絵因果経とは
絵因果経は「過去現在因果経」という釈迦の前世から現世で悟りを得るまでの経典で、巻物の下半分には経を書き、上半分にはその内容を絵で描く「絵解き」をしている。 中国で始まったものが日本には奈良時代に伝わり、日本でも制作されるようになった。 現在、東京藝術大学所蔵の『絵因果経』と、京都の醍醐寺所蔵の『絵因果経(報恩院旧蔵)』が国宝に指定されているが、いずれも特徴に異なる点があり、一連の作品ではなく別に制作されたと考えられる。
過去現在因果経は4巻で構成されているが、絵因果経は1巻分が上下2巻で作られるため、全8巻となる。 奈良時代頃に制作されたものは、経は楷書で端正に書かれ、絵は素朴な表現で描かれている。 鎌倉時代頃に制作されたものも残っているが、奈良時代とは書画の作風が異なる。
国宝『絵因果経』
上品蓮台寺に伝わる1巻は、全8巻中の第3巻にあたる部分だが、完本ではなく巻末を欠き、巻末の一部は断簡として奈良国立博物館などに所蔵されている。 巻頭に「薬師寺」の印があるため、薬師寺に縁があると考えられる。 奈良時代によく写経に用いられた黄麻紙を使用し、文字や書体などから、唐で作られた絵因果経を元に、写経所で制作されたと推測される。
この国宝を観るには
京都国立博物館に寄託されており、所有する上品蓮台寺では観ることができない。 主に京都国立博物館で、数年に1度は公開される。
公開履歴
2021/6/5~7/4 京都国立博物館「オリュンピア×ニッポン・ビジュツ」
2017/10/17~10/29 京都国立博物館「国宝」
文化財指定データ
台帳・管理ID】201-58
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00054-00
【種別】絵画
【指定名称】紙本著色絵因果経
【ふりがな】
【員数】1巻
【国】日本
【時代・年】奈良時代
【所有者】上品蓮台寺
【国宝指定日】1952.11.22