国宝『浅黄綾威鎧(兜・大袖付)』
大鎧(おおよろい)は、平安時代~南北朝時代に主に馬上で着用された防具で、腰から下の「草摺(くさずり)」が、前後左右の4枚にわかれている。 他の武具と共に、戦勝祈願などで神社に奉納されることも多く、奉納用には凝った金物飾が付けられた。
この鎧は、金物を鍍銀(銀メッキ)し、浅黄色(浅葱色とも、水色に近い色)の綾糸で威している。 胴の正面には、牡丹柄に不動明王と二童子を染め出した革を用いている。 平安末期の河内源氏「八幡太郎 源義家」の奉納と伝わるが、鎧の様式などから鎌倉時代初~中期頃の作だと考えられる。
この国宝を観るには
厳島神社の宝物館は、国宝の現物は展示されておらず、社務所近くにある宝物収蔵庫で毎年秋に「宝物名品展」が開かれ、そこで何点かの国宝が公開されるが、鎧の公開は少ない。
公開履歴
2021/7/24~8/22 京都国立博物館「京の国宝」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-325
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00038-00
【種別】工芸品
【指定名称】浅黄綾威鎧〈兜、大袖付/〉
【ふりがな】あさぎあやおどしよろい〈かぶと、おおそでつき〉
【員数】1領
【時代・年】鎌倉時代
【寸法・重量】高76.5cm、兜鉢高11.5cm、大袖高38.0cm
【品質・形状】黒漆塗鉄革小札を一枚交じりに浅黄綾をもって威し(但し欠失し浅黄布を三畳にした芯のみ残る)、耳糸は啄木(後補)、畦目も啄木だが欠損する。菱縫の赤糸はほぼ鐶存。
【所有者】厳島神社
【国宝指定日】1951.06.09
【説明】本鎧を鎌倉前期のものと比較すると、小札は細く精緻になり、胴の裾開きの形状が上下同幅ないし裾絞りの傾向を示している。また、金具廻りが大きく、栴檀、鳩尾板が狭小となって障子板の前後が長い。兜においても頂辺の孔が縮小して間数が多く、星が小さく繁くなるなど、豪壮さに代わって端正な形姿となり、鎌倉時代後期の特色が著しい。
鎧の長側と大袖の板が普通四段と六段であるのに、五段と七段に仕立ててあり「着長」の名に適する。威糸と金物の色彩が壮麗な趣を加えた、当代の典型を示す一領である。