国宝 一遍聖絵と時宗の名宝 展
国宝指定の『一遍聖絵(一遍上人絵伝)』は全12巻で構成されますが、第7巻だけ東京国立博物館が所蔵し、残り11巻は神奈川県にある時宗の総本山「清浄光寺(遊行寺)」にあります。 今回は全12巻がそろって公開される貴重な機会! 前期と後期で巻替えがありますが、どちらに行っても全12巻を一度に観ることができるんです。
絵巻の他に、踊り念仏が始まった頃の資料や、教団成立頃の上人像など、あまりスポットライトをあてられない「時宗」の成り立ちから発展、当時の各地での熱狂ぶりまでとても分かりやすい展示でした。
1章 浄土教から時宗へ
口から6体の仏像が飛び出す像で有名な「空也上人」が始めたといわれる「踊念仏」を全国に広め、時宗の元を作った一遍だが、そのベースとなる「浄土信仰」についての説明と資料です。
6体の阿弥陀仏が口から飛び出す空也上人像は、六波羅密寺のものが有名ですが、こちらでは清浄光寺所蔵のものが展示されています。 六波羅密寺のものよりもちょっと頭が大きめで愛嬌があるような。。。 その他、重要文化財の知恩院蔵「阿弥陀如来像」や、二尊院蔵「法然上人像」など、浄土宗の名宝展といった趣です。
2章 時宗の教え 一遍から真教へ
踊念仏や賦算(=阿弥陀と書かれた札を配ること)を広めたのは一遍ですが、その頃はまだ教団組織にはなっておらず、次代の「真教」という僧が時宗という組織を作りました。 この章はその成り立ちを説明してくれます。
一遍と真教は時宗で「二祖」と呼ばれていますが、その肖像画や直筆の「南無阿弥陀仏」の掛軸など、ゆかりの品物が多数あります。 時宗の僧が踊念仏で遊行(=各地をまわること)する時は、阿弥衣(あみえ)と呼ばれる粗末な衣を着て、木製の箱に鉦などを下げていたそうです。 その頃の装束類も展示されています。
他所の話になりますが、天皇陛下の即位のときしか御開帳しないので話題にだっている祇園の「長楽寺」も時宗の寺院なんです。 GWの特別公開に行きましたが、そちらの宝物館にも空也上人像や阿弥衣などの展示があって、京博を観た直後でおぉ!となりました。 毎年秋(10/20~11/30)に秋季特別展「遊行上人とその秘宝展」をされるそうなので、興味がわいたらこちらもどうぞ。
3章 国宝 一遍聖絵の世界
そしていよいよ国宝『一遍聖絵』です。 一遍上人の生い立ちから踊念仏を始め全国を巡るところ。 特に各地の名所が描かれているのが見ものの絵巻なので、ここは時間を取ってゆっくり鑑賞したいです。 絵巻は混むととても見づらいので心配したのですが、GW中でも17時ごろはとても空いていてゆっくり鑑賞できました。
各地の風景もですが、人々の表情がとてもいい絵巻です。 京都での踊念仏で一心不乱に念仏を唱えながらグルグル回ってるぽい僧たちや、それを見ようと人々が熱狂して源氏物語の車争いのようになっている様子。 こんな崖っぷちじゃないでしょ(笑)というような神奈川県の遊行寺の描写や、あちこちにいる野犬のワイルドだけどヘボそうな感じまで。 人によって気付きポイントもまちまちだと思うので、ツボを見つけて下さい。
それから、絵巻のデメリットである全体を観たかった問題ですが、今回は公開されない部分は明治~大正期に竹内雅隆による複製が展示されています。 なので、ストーリーがつながらないという問題なく、一遍上人の一生を追うことができますよ。
4章 歴代上人と遊行 時宗の広まり
このコーナーでは、一遍の跡をついで時宗の経団を組織化した真教上人に始まり、その後も念仏を広めていった僧たちの肖像彫刻や直筆の文書などが並びます。 リアルな高僧像が多いので、そういったものが好きな方はじっくり見ちゃうのではないでしょうか。
5章 時宗の道場とその名宝
各地にある時宗の寺院から寺宝が出展されています。 総本山である遊行寺を始め、京都の長楽寺や金蓮寺、滋賀の浄真寺などから、阿弥陀如来を中心とする仏像や涅槃図の他、花瓶や硯など調度品もいくつか展示されています。
5/28~の2週間ほどは、東京国立博物館の国宝『洛中洛外図屏風(舟木本)』岩佐又兵衛筆の右隻が出展されるようです。 関西ではあまり展示されないと思いますので、こちらもお見逃しなく。