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情報|東京国立博物館 国宝室「未来の国宝」2022年スケジュール

国宝じゃないけど

国宝室とは

東京国立博物館本館の2階にあり、国宝が1点だけ展示されている部屋です。 1ヶ月前後で展示替えがあり、東京国立博物館が所蔵または寄託されている国宝から、年に十数件が公開されます。 国宝室の中央には椅子があり、落ち着いた雰囲気の中でゆっくり国宝を鑑賞できる、貴重な空間です。

創立150年記念事業 未来の国宝

2022年は、東京国立博物館の前身にあたる文部省博物局が最初の博覧会を開催してから150周年にあたります。 秋には特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」で所蔵する国宝89件全てが公開されるということで、混雑必至ですが期待値も高い記念事業が目白押しです。 国宝はジャンルごとに公開や移動できる日数に制限があり、今年の秋に全てを公開する為に、何年も前から展示や貸出のスケジュール調整をされたのだと思います。 東博では通常展でも国宝の展示はありますので、今年の通常展は寄託品頼みになるかと思いきや、国宝室では「未来の国宝」というテーマで、現在は文化財に指定されていないが研究員の方一押しの美術品が公開されるそうです。 美術好きの方なら、心の中に「マイ国宝」がありますもんね。

国宝室は上の写真のように正面が展示スペースになっていて、壁に懸けられる絵画や、腰ほどの高さに置ける書画類が展示され、奥行の必要な立体作品は展示されません。 ですが今年は、特集展示を行う本館1階14室で秋だけですが「未来の国宝-彫刻・工芸・考古の逸品」として、3点が紹介されるようです。 これは常設で、彫刻・工芸・考古の国宝室というのを作って頂きたいような企画です。

本館2室 国宝室-書画の逸品

4/12~5/8「見返り美人図」菱川師宣筆

安房(現在の千葉県)出身で江戸時代前期に江戸で活躍した菱川師宣(ひしかわもろのぶ)は、版本(版画で作ったた本)の挿絵を手掛けて人気を博し、遊里や役者の絵や版画を多く制作して、浮世絵の祖と言われています。

これは師宣の肉筆画で、若い娘が後ろを振り返った姿で「見返り美人図」と呼ばれます。 桜や菊の花輪を配した着物に、帯は当時流行していた「吉弥結び」という締め方で、髪は後ろに垂らした先端を輪に結ぶ「玉結び」に鼈甲の櫛を挿すという非常に贅沢なものです。

5/10~6/5「焔」上村松園筆

上村松園(うえむらしょうえん)は、明治から昭和にかけて美人画を得意とした女性画家で、品の良い娘や若い奥方の絵が多いですが、源氏物語の六条御息所を題材にしたというこの絵は嫉妬に狂う女性が描かれた異色作です。 非常に大きな画面に、蜘蛛の巣の絡まる藤の模様の着物を着た女性が、髪を噛んで振り返る姿は恐ろしい迫力です。

6/7~7/3「春日宮曼荼羅」

曼荼羅というと、仏がびっしりと幾何学的に並んだものをイメージしますが、これは春日大社の境内を描いただけのように見えますが、よく見ると上部に5躯の仏が描かれています。 日本では神仏習合が進んで、仏が神の姿を借りて現れたとする本地垂迹説によって、春日大社の神々もそれぞれ相当する仏がいますので、それが描かれているんです。

7/5~7/31「蝦蟇鉄拐図」雪村周継筆

雪村周継(せっそんしゅうけい)は、室町~戦国時代に関東や東北で活躍した画僧で、雪舟に私淑(直接弟子入りせずに憧れて真似たり取り入れたりすること)して、独特の水墨画を確立します。 この蝦蟇鉄拐図(がまてっかいず)は、中国の蝦蟇仙人と鉄拐仙人を描いたもので、元ネタは室町時代に日本にもたらされた顔輝という画家の絵で、雪村はこれを参考にしたようです。 蝦蟇仙人は3つ足の蛙を操ることができ、鉄拐仙人は自分の分身を吐き出すことができて、ちょっと異様ですが愛嬌のある姿をしています。

8/2~/28「源氏物語図屛風(初音・若菜上)」土佐光起筆

土佐光起(とさみつおき)は江戸時代初期のやまと絵の画家で、宮中の絵所預(えどころあずかり)に任ぜられて、御所の障壁画などを手がけました。 この源氏物語図屏風は、源氏の全盛期とも言える「初音」と、女三宮が降嫁して紫の上が病がちになる「若菜上」で、屏風の全面に御簾が掛けられたように描かれ、一面が細かい横線で覆われています。 御簾越しに華やかな平安貴族の暮らしが覗けるという、とても凝った意匠になっています。

