筑前左文字派
左文字派は、筑前(=現在の福岡)を拠点とした刀工の一派。 南北朝時代に
相州(相模国=現在の神奈川)の名工「正宗」の元で修行をした「左衛門三郎(安吉、源慶とも)」が初代で、銘に左衛門の頭文字と思われる「左」と彫ったので「左文字派」と呼ばれる。 九州地方の作風に、相州の特徴でもある沸の強さがみられる。
国宝『短刀 銘筑州住行弘/観応元年八月日』
左文字派の刀工「行弘」による短刀で、「銘筑州住行弘」「観応元年八月日」の銘が入っている。 観応元年(1350年)は北朝の年号で、南朝では正平5年に相当する。 銘に行弘の名が入った刀剣は、この1口のみ。
土浦藩は、徳川家光に仕えた土屋数直が初代藩主になり、一度移封されるが再度土屋家が入り、明治を迎えるまで土屋家が統治する。 この短刀は、2代藩主の政直が、正室の父である松平康信から譲られたもの。
この国宝を観るには
土浦市は、国宝1口、重要文化財4口、重要美術品6口を含む、83口の土屋家ゆかりの刀剣を所有し、毎年秋に土浦市立博物館で開催される「土浦藩土屋家の刀剣」で観られることが多い。
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-503
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00207-00
【指定名称】短刀〈銘筑州住行弘/観応元年八月日〉
【ふりがな】たんとう〈めいちくしゅうのじゅうゆきひろ/かんのうがんねんはちがつひ〉
【時代・年】観応元年(1350年)
【寸法・重量】身長23.5cm、内反、元幅2.2cm
【品質・形状】平造、三つ棟、内反、尋常の姿である。鍛板目やや流れごころの肌交じり、地沸つく。刃文湾れに互の目交じり、足入り、物打上特に逆がかり。匂口明るく冴えて小沸つき、金筋かかる。
【画賛・銘等】目釘穴の上から表に長銘、裏年紀がある。
【所有者】土浦市
【国宝指定日】1957.02.19
【説明】筑前国左文字派の行弘の作。行弘有銘の作は極めて少なく、その上年紀のあるものはこの短刀だけであろう。地刃健全であり、左一門の研究資料としても貴重である。