国宝『片輪車蒔絵螺鈿手箱』
漆に金粉を撒いた沃懸地に、貝細工の螺鈿を装飾した手箱で「片輪車」の模様を描いている。 手箱は、化粧道具など身の回りの品を収めた箱で、調度品の代表でもあり、神社の古神宝として奉納されたものも多く残っている。
片輪車は、牛車の車輪が割れたり曲がったりしないように水につけた様子を図案化したもので、流水に車輪が浮かぶこの図柄は、平安時代から人気のモチーフだった。 浅い蓋は、かぶせると本体部分と真っ直ぐになる「合口造り」で、その合う部分には錫製の覆輪が付いている。
制作時期は鎌倉時代頃と考えられ、同じ東京国立博物館所蔵で平安時代に作られた国宝『片輪車螺鈿蒔絵手箱』と比べると、落ち着いた色合いで格調高く、時代の美意識や流行が反映されている。 この手箱は、松江藩主で茶人としても高名だった松平不昧公の旧蔵品だが、制作当時の由来や来歴などはわかっていない。
この国宝を観るには
それほど頻繁ではないが、数年に1度は東京国立博物館の通常展で公開される。 特別展や他館への貸し出しもある。
公開履歴
2022/10/18~11/13 東京国立博物館 150周年「国宝 東京国立博物館のすべて」
2018/4/21~6/17 三井記念美術館「大名茶人・松平不昧―お殿さまの審美眼―」
2016/2/9~4/24 東京国立博物館 12室
2014/8/19~11/16 東京国立博物館 12室
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-387
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00099-00
【種別】工芸品
【指定名称】片輪車蒔絵螺鈿手箱
【ふりがな】かたわぐるままきえらでんてばこ
【員数】1合
【国】日本
【時代・年】縦27.3cm、横35.5cm、高21.0cm
【品質・形状】錫の置口をつけた合口造の箱。表は沃懸地に螺鈿の片輪車を表し、付描をもって全面に波文を描く。蓋表は梨子中に巴文を散らし、身に車輪形銀製紐金物を打ち、内に菊花文金(銀)錫の置口をつけた合口造の箱。表は沃懸地に螺鈿の片輪車を表し、付描をもって全面に波文を描く。蓋表は梨子中に巴文を散らし、身に車輪形銀製紐金物を打ち、内に菊花文金(銀)
【所在地】東京国立博物館
【国宝指定日】1953.03.31
【説明】鎌倉時代の蒔絵手箱の中でも、量感に富んだ器形、よく整った文様の逸品である。同種の意匠になる平安時代の国宝と比較すると、その時代の趣向の差違が見てとれよう。雲州松平家伝来といわれる。
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