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情報|皇居三の丸尚蔵館「皇室のみやび」2023/11/3~2024/6/23[東京]

情報-博物館・美術館

皇居三の丸尚蔵館のこと

古くから、天皇や皇室の所有物は「御物(ぎょぶつ)」と呼ばれて大切に守られてきましたが、第二次大戦後にかなりの数が国立博物館の管轄になり、昭和天皇の崩御後にはまた数多くが宮内庁(国)の管轄となりました。 宮内庁が管理していた文物は適切な管理下にあるという事で国宝や重要文化財の指定はされませんでしたが、皇居の東御苑に建てられた三の丸尚蔵館で公開されてきました。 ところが、2021年に5件が、2023年には3件が国宝に指定され、2023年秋には三の丸尚蔵館の文化財管理が文化庁に、管理運営は国立文化財機構に移管されたんです。 「宮内庁三の丸尚蔵館」も「皇居三の丸尚蔵館」と名前を変えて、更に公開を拡大できるように拡張工事も行われています。 三の丸尚蔵館にはまだまだ国宝級の文物がたくさんありますので、これからも国宝の数は増えていくのではないでしょうか。 公開も活発になりそうですし、美術ファンにはとても嬉しいニュースです。

皇室のみやび 展

今回のリニューアルのために2年ほど休館していた三の丸尚蔵館は、2023/11/3から一部だけですがプレオープンしました。 一部と言っても、以前の三の丸尚蔵館よりもスペースは広いような気がしますし、展示設備も最新のものだと思われ、ガラスの反射もなくとても観やすい環境です。

プレオープンの展覧会は「皇室のみやび」で、11月から来年6月下旬まで半年にわたって開催されます。 と言ってもずっと同じ展示内容というわけではなく、4期に分けてそれぞれにテーマがあり(再登板する国宝はありますが)全ての展示内容が入れ替わります。 古い時代の書跡や絵巻から明治時代の超絶技巧の工芸品まで、特徴的な展示品で構成される展覧会になりそうです。

この展覧会で観られる国宝

第1期 三の丸尚蔵館の国宝 2023/11/3~12/24

「三の丸尚蔵館の国宝」の名前の通り、展示品のすべてが国宝です。 第1期だけは、即位5年とご結婚30年を記念した「令和の御代を迎えて」と同時開催のため、この期の展示は国宝が4件8点だけの公開です。 ちょっと少ない感じはしますが、附の絵巻箱が出ていたり、絵巻は公開部分が広くとられていますので、なかなか見応えがありました。 こちらの部屋は全て写真撮影OKということで、閉館間際の人の少ない時間にしっかり撮影させていただきました。

国宝『蒙古襲来絵詞

鎌倉時代の元寇は、神風だけによって敵を退けたのではなく、日本の武士たちの応戦も大いに戦果をあげています。 これは、肥後国の御家人「竹崎季長」が自身の活躍を絵巻物に描かせたもので、画中の人物には「季長」と記されています。 馬や武具まで細かく描かれていて、博物館で観る武具なんかの使われていた様子がよく分かります。

国宝『屏風土代』小野道風筆

平安時代に文化の国風化が進み、書の世界でも和様と呼ばれる日本的な様式が興隆します。 花札にも登場する小野道風は和様の書で名高く、藤原佐理と藤原行成とで「三跡」と呼ばれています。 こちらは宮中の屏風に小野道風が漢詩を書くことになり、その時の下書きです。 本番の屏風はすでに失われていますが、こちらは下書きならではの書き直しなどもあり、それも面白いんです。

国宝『春日権現験記絵』高階隆兼筆

奈良の春日大社は藤原氏の氏神様で、この20巻の絵巻物は鎌倉時代に西園寺公衡が奉納しました。 春日大社のありがたい霊験が、宮廷絵師の高階隆兼によって描かれています。 春日大社なので、鹿がたくさん登場するのもかわいらしいです。 今回は珍しく、附指定の絵巻箱が公開されていて、こちらも春日大社と藤原氏ゆかりの藤があしらわれています。

国宝『動植綵絵』伊藤若冲筆

伊藤若冲が10年かけて描きあげ京都の相国寺に寄進したという、釈迦如来像とその像を荘厳した30枚の花鳥画の内、花鳥画30幅が明治時代に皇室に献上されました。 今回は前期後期で4点ずつが公開され、どちらも若冲お得意の鶏の絵が観られます。 個人的イチオシは後期の「貝甲図」で、一面に様々な貝がちりばめられていてカワイイのです。

