手箱とは
女性が化粧道具など身の回りの品を入れた箱で、平安時代頃には螺鈿や蒔絵で装飾を施し、室内装飾を兼ねるようになる。 神宝として神社に奉納されたり、経箱に転用されたりしたため、比較的多くの品が現存しており、単品だけで6点が国宝に指定され、神宝として国宝に一括指定されたものも加えると相当数ある。 現代のB5~A4サイズ程度のものが多く、蓋を開けると中に「懸子(かけご)」という浅い段が入れられ、中は2~3階層に分かれるものが多い。
国宝『秋野鹿蒔絵手箱』
手箱は平安時代には形式的な図柄が多いが、本品は写実的な表現も取り入れられ、平安末~鎌倉期頃に制作されたものだと推定される。 神宝として奉納されたものだと思われるが、奉納した人物や時期などは不明。
漆工で、表面には螺鈿と蒔絵で秋草と鹿が表される。 やや盛り上がった蓋の表面には、咲き誇る萩を描きだし、そこに3匹の鹿の親子が休んでいる。 周囲には、萩や女郎花など秋草に小鳥が飛び交い、秋の虫もみられる。
この国宝を観るには
現物が公開されることは少ないが、出雲大社の神祜殿(宝物殿)では複製品が常設展示されている。
公開履歴
2024/5/28~6/16 松江歴史館「神々の美術」
2024/4/27~5/16 出雲大社 宝物殿 特別公開
2020/2/11~3/8 東京国立博物館「出雲と大和」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-346
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00059-00
【種別】工芸品
【指定名称】秋野鹿蒔絵手箱
【ふりがな】あきのしかまきえてばこ
【員数】1合
【時代・年】鎌倉時代
【寸法・重量】縦22.7cm、横29.7cm、高16.1cm
【品質・形状】錫置口を付けた合口造りの手箱。萩花房透彫りの金堂鐶座を打ち、内に二重の懸子を具える。蓋甲の意匠は、流れに沿う土坡上に萩が乱れ咲く秋野の景で、周囲もほぼ同様の図様になる。
【所有者】出雲大社
【国宝指定日】1952.03.29
【説明】総体に平安時代の作風を伝えて優雅繊麗の趣に満ちている。一方で、器形において蓋の甲盛が高く、胴が張り、図様が緻密となり、技法も又各種の粉蒔を施して変化の妙を尽くしているところに鎌倉時代の蒔絵の特色がうかがわれる。