皇室の名宝-皇室と九州をむすぶ美-
平成から令和への御代がわりを記念して、各地で皇室関係の展覧会や特別公開が多く開かれました。 国立博物館でも、東京の「美を紡ぐ 日本美術の名品」や、京都の「皇室の名宝」など、非常に豪華な内容で、皇室の長い歴史を改めて感じさせられました。 令和の元号は、太宰帥(大宰府の長官)だった大伴旅人が、役人らを招いて開いた「梅花の宴」の序文から取られました。 そんな令和ゆかりの地での展覧会は「皇室と九州をむすぶ美」というサブタイトルが付いています。
この展覧会は2部構成で、第1章は「皇室の近代を彩る」で、明治以降に皇室に献上されたり買い上げになった美術工芸品が並びます。 九州ゆかりのものが選ばれたようで、平成の即位礼で作られた大分県を描いた「主基地方風俗歌屏風」なども展示されるようです。 第2章は「皇室聚宝」で、皇室に古くから伝わる品々「御物(ぎょぶつ・ごもつ)」から書画の名品が並びます。
この御物は「国宝級」の名品揃いですが、これまで国宝や重要文化財などの文化財指定を受けていませんでした。 ところが、2021/7/16に発表された今年度の国宝指定は、全て宮内庁の管理する「三の丸尚蔵館」の所蔵品だったのです。 いままで国宝級と呼ばれていたものが、本当に国宝になってしまいました。(正式には数か月後の官報掲載で国宝になります) 国宝指定が発表されると、東京国立博物館でお披露目展示があるのですが、今回は1件以外は全てこの展覧会に揃っているので、こちらがお披露目展示になりました。
この展覧会で観られる国宝
春日権現験記絵(高階隆兼筆)
鎌倉時代の公家で藤原氏の西園寺公衡が、氏神「春日大社」の霊験を20巻の絵巻物にして、春日大社に奉納したものです。 絵は宮廷絵師の高階隆兼が、平安時代に成立した日本独特の絵画の様式「やまと絵」で描いた華やかなもので、詞書は鷹司基忠ら4人が書きました。 今回は、前期に第6巻、後期に第10巻が展示されます。
蒙古襲来絵詞
蒙古(モンゴル)が日本に攻め寄せた「元寇」を描いた絵巻物で、舞台は九州北西部です。 主人公は、肥後(熊本)の御家人「竹崎季長」でその活躍が描かれ、特に両軍の武器の違いなど歴史資料としても貴重なものです。 全2巻あり、前期には前巻が、後期には後巻が公開されます。
動植綵絵(伊藤若冲筆)
鶏の絵で人気の伊藤若冲では、初の国宝指定になりました。 若冲と交流があった相国寺に、釈迦三尊図と共に奉納されたもので、花鳥画を中心に様々な生き物や植物が描かれています。 前期に「秋塘群雀図」「芙蓉双鶏図」「老松鸚鵡図」「梅花群鶴図」「貝甲図」「群魚図」が、後期に「梅花皓月図」「老松孔雀図」「棕櫚雄鶏図」「雪中錦鶏図」「諸魚図」「紅葉小禽図」が公開されます。
屏風土代(小野道風筆)前期のみ
花札に描かれる唯一の人物「小野道風」は、平安中期の公家で能書家としても高名でした。 大江朝綱と共に、宮中の屏風を作る名誉を受け、朝綱の作った漢詩を道風が清書しました。 この屏風は失われますが下書きが残っていて、美術品コレクターだった井上馨から大正天皇に献上されました。 鎌倉時代に描かれた頼寿筆と伝わる「小野道風像」も一緒に公開されるようです。
展覧会 概要
期間:2021/7/20~8/29
休館:月曜日(8/9・8/16は開館、8/10は休館)
時間:9:30~17:00
料金:一般¥2,000、高大生¥1,200、小中生¥800
九州国立博物館 公式サイト