※4/25~5/31まで休館、会期を6/6から6/13まで延長し、6/7も開館
静嘉堂文庫美術館のこと
明治時代に三菱財閥を創業した岩崎彌太郎氏を初代として、戦後の財閥解体まで4代にわたる岩崎家の当主は、古今東西の美術品を多く集めました。 特に、2代目の彌之助氏と4代目の小彌太氏の蒐集した日本と東洋の古美術品は、静嘉堂文庫と東洋文庫の基礎になっています。 1977年から、現在の世田谷区岡本の地で一般に公開され、1992年には現在も使用されている静嘉堂文庫美術館がオープンしましたが、展示施設のみ今回の展覧会を最後に、丸の内の明治生命館に移転するそうです。 岩崎家の邸宅があった現在地は、小高い丘の上まで長いスロープが続く自然にあふれた土地で、雰囲気のある建物も残っているので、ぜひ移転前の姿をご覧ください。
旅立ちの美術 展
岡本での最後の展覧会は「旅立ちの美術」というテーマで、旅立ちに関する美術品が展示されます。 この夏には昨年から延期になった三菱一号館美術館「三菱の至宝」展で、静嘉堂文庫と東洋文庫の国宝が全て公開されるのですが、なんと今回も国宝全7件が公開されるようです。 その内の3件は期間を通しての展示、4件は前期(~5/9まで)のみの公開なので、ご注意ください。
国宝以外の見どころは、大名物とされる茶入の『付藻茄子(つくもなす)』でしょうか。 足利義満のコレクション「東山御物」で、後に松永久秀から織田信長の手に入り、本能寺の変や大坂の陣を潜り抜けたという、日本の中世史を間近に見てきた名品です。 隣には、付藻茄子と共に「天下三茄子」の1つに数えられる「松本那須」も並んでいます。
個人的におすすめなのは、わずか14歳で亡くなった小間物問屋のお嬢さんの一周忌に、河鍋暁斎が描いた「地獄極楽めぐり図」で、おたっちゃんが地獄や極楽を楽しく見物して往生するという画帖です。 ユーモアあふれる構成で、おたっちゃんのご両親もさぞや慰められただろうという、ほっこり作品です。 もう1つ気になるのが「猿曳棚」という茶の湯で使う小型の棚で、戸袋に猿曳(猿回し)の絵が描いてありますが、これが伝ですが狩野元信筆! 千利休の師とされる武野紹鴎から古田織部に伝わり、織部や小堀遠州の弟子で伊達家に茶道頭として仕えた清水道閑に贈られたというものです。 華美な感じはないですが、なんとも味わいのあるもので、よく残っていたなと感心しました。
この展覧会で観られる国宝
※4/25~5/31まで休館、会期を6/6から6/13まで延長し、6/7も開館
静嘉堂文庫が所蔵する7件の国宝のうち、曜変天目・倭漢朗詠抄・太刀 銘 包永の3件は期間を通しての公開、残りの4件はGWを含む前期のみの公開です。 7件とも、今年の6/30~開催されるいつ微視一号館美術館の「三菱の至宝」に出展されますが、おそらく混雑すると思いますので、ゆっくり鑑賞したい方はこちらに行っておくといいかもしれません。
曜変天目茶碗(稲葉天目)
静嘉堂文庫といえばの名品、そして静嘉堂文庫きっての働き者の稲葉天目です。 3つ現存する曜変天目の中でも第一の名品とされたもので、観る角度によってキラキラ色彩の変化が楽しめますよ。
倭漢朗詠抄
倭漢朗詠抄(和漢朗詠集)は、和=和歌と漢=漢詩を集めた歌集で、舶来の華麗な料紙に書かれているので、筆跡だけでなく料紙にもご注目ください。 前後期で展示替えがあります。
太刀 銘 包永
大和(現在の奈良)の刀工「平三郎包永」による太刀です。 東大寺の転害門(てがいもん)前に住んだので、「手掻派(てがいは)」と呼ばれる一派で、包永は始祖とされます。
趙子昂書 与中峰明本尺贖 ※前期のみ
中国の南宋の皇族だった「趙子昂」は、王朝が変わると元のフビライに仕えます。 王羲之流の書をよくした文人で、日本からの留学僧も参禅した「中峰明本」という僧に送った書状です。
風雨山水図 伝馬遠筆 ※前期のみ
水墨画の名品で、中国の宮廷画家「馬遠」による山水図です。 墨だけでなく淡彩も組み合わされ、木々が風合いの異なる緑で淡く彩色されています。
源氏物語 関屋・澪標図屏風 宗達筆 ※前期のみ
風神雷神図で有名な琳派の祖「俵屋宗達」による、源氏物語の2つの場面を描いた屏風です。 一面に金箔が貼られた中に華やかな色あいで、源氏とすれ違う2人の女性が描かれています。
禅機図断簡 智常禅師図 因陀羅筆 ※前期のみ
中国元時代の禅僧「因陀羅」の禅画で、元は1巻だったと思われる5つの絵画が全て国宝に指定される「禅機図断簡」です。
展覧会 概要
※4/25~5/31まで休館、会期を6/6から6/13まで延長し、6/7も開館
期間:2021/4/10~6/13
休館:月曜日(5/3は開館し5/6が休館、6/7も開館)
時間:10:00~16:30(入館は30分前まで)
料金:一般¥1,000、高大生¥700、ぐるっとパスで入場可能
静嘉堂文庫美術館 LINK 公式サイト
アクセス
二子玉川駅4番乗り場から「玉30・31系統」に乗車します。
「静嘉堂文庫」バス停は敷地の東端にあり、長いアプローチを通って正面から入ります。 1つ手前の「民家園」で降りると、民家園の横の坂をあがって静嘉堂の裏門から入ることになります。 途中で岡本八幡宮の境内を通ることもできるので、行きと帰りで別の道を使うのも楽しいです。