歓喜院のこと
埼玉県熊谷市にある歓喜院(かんぎいん)は真言宗の寺院で、本尊として大聖歓喜天をまつっており、妻沼聖天山(めぬましょうでんざん )として「埼玉の小日光」や「妻沼の聖天様」として親しまれている。 東京浅草の「待乳山聖天」や、奈良の「生駒聖天」などと「日本三大聖天」に数えられる(三大は諸説あり)
歌舞伎の「実盛物語」などで有名な武将の斎藤実盛は、妻沼を含む長井庄の庄司で、治承3年(1179年)に先祖伝来の聖天を本尊として歓喜院を開創した。
国宝『聖天堂』
真言宗の仏教寺院だが、本殿は権現造りで 奥殿(本殿)・中殿・拝殿が1棟とされ「神社」として国宝に登録されている。 小日光とも呼ばれるほど、日光東照宮のような極彩色の彫刻や飾り金具の装飾が多く、左甚五郎作と伝わる彫刻も残されている。
妻沼の大工で、幕府作事方の棟梁だった「平内政信」の子孫にあたる親子が、2代20数年にかかって完成させる。 その費用は、庶民・農民が44年にわたって浄財を出したという。
自由に拝観できる「拝殿」は、組物などに極彩色の彫刻はあるが、仏堂のような印象を受ける。 その奥で特別公開エリアになる「中殿(相の間)」と「奥殿」には全体的に華やかな彫刻で覆われている。
この国宝を観るには
本殿は参拝自由で、無料で拝観可能。 特に彫刻の豪華な中殿と奥殿は、¥700の志納金を納めると近くで見学することができる。 特別拝観は随時だが、毎時00分スタートでガイドの案内を聞くことができる。
文化財指定データ
【台帳・管理ID】102-463
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】02163
【指定名称】歓喜院
【よみかた】かんぎいん
【棟名】聖天堂
【よみかた】しょうでんどう
【員数】1棟
【時代・年】奥殿:延享元年(1744年)、中殿:宝暦10年(1760年)、拝殿:宝暦6年(1756年)
【構造・形式】奥殿:桁行三間、梁間三間、一重、入母屋造、両側面軒唐破風、背面千鳥破風及び軒唐破風付、向拝一間 中殿:桁行三間、梁間一間、一重、両下造 拝殿:桁行五間、梁間三間、一重、入母屋造、正面千鳥破風付、向拝三間、軒唐破風付
【所在地】埼玉県熊谷市妻沼
【国宝指定日】2012.07.09
【解説】歓喜院は高野山真言宗に属し、治承3年(1179)の創建と伝わる。現在の聖天堂は、享保5年(1720)に歓喜院院主海算(かいさん)が再建を発願、民衆の寄進を募り、地元の大工林兵庫正清(まさきよ)によって建設されたものである。奥殿、中殿、拝殿よりなる権現造の形式で、延享元年(1744)に奥殿と中殿の一部が完成し、宝暦10年(1760)までに中殿と拝殿が完成した。とくに奥殿は多彩な彫刻技法が駆使され、さらに色漆塗や金箔押などによる極彩色を施してきらびやかに飾る。また、拝殿正面を開放として参詣の便をはかるなど庶民信仰の隆盛を物語る建物である。聖天堂は、江戸時代に発展した多様な建築装飾技法がおしみなく注がれた華麗な建物であり、技術的な頂点の一つをなしている。このような建物が庶民信仰によって実現したことは、宗教建築における装飾文化の普及の過程を示しており、我が国の文化史上、高い価値を有している。
ついでにグルメ
このあたりの名物に「聖天寿司」があり、いわゆる「助六」だが、いなり寿司は揚げを縦に切って寿司飯を詰めていてかなり長細い。