サンリツ服部美術館のこと
諏訪湖のほとりに建つ「サンリツ服部美術館」は、服部時計店(銀座和光、セイコーHDに発展)の3代目である服部正次氏や、その息子でセイコーエプソン初代社長の服部一郎氏のコレクションに、株式会社サンリツの収蔵品も加わり、日本の古美術だけでなく、ルノワールやシャガールなど西洋絵画も蔵する美術館です。 上諏訪駅から北に15分ほど歩いた諏訪湖畔にあり、眺望も楽しめます。
茶人に愛された数々の名椀
茶道具のコレクションが充実している同館らしい企画で、抹茶椀の名品を中心に企画された展覧会です。 同美術館が所蔵する本阿弥光悦作の国宝『白楽茶碗 銘 不二山』と、不二山と共に「光悦七種」に数えられる「赤楽茶碗 銘 障子」が目玉のようです。 今年のGWは曜変天目3椀同時公開が話題で、一緒に抹茶椀の名品が多く出展されていたのでご覧になった方も多いと思いますが、抹茶椀をメインテーマにした企画なので、流行や箱などの附属品も紹介されるようですね。
この展覧会で観られる国宝
楽焼白片身変茶碗 銘不二山 本阿弥光悦作
俵屋宗達とともに琳派の始祖といわれる「本阿弥光悦」作の楽茶碗です。 楽茶碗は轆轤を使わず手捻りで作られたもので、利休好みの黒楽茶碗が有名ですが、こちらは膨らみのない直線的な茶碗で、白軸ですが焼成によって下半分だけが黒暗色になりました。 その様子が雪化粧をした富士山に似ているので「不二山」の銘があります。 光悦が娘の嫁入りに振袖にくるんだので「振袖茶碗」という別名もあり、今回はその布も出展されるようです。
国宝の抹茶椀は8点ありますが、そのうち日本で作られたのは三井記念美術館蔵の志野茶碗『卯花墻』とこの『不二山』の2点のみです。 そして、こちらの「箱」には、光悦の自筆による箱書きがあるそうです。 姫路藩の酒井家に伝わった名品です。
その他の作品
玳皮盞天目(鼈甲手天目茶碗)
12~13世紀の南宋時代に作られた「玳皮盞(たいひさん)」の天目茶碗で、釉薬が鼈甲(べっこう)のような模様になっているものです。 重要文化財には「鼈甲手天目茶碗(べっこうててんもくちゃわん)」として登録されています。
伯庵茶碗 銘 奥田
江戸時代に流行した「伯庵茶碗」は、茶碗の中ほどに横に切れ目を入れて鉄を塗り込み釉薬との変化で柄になります。 奥田家に伝来したので「奥田」の名前で呼ばれ、松平不昧公の所蔵だったこともあり、中興名物にも数えられています。
赤楽茶碗 銘 障子 本阿弥光悦
今回のチラシのメインビジュアルにもなっている茶碗で、光悦七種の1つですが、近年で公開されるのは初めてだそうです。 茶碗の下部に裂け目があって、そこを陽にかざすと透けて見えることから「障子」の銘が付いたのだそうです。 美術品収集家で茶人としても名高い益田鈍翁の旧蔵品で、個人の所蔵を経て同館の所蔵品になったようです。
展覧会 概要
期間:2019/7/6~9/29(8/19に展示替え休館があり前後期制)
休日:毎月曜日、8/19
時間:大人¥1,100、小中生¥400
交通:JR上諏訪駅から徒歩約15分
サンリツ服部美術館 公式サイト