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鑑賞ログ|根津美術館「禅僧の交流-墨蹟と水墨画を楽しむ-」2018年10月

国宝鑑賞ログ

トーハク、五島美術館に続き、この秋3件目の禅画特集展です。 根津美術館は青山にありますが、立地にぴったりのとってもスタイリッシュな美術館です。 エントランスの竹林の雰囲気は、パークハイアットのラウンジみたい。 外国の方が好きな「ZEN」の雰囲気です。

国宝も何点か所蔵で、尾形光琳の燕子花図やいくつかの禅画、装飾経など。 重文は数知れず。各種茶道具や琳派の色々、室町~戦国の古布類や古代中国の青銅器など幅広い所蔵品をお持ちです。 今回は「企画展」として、1Fの2室を使って「禅僧の交流」というテーマ展示。 2Fでは部屋ごとに、中国の青銅器、古布、茶道具の秋の設えの3部屋があります。

1Fの1・2室での展示「禅僧の交流」は、日本の鎌倉から室町時代に、宗や元時代の中国へ留学した大勢の僧たちや、日本の実力者に請われて来日した中国の僧たちの交流。 それぞれの国での師から弟子への交流など、当時の文化サロンだったろう禅僧のカルチャーがテーマです。

企画展1室に入って一番最初の展示が、国宝「布袋蔣摩訶問答図」 画は因陀羅(いんだら)筆、賛は楚石凡琦(そせきぼんき) です。因陀羅さんの画は、トーハクにもいくつかあり、この根津美術館の布袋さんとも元は同じ巻物だったと推察されているようです。 たしかに、画の雰囲気などそっくりですもんね。 布袋さんが、お釈迦様の前世である蒋摩訶と問答をしている様子を描いた画。 おおらかな布袋さんです。

今回は「交流」がテーマという事で、弟子から師匠への印可状だったり、日本僧と中国僧との手紙などが多くあります。 解説には丁寧に書いてあるのですが、名前が覚えられません(笑) 地方によっての流行りもあったようで、どこの僧かわからないけどこの題材なら鎌倉の僧だろう、とか解説をじっくり読ませていただきました。

今回の展示でちょっとおもしろいなと思ったのが、お坊さんたちの「寄せ書き」のようなもの。 禅画というと下半分ほどに墨画が描いてあり、上半分や端の方に「賛」「画賛」と呼ばれるコメントのようなものが描いてありますが、その賛を大人数で書いたものが何点かありました。 それも、僧の誰々が某寺を去るのに近くの僧が書いたもの、ってそのまんま送別の寄せ書き色紙です。 いつの時代も同じことするんですね。 今と違って一度別れたら二度と会えないかもしれない時代、みんなの寄せ書きを見て懐かしむなんてジーンときますね。

2Fの4室は中国の青銅器。 紀元前11~13世紀殷の時代のものが多いです。 まだローマが出来る前の地中海文明全盛の時代ですね。 日本では縄文時代で、縄文土器や土偶などあれはあれで素晴らしいのですが、古代中国の技術には驚きます。

5室は古布。 布の寿命は紙や木に比べてとても短いので、色あせもひどくほころびも目立ちます。 それでも刺しゅうや絞りや摺り箔など、これが出来たころはどんなにきらびやかな布だったろうという事はよくわかります。 桃山時代は、黒・赤・金なんですね。同時代のヨーロッパのルネサンス期の流行に似ていますよね。 この頃だと南蛮貿易でヨーロッパのカルチャーも入っているでしょうから、直接影響があったのかもしれませんが。 明治頃にこういった古布を集めるのが流行ったようで、こちらの収蔵品と同じ着物から切り取ったと思われるものが、アメリカの美術館に収蔵されていたりするそう。

6室は茶道具です。 秋のわびしさを表現しているそうで、割れや欠けのある道具などをあわせているそう。 茶室風の一式展示では、ちょっといびつな風炉が目を引きます。 そしてやっぱり気になるのは「仁清」の茶碗。 表は大きくとった月にススキの絵付けといういかにも仁清らしい華やかさ。 でも後ろ側が大きく欠けていて金継ぎで修理してあります。 これも面白いですね。

そして、中二階の休憩スペースには「座禅コーナー」があります。 ちょっと区切られたスペースと、日本語と英語での座禅のしかたのポスターが。 お1人体験されていましたが、土日の混雑はあまり座禅向きではないようです。 いや、そんなガヤガヤが気にならないくらい座禅に集中できればいいのですが。

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