8/30~9/25「山水図屏風」呉春筆

呉春(ごしゅん)は、与謝蕪村の門下で徘徊や絵画を学んだので、最初は文人画の特色が強いのですが、後に円山応挙に弟子入り(又は私淑とも)して、写生を特色とする円山派と文人画を融合させた「四条派」の祖となります。 この画は、大阪の池田に居を移して呉春と名乗り始めた頃の作品のようです。

9/27~10/23「金胎仏画帖」

金胎仏画帖は、平安時代後期の絵仏師で宅磨派の祖といわれる「宅磨為遠(たくまためとお)」による仏図像集で、金剛界の諸尊が描かれています。 元は高野山にあったのが、熊本県人吉市の願成寺に伝来して、現在は断簡になって各所に所蔵されています。 国宝室の年間スケジュールには、頭部が猪の「猪頭天(金剛面天)」の写真が掲載されていますが、これは伊之助人気にあやかってということでしょうか?!

10/25~11/20「市川鰕蔵の暫(碓井荒太郎貞光)」歌川国政筆

歌川豊国の弟子の歌川国政(うたがわくにまさ)は、人物の特徴を表現するのが上手で、残っている作品は役者絵が多いのだそうです。 5代目団十郎だった市川鰕蔵が「暫(しばらく)」を演じている姿で、顔は真横を向き髪の飾りは画面からはみ出すほど大きく、手前には家紋の入った袖の一部が描かれています。 歌舞伎好きな方は、あれ?と思うかもしれませんが、この時代の暫は「鎌倉権五郎景政」ではなく「碓井荒太郎貞光」が主人公だったようです。

11/22~12/25「形見の直垂(虫干)」川村清雄筆

江戸時代の末に旗本の家に生まれた川村清雄は、明治初期にフランスやイタリアで油画を学びますが、帰国後に職に恵まれなかったこともあり、勝海舟に助けられます。 このちょっと不思議な絵は、勝海舟の追悼で描かれたもので、右に描かれている胸像が勝海舟で周囲には遺品が描かれています。 少女が来ている白い直垂は、勝海舟の葬儀で川村清雄が着用して棺に付き添ったといいます。

2023/1/2~1/29「玄圃瑤華」伊藤若冲筆

玄圃瑤華(げんぽようか)は、伊藤若冲が53歳の時の作品で、下絵だけでなく自刻で石摺という技法で刷られています。 玄圃は仙人の住む桃仙郷、瑤華は玉のように美しいということで、植物と虫などが取り合わせられていて、とてもモダンな印象のモノトーンの作品です。

2023/1/31~2/26「江戸城本丸大奥御対面所障壁画下絵」狩野養信筆

幕府の御用絵師だった木挽町狩野派の9代目で、江戸時代後期に活躍した狩野養信(かのうおさのぶ)は、江戸城の障壁画などを手掛けますが、残念ながら現存していません。 ですが、この養信は30年以上にわたって御用絵師の仕事を「公用日記」に記し、障壁画の下絵と共に東京国立博物館に所蔵されています。 かなりの枚数が残っているようですが、どんな画面がいくつくらい出るでしょうか。

2023/2/28~3/26「平家納経(摸本)」

こちらは、平家一門が厳島神社に奉納した国宝『平家納経』の摸本です。 大正時代に、益田鈍能が中心になって摸本の制作が企画され、日本美術の研究家で画家・書家でもあった田中親美が何点かを制作しました。 厳島神社に奉納されたほか、出資した益田家、大倉家、安田家などに納められ、益田家のものが東京国立博物館に所蔵されているようです。 古い装飾経は、金銀箔や金銀泥が酸化して黒っぽくなってしまうので、こういった模造作品を観ると、制作当時の華やかさに圧倒されます。

本館14室-彫刻・工芸・考古の逸品

9/6~10/10「白瑠璃埦」

白瑠璃埦というと正倉院宝物かなと思いますが、実はあのガラス製のボウルはあちこちの美術館博物館に所蔵されています。 ただし、発掘されたものではなく、所有者から所有者へと伝わった伝世品は正倉院宝物の白瑠璃埦が世界で1つだけなんだそうです。 今回展示されるのは、東京国立博物館所蔵の重要文化財で、大阪府羽曳野市にある安閑天皇陵から出土したものだと思われます。

10/12~11/13「吉野宮蒔絵書棚」

書棚といっても実用的な棚ではなく、書院の違い棚をギュッと小さくしたような、装飾性豊かな調度品です。 江戸時代の調度品は、古典から意匠をとったものが多いですが、こちらは持統天皇の吉野行幸で柿本人麻呂が詠んだ和歌が表されています。 

11/15~12/25「青磁盤」

青磁は中国で焼かれた透明感のあるペールブルーの陶器で、特に室町時代頃は龍泉窯の青磁がとても珍重されたので、青磁の名品が何点か国宝に指定されています。 この名称だけだとどの青磁盤かわかりませんが、川端康成が所蔵したこともあるという汝窯の青磁盤かもしれません。


東京国立博物館 150周年記念事業 公式サイト

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