藤原定家と冷泉家
現在も、今日御苑の北に屋敷を構える「冷泉家」は、鎌倉時代の公家「藤原定家(ふじわらの ていか・さだいえ)」や藤原道長を祖先に持つ、和歌の家柄。 定家の孫の代に3家に分かれ、現在まで続くのは冷泉家のみ。 定家の日記や歌集が4点と、定家の父の藤原俊成による和歌の解説書1点が、国宝に指定されている。
冷泉家の邸内には文庫があり、平安時代以来の古文書や未術品が伝わっている。 明治維新で公家の多くが東京に移ったが、冷泉家は屋敷が残ったこともあり京都に住み続け、文庫と収蔵品が戦災や大震災にあわず、現在まで残された。 邸宅は非公開だが、特別公開などで一般公開される場合がある。
国宝『古今和歌集』藤原定家筆
古今和歌集は、平安初期に醍醐天皇の勅命で編纂された和歌集で、定家による鎌倉時代の写本は、現在最も親しまれる版である。 定家は数多くの古今集の写本を残しており、この冊子は奥書に記された元号から「嘉禄本」と呼ばれる。
定家が65歳の時に写したこの写本は、定家の子の為家から、その子で冷泉家の家祖となる冷泉為相に渡され、以降現在まで冷泉家が所有している。 附として国宝に指定される3通の文書は、後土御門天皇(在位1464~1500年)、後柏原天皇(1500~1526年)、後奈良天皇(1526~1557年)と、戦国時代の3代の天皇が、この写本を高覧された時に書かれたものである。
この国宝を観るには
冷泉家で公開されることはなく、博物館などへ貸し出される場合にしか観ることができないので、機会は少ない。
公開履歴
2024/10/1~10/14 筆の里工房「定家様が伝えた文化」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-775
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00270-00
【種別】書跡・典籍
【指定名称】古今和歌集〈藤原定家筆/〉
【ふりがな】こきんわかしゅう
【員数】1帖
【時代・年】嘉禄2年(1226年)
【寸法・重量】縦22.9cm、横14.6cm、紙数157丁cm
【ト書】嘉禄二年四月九日書写奥書
【作者】藤原定家
【附指定】後土御門天皇宸翰消息、後柏天皇宸翰詠草、後奈良天皇宸翰消息
【所有者】冷泉家時雨亭文庫
【国宝指定日】1983.06.06
【説明】藤原定家(一一六二~一二四一)が嘉禄二年(一二二六)に書写した『古今和歌集』(二十巻)で、中世以降の『古今集』研究に多大の影響を与えたいわゆる「嘉禄本古今集」の原本である.帖の末尾に嘉禄二年、定家六十五歳の時に書写した旨の奥書があり、その奥に定家の子為家がその子の為相にこの本を譲与した旨の奥書がある。本文中には定家自筆になる和歌の書入れ、校合注記、人名や場所等の勘物書入れ、朱点などが稠密に付されており、定家の『古今集』研究の跡を伝えている。附の文書は、室町時代にこの『古今集』を冷泉家から借用披見された三代の天皇の礼状で、冷泉家における伝来を伝えている。