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情報|栃木県立博物館「鑑真和上と下野薬師寺」2022/9/17~10/30[栃木]

情報-博物館・美術館

鑑真和上と下野薬師寺 展

栃木県宇都宮市にある「栃木県立博物館」の開館40周年を記念して、僧侶になるための正式な儀式「戒律」を日本にもたらした鑑真和上と、戒律を授ける儀式を行う日本でたった3か所の「戒壇」があった下野薬師寺をテーマにした展覧会が開かれます。

下野薬師寺は、長く荒廃していたのであまり有名ではありませんが、奈良時代には日本でたった3か所の戒壇がある大寺院でした。

この展覧会では、鑑真が伝えた戒律や戒壇に関する資料や、古代の下野や薬師寺に関する古文書類、下野薬師寺に伝来した仏像なども公開されるようです。

仏像などは、それまでの金銅仏とはあきらかに雰囲気が異なり、平安初期の木造仏につながる姿をしていたり、変革期の仏教美術を観ておくと良いと思います。

栃木県立博物館「鑑真和上と下野薬師寺」チラシ

三戒壇とは

鑑真が唐から日本にやってきたのは、正式な僧侶になるための儀式「戒壇」のためで、壇を築いてその上で戒を授ける儀式を行いました。 日本で最初の戒壇は東大寺大仏殿の前に築かれ、後に現在も戒壇院戒壇堂が建つ場所に遷されます。 さらに下野国(栃木県)の薬師寺と、筑紫国(福岡県)の観世音寺にも戒壇が置かれ、「日本三戒壇」や「天下三戒壇」と呼ばれました。 

奈良県 東大寺 戒壇院 戒壇堂(中央戒壇)
福岡県 戒壇院 本堂(西戒壇)

奈良時代には大伽藍を誇った下野薬師寺ですが、平安時代には荒廃したようで、室町時代には足利尊氏が各国に置いた「安国寺」になります。 江戸時代以降はまた荒廃しますが、2017年から平成の大修理を経て、寺名が下野薬師寺に戻されたそうです。 現在はそれほど大きくない境内のようで、隣には「下野薬師寺跡」が史跡として整備され、広い敷地に往時の伽藍配置の案内があり、下野薬師寺歴史館も併設されています。 栃木県立博物館からは約20km、車なら40分ほどの距離ですので、展覧会のついでに立ち寄ると良さそうですね。

この展覧会で観られる国宝

薬師如来立像[唐招提寺/奈良]

2019年に国宝に指定された、唐招提寺の6躯の木造仏で、旧講堂に安置されていた4躯の如来と菩薩像は唐の様式が色濃く、鑑真と共に渡来した工人が関わっていると考えられています。 この展覧会チラシの表に載っている仏像が、この薬師如来像です。

獅子吼菩薩立像[唐招提寺/奈良]

薬師如来と作風が同じで、獅子吼菩薩立像となっていますが、唐招提寺のWEBサイトでは「三目四臂(3つの目と4本の腕)の不空羂索観音として造られた」と書かれています。 鼻が欠けているのと、両腕がひじの先からありませんが、エキゾチックで美しい仏像です。

増長天立像[唐招提寺/奈良]

こちらは現在も講堂に安置されている二天像のうちの1躯で、作風は前2つの如来菩薩像とは少し異なりますが、これも唐からの工人によるものだそうです。 平安初期の仏像に通じる、抑えた動きにどっしり重厚感がある、おおらかな雰囲気の仏像です。

東寺百合文書[京都学・歴彩館]

東寺に伝わった文書類で、100の箱に納められていたので「百合文書」と呼ばれています。 2万点近い文書類の中から、通期で公開される「東大寺戒壇院差図」は、日本で最初に築かれた東大寺戒壇院の差図(=図面や設計図のようなもの)、後期のみの「権法務相続次第」は何かわかりませんが、南北朝時代の資料のようです。 

観世音寺資材帳[東京藝術大学]

西の戒壇があった大宰府「観世音寺」の資材帳で、平安初期の延喜5年(905年)に記録されたものです。 上中下の3巻があり、今回は前期に上巻、後期には下巻が公開されます。

東大寺文書[東大寺/奈良]

東大寺に伝わる、奈良時代~室町時代頃までの文書類がまとめて1件の国宝として指定されていて、東大寺に関する資料だけでなく、末寺や荘園に関する文書も多いようす。 979通の文書を巻子本にした100巻と8,516通の文書から、前期に3点、後期に2点が公開されます。

前期「下野薬師寺僧慶順解」「東大寺下野国寺領荘園文書注進状」「東大寺文書出納日記」

後期「下野薬師寺注進状」「東大寺領荘園文書並絵図等目録」

金沢文庫文書・称名寺聖教[称名寺/神奈川]

鎌倉幕府の執権、北条氏の一族「金沢北条氏」の邸宅に作られた金沢文庫と、菩提寺の称名寺に伝わる経典や古文書類2万点ほどが、1件の国宝として指定されています。 前期に4点、後期に5点が公開されます。

前期「慈猛授審海許可灌頂印信紹文」「慈猛授審海許可灌頂印信印明」「審海書状」「護摩口決」

後期「慈猛授審海許可灌頂印信血脈」「忍性書状」「北条顕時書状」「金剛界私見聞」「金剛頂一切如来真実摂大乗現証大教王経」

元暦校本 万葉集[東京国立博物館]

10/12~10/30のみ公開

平安時代末の元暦元年(1184年)に、校合(内容の精査や校正)を行ったとあり、書写は当時の能筆家10名以上が関わったと考えられている、5大万葉集の1つです。 第一章の「古代下野のすがた」で公開されるので、下野で詠まれたか下野を詠んだ歌があるのでしょうか。

延喜式(九條家本)[東京国立博物館]

10/12~10/30のみ公開

古代の法律「律令」を運用するための細かいルールを定めた「式」で、平安初期の延喜の頃に編纂された「延喜式」の最古級の写本です。

公家の九条家に伝来したもので、全50巻中27巻が揃っている中から、今回は第21巻が公開されるようです。  

国宝『延喜式(九條家本)』

国宝の複製・御身代わり像

鑑真和上坐像 の御身代わり像[唐招提寺/奈良]

鑑真和上が唐招提寺で亡くなった後に、弟子が生前の姿を忠実に写して作らせたといわれる像で、現物は年に3日間しか公開されません。 平成期に、脱活乾漆という奈良時代の製法で御身代わり像が作られて、唐招提寺の開山堂に安置され、こちらは毎日拝観可能になっていますが、この展覧会にお出ましになります。 目を閉じて瞑想する穏やかな姿は、教科書で見たことのある方も多いのでは?

那須国造碑[笠石神社/栃木]

飛鳥時代に作られた石碑で、高さ1.5mほどの石柱に笠が乗り、152文字が彫られています。 国造(くにのみやつこ)は地方官の職名で、那須の国造だった那須直韋提という人物が亡くなった後に、その事績を顕彰するために建てられたものです。 栃木県立博物館が所蔵するレプリカが、特別展に並ぶようです。

展覧会 概要

日程:2022/9/17~10/30
休館:月曜日(祝日は開館し、翌火曜日が休館)
時間:9:30~17:00(入館は30分前まで)
料金:一般¥1,250、大高生¥620、中学生以下無料

栃木県立博物館 公式サイト

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