国宝『蓮唐草蒔絵経箱』
福井県小浜市にある若狭神宮寺は、東大寺の二月堂で行われる修二会(お水取り)で使用する水(閼伽水)を送る、元正天皇勅願の古刹で、この経箱は神宮寺に伝わったもの。
制作時期は平安時代後期で、平安期の経箱は金銅製や木製の漆器が多いが、本品はなめした革に漆をかけた「漆皮(しっぴ)」で作られている。 漆皮の工芸品は、奈良時代によく作られ正倉院宝物にも数十点の作例があるが、平安時代にはすたれ平安後期の作例は本品のみとなる。
装飾経を収めたと考えられる経箱で、わずかに盛り上がりのあるかぶせ蓋形式に、表面内側とも漆に蒔絵が施されている。 表面は、折枝風の蓮唐草模様を散らした間に蝶が飛び、内側は蝶のみが描かれている。
この国宝を観るには
奈良国立博物館の通常展や特別展で公開されるほか、他館に貸し出されることもあるので、数年に1度は観ることができる。
公開履歴
2024/7/6~7/28 石川県立美術館「まるごと奈良博」
2023/5/9~5/28 徳川美術館「大蒔絵展」
2021/7/17~8/15 奈良国立博物館「奈良博三昧」
2020/10/24~11/23 若狭歴史博物館「金色の煌めき」[福井]
2019/1/16~2/17 奈良国立博物館「珠玉の仏教美術」
2015/4/28~5/17 奈良国立博物館「まぼろしの久能寺経に出会う」
2014/10/15~11/9 東京国立博物館「日本国宝展」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-473
出典:国指定文化財等データベース一部抜
【指定番号】00182-00
【種別】工芸品
【指定名称】蓮唐草蒔絵経箱
【ふりがな】はすからくさまきえきょうばこ
【員数】1合
【時代・年】平安時代
【寸法・重量】縦31.8cm、横17.6cm、高12.1cm
【品質・形状】長方形覆蓋造、漆皮製の箱。蓋と身の口縁に金沃懸地の紐を廻らし、身に金銅唐花透彫の紐金物を打つ。意匠は黒漆平塵地の研出蒔絵で蓮唐草と蝶、蓋裏に蝶を描く。
【所在地】奈良国立博物館
【国宝指定日】1956.06.28
【説明】神宮寺伝来の経箱で、意匠が優れていると共に、奈良時代以降における漆皮製という極めて珍しい例として貴重である。