長保寺のこと
和歌山県海南市 長保寺(ちょうほうじ)は、長保2年(1000年)に一条天皇の勅願によって創建され、寛仁元年(1017年)頃には伽藍が整備された。 寺名は創建当時の元号から付けられている。 江戸時代に入ると、徳川家康の10男で初代紀州徳川藩主になった「徳川頼宣(よりのぶ)」によって菩提寺に定められ、後に将軍になった吉宗と慶福(家茂)以外の藩主の墓所がある。 本堂・大門・多宝塔が国宝に指定されている。
国宝『多宝塔』
平安時代の創建時には、現在の寺域より西に位置したようだが、鎌倉末期頃に現在の位置に移り、長保寺に現在残る伽藍はそれ以降に建てられている。 多宝塔は、本堂から数十年遅れて正平12年(1357年)に、和様の様式で建立されているが、中の須弥壇には禅宗様の特徴がみえる。 中には、創建当時に制作された金剛界大日如来坐像が安置されている。
初層は3間四方で、亀腹(初層と二層をつなぐ白く丸い部分)は小ぶりで小さく繊細な印象を与える。 勾配が少なく穏やかな瓦屋根で、相輪に輪が連続して重なる「九輪」は、1つ欠けて現在は8つになっている。
この国宝を観るには
2023/6/2の豪雨による土砂災害により拝観停止中
開門時間内は拝観可能。南側の扉は開いており、中を覗くことができる。
時間:9:00~16:00
料金:中学生以上¥300
海南市コミュニティバス「鰈川線」の「長保寺」バス停が、寺のすぐ前にあるが、バスは1日3本ほどで日祝は運休になる。
下津駅発:7:21、11:41、14:41
加茂郷駅前発:8:39、13:04、17:05
国宝に指定された多宝塔
石山寺[滋賀]多宝塔
慈眼院[大阪]多宝塔
金剛三昧院[和歌山]多宝塔
根来寺[和歌山]多宝塔(大塔)
浄土寺[広島]多宝塔
文化財指定データ
【台帳・管理ID】102-2838
出典:国指定文化財等データベース一部抜
【指定番号】00130
【種別】近世以前/寺院
【指定名称】長保寺多宝塔
【ふりがな】ちょうほうじたほうとう
【員数】1基
【時代・年】正平12年(1357年)
【構造・形式】三間多宝塔、本瓦葺
【所有者】和歌山県海南市下津町上
【国宝指定日】1953.03.31
【説明】本堂は延慶四年の建立で、柱及び組物など唐様の手法をとりながら細部に和様の手法を混用し、よく二つの様式を融和している。 多宝塔は純和様を採用し、一重と二重との釣合よく安定した形態をなし、その細部も現存多宝塔中の傑作の一つである。但し内部須弥壇は唐様様色になる。建立年代は不明であるが本堂より稍々後れるであらう。 大門は嘉慶二年の建立で、形態のよく整った代表的な楼門の一つである。和様を基調としたその細部は室町時代初期の特色を持っている。以上三棟は伽藍の主要建物であって余り時代の離れない頃に建立され揃っていることは珍らしいことである。