草戸千軒町と明王院
鎌倉~室町時代にかけて、現在の広島県福山市に発展した都市で、福山駅の西を流れるの河川敷から発掘された。 数度に渡る洪水で水没したと古文書などで伝わる。 木簡や生活用品など当時の生活を知る遺物が多数出土し、港町らしく唐渡りの陶磁器などもみられ、草戸千軒ミュージアムで公開されている。
明王院は、芦田川に近い愛宕山の中腹に位置し、弘法大師空海が大同2年(807年)に開いた「常福寺」を前身とする。 草戸千軒町は、常福寺とその隣に建つ草戸稲荷神社との門前町として発展し、商業の盛んな交通の要所ということもあり常福寺も栄え、五重塔は人々の浄財で建立されている。 江戸時代に入ると代々の福山藩主に庇護され、藩主の祈願所だった明王院を合併し、現在は元の常福寺が明王院となっている。
国宝『五重塔』
南北朝時代に建てられた五重塔で、塔の先端に建てられる「相輪」の土台付近にある鉢を伏せたような形の金属部分「伏鉢(ふくばち)」の銘から、貞和4年(1348年)の建立と判明している。 この銘には、僧の「頼秀」が一文勧進の少資を積んだと書かれている。 1文を現代の価値にすると、時代にもよるが数十円ほどの金額で、庶民でも喜捨できる金額だったと思われる。
塔の中心を貫く心棒は、初層の天井から伸びており、内部の空間には大日如来を中心に、脇侍の不動明王と愛染明王が安置されている。 内部に建つ「四天柱」には、各柱に9躯ずつ全部で36躯の諸尊が描かれ、壁には真言八祖や飛天などが、華やかに彩色されている。
この国宝を観るには
拝観時間内ならいつでも参拝可能で、隣には国宝『本堂』が建っている。
文化財指定データ
【台帳・管理ID】102-3143
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00135
【種別】近世以前/寺院
【指定名称】明王院本堂
【ふりがな】みょうおういんほんどう
【員数】1基
【時代・年】貞和4年(1348年)
【構造・形式】三間五重塔婆、本瓦葺
【所在地】広島県福山市草戸町
【国宝指定日】1953.03.31