国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅展
いつも充実の東博の特別展は、前期後期どころか3期にわかれたりでいつも行く時期に迷います。 が、今回は・・・、↓このような複雑さで、五大尊像なんかは1週間だけ展示されたものが3週間後にまた登場とか、いったい何時行けばいいのやら悩みに悩みます。 それでもとりあえず前半の空いている時期に一度はと、開会早々行ってまいりました。
第1章 空海と後七日御修法
ちょうど今年のお正月に「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」について調べていたのですが、新年に宮中で行われた儀式で、元旦から7日までは神道の儀式でその後の7日間に行われる仏教の儀式だそうです。 唐から戻った空海の進言で始められたもので、明治に入ってからは東寺で行っているそうで、東寺の僧だけでなく真言宗の各宗派の高僧方が集まって執り行われているそう。 今でもこの儀式のために天皇の御衣が届けられるところがニュースにもなっていました。 国家安泰・玉体安穏・国家鎮護・五穀豊穣・世界平和などが祈願されるそうです。
前半のメイン展示は、この後七日御修法が執り行われる空間が再現されています。 金剛界・胎蔵界の曼荼羅を向かい合わせにして、一年おきに本尊とするのですが、その周りには十二天像や五大尊像などが掛けられます。 “密”教というだけあって、修法の詳細は秘密なのですが、それをまさか再現してくれるとは!しかもその空間に入って間近で観られるとは!!という貴重な体験です。
御修法の再現展示の中でも展示が複雑な『五大尊像』『十二天像』ですが、完全に展示が入れ替わるのではなく、展示のない期間は同サイズの写真パネルが展示されます。 なので見逃し感が少ないですね。
このコーナー前半の空海についての展示で観られる『真言七祖像』も同様で写真パネルがあります。 この辺りは、空海の足跡や唐から招来した文物についての展示で、空海直筆の中でも特に名筆と名高い『風信帖』が展示されています。 「風信帖」は最澄宛の漢文の手紙ですが「風信」で始まるものの後に、それぞれ出だしの文字をとった「忽披帖(こつひじょう)」「忽恵帖(こつけいじょう)」も続いています。 今回は、それがズズっと長く展示されているので、行書中心の風信帖からだんだん草書が多くなるので、その見比べも楽しいですよ。
第2章 真言密教の至宝
次のコーナーは、先ほどの御修法の再現コーナーにあったものの別バージョンといいますか、別の修法で使用する本尊の図像や屏風、各種の曼荼羅が展示されています。 今回はほとんど東寺からの出展なのですが、前期のみ京都国立博物館所蔵の国宝『山水屏風』が出ています。 灌頂の儀式で使用されたそうですが、元は貴族の邸宅にあったとのことで、絹本に中国風の風俗の人物と景色が描かれています。 Ⅱ期Ⅲ期には『十二天屛風』に替わるようです。
数多くの曼荼羅と仏画が並びますが、一番大きなガラスの中に巨大な曼荼羅がかかっています。 ここはGWの2週間だけ国宝の『両界曼荼羅』にかわるので、それは見逃せません。 仏画は後半に「大元帥明王」がいくつか出るようです。 これは作例がそれほど多くないので必見ですね。
ここで観られるもう1つの国宝『天蓋』は、低めで周囲ぐるっとから観られるガラスケースに入っています。 木製の天蓋ですが、装飾に仏画が描かれていて、菩薩が天人のように舞っているところがしっかり残っています。 同じく国宝指定の『不動明王坐像』の上に吊られていたものだそうです。
第3章 東寺の信仰と歴史
こちらはバラエティーに富んだ品々が。 阿修羅でおなじみ八部衆のお面は興福寺のかわいらしい姿とは異なり、舞楽の面のように異形感が強いです。 裏側に展示された「十二天面」も、ほうれい線のすごいおじいさん風とか、かなりキャラの立った表情でいい味出しています。
こちらで観られる国宝は『女神坐像』とその附として国宝指定されている『武内宿禰像』で、平安初~中期の重々しさがあります。 前期には『後宇多天皇宸翰 東寺興隆条々事書』も観られますよ。
同じ章ですが、ショップを挟んで会場は後半部分に入ります。 まず入口に『兜跋毘沙門天立像』がガラスケース無しで展示され、真横くらいまでは回りこんで観ることができます。 予想よりも大きく、表情も異国感が強いですね。 この毘沙門天は鎖で編んだ異国風の鎧を付けていますが、そのデコボコがかなり深く掘ってあります。
第4章 曼荼羅の世界
今回、講堂の立体曼陀羅がビジュアルでもよく使われていますが、鳥獣座ファン(!?)の間で話題の、観智院「五大虚空蔵菩薩像」は5体とも来ています。 しかも現地では5体が横並びでギュウギュウですが、ここでは立体曼陀羅として騎馬像を中心に四方に向けて4体が展示され、正面からでは区別のつかなかった孔雀座と迦楼羅座も孔雀の尾羽でしっかり見分けられます。 過去にも観たことのある講堂立体曼陀羅の出張展示よりも貴重なのではないでしょうか。
そしていよいよ講堂立体曼陀羅の大引越コーナーへ。 今回一番の話題は、唐沢寿明似だと評判のイケメン『帝釈天像』が写真撮影OKになっていること。 スマホから一眼レフの本格派まで、ぐるりと人垣が絶えません。 この帝釈天さん、現地だと向かって左端なので右手側はよく観えますが、左後側のこんなショットは超貴重です!
東寺講堂の立体曼陀羅21体のうち15体が東京に来ています。 全てガラスケース無しでかなり間近から360度観られるので、見どころが多すぎて時間に余裕をみないと時間切れの危険があります。 ぐるっと観られると、何度も観ていたはずの『降三世明王』は正面顔の真後ろにも顔があって実は4面だったとか、阿弥陀如来だけ表情が穏やかだと思ったら顔だけ古い時代のものだったとか、色々な発見ができました。 第二会場はほとんど展示替え無しですが、この空間なら何度来ても飽きないと思います。