同時開催「令和の御代を迎えて」

第1期の2023/11/3~12/24には、2室ある内の1室が、御即位5年・御成婚 30 年を記念した「令和の御代を迎えてー天皇皇后両陛下が歩まれた 30 年」という特別展示になっています。 こちらでは、ご成婚や即位の時の御装束や愛子さまの産着、歌会始の儀の和歌懐紙やボンボニエールなどが公開されています。 御代代わりの頃にもこういった展示が何か所かで開かれましたので、ご結婚の時の装束は観たことがありますが、リニューアル三の丸尚蔵館の反射の少ないガラスで、比較的近い距離で観られますので、かなり細かいところまで拝見することができました。 即位の儀式の時に庭に飾られていた旛が展示されているところにモニターがあって、即位に関連する様々な儀式の10分ほどのダイジェスト映像が流れていました。 皇族やゲストの方々の映像はテレビやネットでも見る機会がありましたが、悠紀主基地方の舞や五節の舞姫などちょっと貴重かなと思いますので、こちらもお見逃しなく。 なお、こちらの部屋は全て写真撮影NGです。

第2期 近代皇室を彩る技と美 2024/1/4~3/3

第2期のテーマは「近代」ということで、一般的に日本の近代は明治~終戦を指すことが多いです。 この期間は、明治宮殿を飾った品々や、明治~昭和の3代の帝に関する文物が公開されるようです。 明治時代には帝室技芸員という制度があって、美術工芸の達人たちが名を連ねています。 まだ何が公開されるか分かりませんが、おそらく明治の超絶技巧な美術工芸品がたくさん観られるのではないでしょうか。

第3期 近世の御所を飾った品々 2024/3/12~5/12

第3期はさらにさかのぼって近世の御所がテーマです。 日本では一般的に江戸時代を指すことが多く、WEBサイトでは「京都御所に伝来した作品を中心に、近世の御所や離宮、あるいは各宮家を飾った品々」と書かれています。 美術好きにはお馴染み、後水尾天皇や八条宮あたりのまさに「皇室のみやび」に出会えそうです。

国宝『更級日記』藤原定家筆

和歌で名高い藤原定家が自ら更級日記を書写したもので、今年の6月に正式に国宝に指定されたばかりです。 国宝に指定されてからは初の公開になるでしょうか。 写真を観る限り、あぁ定家だな、という筆跡で、なんと現存最古の更級日記だということです。

国宝『和漢朗詠集(雲紙)』

こちらは正確にはまだ国宝ではありませんが、2024/3/15に国宝に指定されることが発表されたので、数か月後には正式に国宝になります。

和漢朗詠集というのは、漢詩と和歌を朗詠(声に出して詠む)するための歌集です。 紙の一部を藍で染めた雲紙の、右下と左上という配置が珍しいのだそうです。 

第4期 三の丸尚蔵館の名品 2024/5/21~6/23

第1期でも公開される『春日権現験記絵』と『動植綵絵』が再登板です。 この期間には、皇室に献上された作品を中心に公開されるようで、現時点(2032年11月)での公開情報は、国宝3件の他に大正と昭和期の作品だけで、まだどんな雰囲気になるか未知数です。 

国宝『唐獅子図』狩野永徳筆

狩野派4代目の狩野永徳は、桃山~戦国時代に活躍しましたが、代表作が大阪城や安土城、聚楽第などすでに失われた建造物の障壁画という事で、名声の割に現存する作品が少なめです。 このとても大きな屏風は、豊臣秀吉が本能寺の変を聞いて京都に戻る為に、緊張状態だった毛利と講和をしますが、その時に毛利に贈られたという伝承があります。 永徳の作は六曲一隻のみで、左隻は曾孫の狩野常信が補作していますが、やはり永徳の方は獅子の迫力が違います。 

展覧会 概要

第1期 2023/11/3~12/24
第2期 2024/1/4~3/3
第3期 2024/3/12~5/12
第4期 2024/5/21~6/23

時間:9:30~17:00
休館:月曜日(祝日は開館し、翌火曜日が休館)
料金:一般¥1,000、大学生¥500

皇居三の丸尚蔵館 公式サイト
展覧会 特設ページ

この展覧会はインターネットでの日時指定の事前予約制で、三の丸尚蔵館ではチケット販売をしていません。

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