尾形光琳のこと
光琳は、京都の裕福な呉服屋「雁金屋」の二男として生まれる。 雁金屋は、茶々・初・江の浅井三姉妹にも呉服を納めていたような名店だったが、光琳の兄が継いだころには経営が傾いていた。 風流暮らしをしながら狩野派の絵画を学び、俵屋宗達に私淑して独自の画風を完成させ、40代には法橋の位も得ている。 弟は陶芸で有名な尾形乾山で、兄弟で合作もしている。
国宝『八橋蒔絵螺鈿硯箱』尾形光琳作
光琳作品の題材に多く取り上げられる「伊勢物語」第9段の業平東下りから、三河国(愛知県東部)「八橋」の場を、燕子花(かきつばた)が咲き乱れる中に橋が渡されている情景で表している。
硯箱は、硯・水滴・筆など書の道具を入れたもので、一般的に高さ3~10cmほどだが、この硯箱は2段構成で、下段が料紙入れになっている。 黒漆地に燕子花の茎と葉を金蒔絵で描き、鉛製の橋と銀製の杭を乗せ、燕子花の花は螺鈿細工が嵌め込まれる。
この国宝を観るには
特別展のほか、東京国立博物館の通常展に出展されることもあり、2~3年に1度程度は観ることができる。
公開履歴
2022/11/15~12/18 東京国立博物館 150周年「国宝 東京国立博物館のすべて」
2022/10/1~10/23 三井記念美術館「大蒔絵展」
2020/9/8~11/29 東京国立博物館 12室
2018/4/13~5/6 東京国立博物館「名作誕生-つながる日本美術」
2015/11/3~11/23 京都国立博物館「琳派 京を彩る」
2013/3/19~6/9 東京国立博物館 12室
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-551
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00251-00
【種別】工芸品
【指定名称】八橋蒔絵螺鈿硯箱〈尾形光琳作/〉
【ふりがな】やつはしまきえらでんすずりばこ〈おがたこうりんさく〉
【員数】1合
【時代・年】江戸時代
【作者】尾形光琳
【所在地】東京国立博物館
【国宝指定日】1967.06.15
【説明】二段重ねで上を硯入れ、下を料紙入れとした硯箱で、表面及び側面に八橋とそこに咲き乱れる燕子花【かきつばた】の景観を現わす。黒漆の塗立の地に橋を鉛、杭を銀、花を螺鈿、茎と葉は金平蒔絵で描き、内部も黒漆の地に金平蒔絵で、いわゆる光琳波を力強く描く。光琳(一六五八-一七一六)得意の燕子花図の意匠を用いて蒔絵硯箱にまとめ上げたものである。