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情報|MIHO MUSEUM「金峯山の遺宝と神仏」9/16~12/10[滋賀]

情報-博物館・美術館

金峯山の遺宝と神仏 展

滋賀県南部の山間にあるMIHO MUSEUM(ミホミュージアム)は、仏教美術や茶道具などを中心とした日本の古美術や、古代エジプト・ローマ・ギリシャ・西アジアなど、世界の古代文明の優良なコレクションをたくさん持つ美術館です。 コレクション展示のほかに年に数回の特別展が企画され、2019年の大徳寺龍光院展ではめったに公開されない曜変天目や密庵咸傑墨蹟が公開されたりと、かなり力の入った特別展が開かれます。

この秋の特別展は「金峯山の遺宝と神仏」で、吉野の金峯山や修験道をテーマにした展覧会です。 金峯山と言えば、明王のように憤怒の表情で片足を踏み下ろす「蔵王権現」信仰で、この蔵王権現の外見は激しめのはずなのですが、作例を観ると愛嬌があるというか、ちょっとゆるめの仕上がりのものが多く、ファンも多いのではないでしょうか。 展示リストを数えたら、鏡像や懸仏など様々な形の蔵王権現が前後期で50点も公開されるようで、これだけ揃うと時代の流行や地域性などの差を見比べられそうで楽しみです。

事前情報が少なかったので、国宝の出展は多くても2~3点かなと思っていたら、陽明文庫から平安時代の藤原氏の日記が2点が出されたり、全期間では5件7点の国宝が集められていました。 線刻蔵王権現像は東博によく行かれる方にはお馴染みですが、それ以外は公開されることがあまり多くないので、紅葉狩りのスケジュールに入れてはいかがでしょうか。

第1章 役行者伝説と金峯山信仰の始まり
第2章 山上本堂の解体修理に伴う発掘調査と遺物
第3章 蔵王権現
第4章 道長の金峯山参詣と金峯山経塚の遺宝
第5章 新出の金峯山経塚の遺宝
第6章 金峯山・修験道世界の完成

金峯山と修験道のこと

金峯山(きんぷせん)は、神社仏閣巡りが趣味とか歴史が好きといった方以外には馴染みがないかもしれません。 修験道の聖地の1つで「山下の蔵王堂」と呼ばれた金峯山寺は桜で有名な奈良県の吉野の中心的な寺院で、このあたりから「山上の蔵王堂」と呼ばれた大峯山寺のある山上ヶ岳までの一帯を「金峯山」「金の御嶽」と称しました。 平安末~鎌倉時代には、貴人たちの間で遠方の寺院を詣でることが流行して、金峯山を詣でる「御嶽詣」は熊野詣と並ぶ霊験あらたかな人気スポットだったようです。

修験道というのは、役小角(えんのおづぬ、えんのおづの、役行者とも)が感得した蔵王権現を本尊として、古い時代の山岳信仰に仏教や神道が集合して成立したといわれます。 特に真言宗や天台宗など密教と密接で、真言宗の醍醐寺三宝院や、天台宗の聖護院も修験道の聖地として有名です。 修業を重んじる修験道では、深い山に分け入って修業をし、修業をする人=修験者は「山伏」とも呼ばれます。 

国宝『金峯山寺 本堂』

東京国立博物館所蔵の蔵王権現(今回は出展されません)

この展覧会で観られる国宝

金銅藤原道長経筒[金峯神社/奈良]

10/3~12/10のみ公開

平安~鎌倉時代にかけて流行した御嶽詣は、かの藤原道長も自ら訪れたほどで、自筆の写経を金銅の経筒に入れて埋納しています。 この経筒は、大峯山寺に近い「金峯山経塚」から発見されていて、単独で国宝に指定されています。

この経筒、表面に24行511字の銘文が刻まれていて、藤原道長が41歳の寛弘4年(1007年)に埋納したことが判明しているんです。 この年は、道長の生涯を記録した「御堂関白記」に記された年代とも一致しています。

この翌年には一条天皇に入内した中宮彰子が懐妊したので、金峯山の霊験によるものだと話題になったようです。

金銅藤原道長経筒の複製(国立歴史民俗博物館で撮影)

大和国金峯山経塚出土品[金峯山寺/奈良]

9/16~11/5「経箱 鷺脚台付」「経箱 猫脚台付」
10/17~12/10「双鳥宝相華文経箱」

国宝の藤原道長経筒と一緒に出土したとされる経箱3点とその付属品が、一括で国宝に指定されています。 銘文が刻んであるので資料的な価値が高い経筒に比べ、こちらの経箱3点はとても装飾性が高く華やかなものです。 展示替えがありますが、10/17~11/5の期間は3点がそろって公開されますので、この期間が狙いめです。 この期間は藤原道長経筒も公開されていますね。

大和国金峯山経塚出土品「双鳥宝相華文経」の複製(国立歴史民俗博物館で撮影)

大和国金峯山経塚出土品「経箱 猫脚台付」の複製(国立歴史民俗博物館で撮影)

線刻蔵王権現像[西新井大師総持寺/東京]

東京の西新井大師の所有で、東京国立博物館でかなりの期間公開されているので、ご覧になった方も多いかもしれませんが、こちらは金峯山から出土したものなんだそうです。 縦横70cm前後の銅板に、蔵王権現を中心として、左に13、右に19、合計32の眷属が彫られているダイナミックなものです。

御堂関白記[陽明文庫/京都]

9/16~10/15 「寛弘4年(1007)条」

事前のリリースでは国宝は経塚の出土品類の情報だけでしたが、展示リストを見たら陽明文庫所蔵の日記2点も出ていて嬉しい驚きです。 御堂関白記は藤原道長の日記で、今回公開されるのは、もちろん御嶽詣の年「寛弘4年(1007)」で、自筆が14巻と古い時代に書写された写本が12巻のうちのどちらなんでしょうか? 陰陽師の作った具注暦という暦の余白に書き込まれていて、現代人がシステム手帳のすみっこにその日の出来事を書き込むような感じで、ぐっと親しみがわきます。

後二条師通記[陽明文庫/京都]

9/16~10/15「寛治4年(1090)条」

藤原道長のひ孫にあたる藤原師通の日記で、こちらは自筆本は1巻のみで、古い時代の写本が29巻の30巻が国宝に指定されています。 寛治4年(1090)条が公開されるようなので、おそらくこの年に何か金峯山に関するイベントがあったのだと思われます。 御堂関白記と共に、前半1/3ほどの日程のみ公開されます。

展覧会 概要

日程:2023/9/16~12/10
休館:月曜日(9/18と10/9は開館し、9/19と10/10が休館)
時間:10:00~17:00(入館は1時間前まで)
料金:一般¥1,300円、大高生¥1,000、中学生以下無料
公共交通:JR石山駅から「ミホミュージアム」行バスで約50分(1時間に1本程度)

MIHO MUSEUM 公式サイト

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