵]
1/18~1/30のみ公開
個人の所蔵で、ここ数年は年に1度どこかの展覧会に出展されていますが、公開期間があまり長くないので観られる機会に観ておきたいものです。 かなり大型の横長の掛軸で、雪夜の市中を描いたもので、雪の白と闇の黒色にほんのり暖かな淡彩で窓の明かりが表現された、とてもホッコリな絵画です。
展覧会 概要
期間:2021/12/4~2022/1/30
時間:9:30~17:00(入館は30分前まで)
休館:毎月曜日(祝日は開館し翌火曜が休館)、第4火曜日、年末年始(12/28~1/3)
料金:一般¥1,400、大高生¥900、小中生¥500
名古屋市博物館 公式サイト