獅子窟寺のこと
獅子窟寺は、大阪と奈良の県境に位置する交野市にある真言宗の寺院で、役行者が開山し、聖武天皇の命を受けた行基が創建した。 空海が仏眼仏母の修法をしたという記録も残っている。 一時は荒廃するが、本尊の薬師如来に祈願して病気平癒した亀山上皇によって再興された。 大坂の陣で西軍に味方しなかったために、焼き討ちによって伽藍は全て焼失している。
国宝『薬師如来坐像』
薬師如来座像は獅子窟寺本尊で、寺を創建した行基が一刀三礼(1度彫るごとに3回礼拝をする)で、3年3ヶ月をかけて彫ったものだと伝わる。 伝承作者は奈良時代に活躍した行基だが、実際の制作時期は平安時代に入ってからだと考えられ、平安初期の典型的なの薬師如の姿をしている。
カヤの一木作りで作られ、背面だけでなく後頭部や像の下部からも内刳りをしている。 左右の手は後補によるもので、作られた当初は密教の印を結ぶ形だったと思われ、薬師以外の像だった可能性もある。
この国宝を観るには
現在は収蔵庫に安置されており、通常は非公開だが、1週間~10日前までに予約すると拝観できる場合もある。 正月3が日は予約不要で開帳されている。
住所:大阪府交野市私市2387
拝観:国宝『薬師如来坐像』は予約が必要
特別拝観:正月三が日は予約不要で拝観
公共交通:京阪交野線「私市駅」「河内森駅」、JR学研都市線「河内磐船駅」どの駅からも徒歩で約40分程度
※獅子窟寺は山の中腹にあり、道路は舗装されていますが急な坂道が大半です。
寺外での公開
2025/4/26~6/15大阪市立美術館「日本国宝展」※展示期間未確認
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-280
出典:国指定文化財等データベース一部抜
【指定番号】00116-00
【指定】彫刻
【指定名称】木造薬師如来坐像(本堂安置)
【員数】1躯
【国・時代】日本・平安時代
【所有者】獅子窟寺
【国宝指定日】1968.04.12
【説明】獅子窟寺の本尊である。頭躰部はもとより、両肩から袖口および右臂まで、さらに膝前のなかばを含めカヤの一材から彫り出し、膝前半部に横材を矧ぎ、左手首、右臂先を矧ぐ構造になる。螺髪はすべて一粒ずつ乾漆で塑形したものを植え付けている。内刳は後頭部、躰部背面および像底から行ない、肉を厚く残す広丸ノミの痕は大ぶりで、その彫り口は構造と同様古式である。瞳・唇に彩色をほどこし、胸前に朱で卍字を描くほかは素地のままに残している。 やや面長の面相部をふっくらと豊かに象形するが、眼鼻立ちは著しく大ぶりで、ことに切れ長くうねるような両眼、深い条線で刻む眉など、その彫技は秀抜である。躰部はややなで肩に、両臂を張り、腹部をひきしめ、厚味のある両膝を広く組んで安坐し、均衡の整った体貌を示し、躰部を覆う衲衣の衣文も、流動的な弧線を描いてにぎやかに体躯をめぐり、その練達した刀技はことに注目される。いわゆる九世紀の一木彫成技法の完成を示す一典型と考えられるもので、その制作は九世紀末、十世紀初頭と認められる。本像は、現在左手先および右手臂より先が後補のものとかわっているが、像容から、元は胸前に智吉祥印を結ぶ古式の薬師如来像であったかと思われる。
鑑賞ログ
秘仏ではないのですが、国宝の御本尊は1週間~10日前までに予約が必要なことと、お寺が山の中腹にあり最寄駅から40分ほど歩くので、なかなか行きづらい国宝巡りのお寺です。 途中の展望台あたりまで車で行けるような情報がネットに落ちていましたが、予約の電話で話を伺うと住宅地あたりから山道に入るところ(写真)からは徒歩です、と言われました。
河内森駅から10分ほど歩いた参拝道?の入り口には「ひとり あるき きけん」の看板があって、週末なのに人の気配がありません。 それでも道は舗装されているので、そこまで歩きづらいことはなく、ひたすら坂道を登ります。 Google Mapでは河内森から30分ほどとなっていますが、坂道ですので実際はもっとかかります。 休憩なしで40分、休憩したり写真を撮ったりするなら1時間弱みたほうがいいかもしれません。
展望台を横目にかなり登ったところで仁王門跡が出てきますが、本堂まではもう少し登らなくてはならず、最盛期はかなりの寺域だったことが偲ばれます。 登りきると、こんな感じで街が一望できるので、気候のいい時ならピクニックにちょうど良さそうです。
息切れしながら境内に到着し、予約時間まで余裕があったので本堂のお参りと境内を散策してみます。 こちらの巨岩は「天福岩」といい、災いを転じて福となすそうで、看板にある通りに岩を両手でしっかりと抱いて願い事1つだけを3回唱えます。 天福岩の他にも寺名の由来の獅子窟など巨石があちこちにあって、パワーを頂ける気がします。
時間になり寺務所に声をかけると、奥様でしょうかとても気さくに迎えてくださいました。 寺内は無料ですが、ご本尊の拝観には¥500(2023年時点)かかり、ご朱印もこちらでお願いできますので、ご本尊の拝観前にご朱印帳をお預けして拝観料と納経料をお納めしました。
収蔵庫はさらに奥まったところで、拝観を申し込んでいないと近づけないようになっています。 こちらは収蔵庫といっても方形造の仏殿風で、内部もお堂のように荘厳してありますので、味気ない感じはまったくありません。 正面に座って拝観しようとすると、ペットボトルの冷たいお茶に、仏様のお下がりでしょうかお菓子を添えて下さり、「ごゆっくり」と出ていかれました。 国宝の薬師如来さまはどっしりとした体躯で、翻波式衣文と呼ばれる深く浅くランダムに波打つような衣と、いかにも平安初期らしい仏像です。 お参りしてからお言葉に甘えて足を崩してお茶とお菓子を頂くと、法事でお寺さんがお菓子を下さったことなんかを思い出してしみじみ。 行くのは大変ですが、国宝を前にのんびりした時間を過ごせるので、おすすめ度は高いです。(お茶とお菓子はいつもではないかもしれません)