白鶴酒造と白鶴美術館のこと
日本有数の酒の名産地として知られる「灘」の地で、寛保3年(1743年)から日本酒作りを続ける白鶴は、同じ灘にある菊正宗酒造にルーツを持ちます。 両家とも「嘉納」姓を名乗っており、菊正宗は「本嘉納」と、白鶴は「白嘉納」と呼ばれているんだそうです。
白嘉納の7代目「嘉納治兵衛(鶴翁)」は、茶人・文化人としても名を馳せ、数多くの美術品を収集します。 鶴翁の「世界的価値のあるコレクションを私蔵するのではなく、ひとりでも多くの方の目に触れてほしい」という考えで、コレクションを元に戦前の昭和9年(1934年)に美術館を開館します。 本館は開館当時からの建物が残り、登録有形文化財に指定されています。
文字を語る―白鶴コレクションにみる漢字造形の変遷―
白鶴美術館は常設型ではなく、春・秋の特別展期間中だけ開館します。 この秋の企画展は「文字を語る」で、3千年以上前に中国で成立して現代でも使われ続けている「漢字」をテーマに、その移り変わりを美術品で眺めることができます。 更に、漢字や日本で派生した「かな」が、意匠化されて美術品に取り入れられるなど、文化との関わりも興味深いです。
古いものでは3千年前の中国の青銅器類が何点か観られるほか、白鶴美術館が所蔵する2点の国宝を含む唐や奈良時代の古写経類。 平安時代の「古筆」からは、藤原俊成による千載集の「日野切(ひのぎれ)」や、金峯山伝来の色とりどりの装飾料紙を継いで作られた「妙法蓮華経」など、見た目にも華やかな作品が多いようです。
この展覧会で観られる国宝
賢愚経残巻(大聖武)
荼毘紙(だびし=檀紙ともいう)という白い紙に、大きな文字で賢愚経を書写した奈良時代の経典です。 「大聖武(おおじょうむ)」というのは、聖武天皇が書写したという伝説によりますが、聖武天皇の真筆とは筆跡が異なるようです。 書の手本帳で古筆を貼り集める「手鑑」の先頭に、大聖武を集めるのがステイタスとなり、数行に断簡されたものが多いですが、白鶴美術館所蔵品は貴重な巻子本です。
大般涅槃経集解
中国の唐時代に書写された経典54巻と、平安~江戸時代に補完された17巻をあわせた全71巻の経典です。 奈良の西大寺に伝来したもので、唐時代の写経部分にも日本で読点が加えられており、語学研究にとっても貴重な資料です。 前後期で展示替えがあるようです。
同時開催「絨毯-描かれた図形と文字-」
白鶴美術館の新館では、10代目の嘉納秀郎による中東絨毯コレクションが展示されます。 こちらも常設ではなく、春・秋の企画展に合わせたテーマ展示が企画されます。 今回は「描かれた図形と文字」というテーマで、文字が織りこまれたものや、反復する図形を中心にした展示のようです。
展覧会 概要
期間:2019/9/25~12/8
休日:毎月曜日(祝日は開館し、翌火曜が休館)
時間:10:00~16:30(入館は30分前まで)
料金:大人¥800、シニア・大高生¥500、小中生¥250
公式サイト:http://www.hakutsuru-museum.org/