国宝『観智院客殿』
東寺の塔頭だが「住宅」として国宝登録されている。 東寺の北大門と北総門の間にあり、小路を挟んで西側には「洛南高校」がある。 こちらは塔頭と言っても東寺の学問所のようなところで、南北朝時代に創建されてからは、密教の聖教類や文書類の研究や編纂などがされていた。
現在の建物は桃山時代に建てられ、中世の住宅から書院作りに移行する時代のものなので、各所にそれぞれの様式や特徴がみられる。 玄関から入って手前に「客殿」があり、宮本武蔵が描いた鷲の画が観られる。 奥の本堂には本尊の「五大虚空蔵菩薩」などの密教仏が安置されている。 本堂の北側には楓泉観(ふうせんかん)という茶室がある。
重要文化財「五大虚空蔵菩薩」
元は、唐の長安にあった「青龍寺」の本尊だったものを、入唐僧の恵運が、唐から持ち帰った。 向かって右から、獅子・象・馬・孔雀・迦楼羅の鳥獣座に乗っている。
この国宝を観るには
※2019年以降は通年で公開中
通常は非公開で、春や秋の東寺特別拝観期間に公開されたり、京の夏の旅・冬の旅で公開されることもある。
文化財指定データ
【台帳・管理ID】102-1848
【指定番号】00199
【指定】近世以前/住宅
【指定名称】観智院客殿
【ふりがな】かんちいんきゃくでん
【員数】1棟
【時代・年】桃山時代、慶長10年(1605年)
【構造・形式】桁行12.7m、梁間13.7m、一重、入母屋造、妻入、正面軒唐破風付 中門:桁行一間、梁間一間、一重、切妻造、総銅板葺
【所在地】京都市南区八条通大宮西入下る柳原町
【国宝指定日】1959.06.27
【説明】観智院は東寺の子院の一であって今の客殿は慶長十年(一六〇五)の建立になる。国宝の滋賀県光浄院客殿、勧学院客殿とならんで、桃山時代の一般的な住宅形式を示すが、又僧侶の私房の様子をよく示した遺構として貴重なものである。
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
鑑賞ログ
2018年11月
通常は非公開の観智院ですが、2018年秋は特別拝観の対象だったので、中を見学してきました。 この辺りは弘法さんの市で来たことがありますが、お店が出ていないととても静かです。 外から見ると塀がめぐらされた古い静かなお寺さんという雰囲気です。
中に入ると手前が「客殿」で武家の書院のような造りです。 上段の間という部屋には、宮本武蔵の「鷲の図」と「竹林の図」がありました。 「鷲の図」の方は、床の間のような場所の壁一面に描かれていて、鷲が眼光鋭く描かれています。 説明して下さった方によると、宮本武蔵が吉岡一門の残党に命を狙われていた時に観智院に身を潜めていて、その時に描かれたとも言われているようです。
奥は「本堂」なのですが、ご本尊が中国・唐時代に作られた「五大虚空蔵菩薩」で、空海の孫弟子が招来したものだそう。 こちらは「鳥獣座」で、右から獅子、象、馬、孔雀、迦楼羅に乗っています。 お顔がエキゾチックですね。 動物も比較的写実的で、日本の平安あたりの密教仏(五大明王像とか)によくある愛嬌系のタイプではないようです。 その他「四方正面」のかわいらしい中庭や、「楓泉観」という茶室もあります。