正倉院宝物のこと
正倉院宝物というと「鳥毛立女屏風」や「蘭奢待」など、教科書にも載っていた有名な品々を思い浮かべます。 もちろん国宝でしょ!と思う方も多いでしょうが、実は1つも国宝には指定されていません。 もちろん、価値が低いというわけではなく、宮内庁の管轄にあるからなんです。 天皇家の所有品や宮内庁の管轄のものは「御物」と呼ばれ、国宝の指定はされません。 国宝や重要文化財など「文化財保護法」は、価値の高い文物を適切に保護するのが目的で、宮内庁が管理していれば問題ないだろう、ということで指定されないようです。 例外的に建物の『正倉院正倉』だけは国宝ですが、これにはわけがあって・・・、詳しくはリンク先をご覧ください。
正倉院は、東大寺を建立した聖武天皇(上皇)が崩御すると、その御忌に光明皇后が冥福を祈って聖武天皇遺愛の品々を東大寺に奉献します。 それらの宝物が宝庫の「正倉」に納められ、現代まで守り継がれたのが「正倉院宝物」です。 長い歴史の中で、後世に加えられた品や、途中で散逸してしまった品もあるようです。
御即位記念特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」
今年は御代替わりで、旧帝室博物館の国立博物館でも、関連したいくつかの企画展が開催されます。 平成館の2階を全て使っての「正倉院の世界」は、その中でも特に大きな企画展で、毎年秋に奈良でしか公開されない「正倉院宝物」が公開されます。
そして、企画力とキャプションの充実では定評のある東京国立博物館のこと、色んな角度で比較や再現をしてくれて、今まで気をとめなかったことも面白く感じられる企画展です。 正倉院宝物は「国宝級」の品物だらけですが、このサイトでは「国宝」だけピックアップしています。
第1章 聖武天皇と光明皇后ゆかりの宝物
前期のみですが、光明皇后が聖武天皇の遺物を納めた時の目録「東大寺献物帳(国家珍宝帳)」が、1巻全て公開されます。 東博所蔵の国宝『法隆寺献物帳』と同様、一面に「天皇御璽」が押されています。 天平時代の美しい工芸品や調度品が並びます。
国宝『海磯鏡』
国宝『法隆寺献物帳』前期
国宝『細字法華経』附「経筒」後期
第2章 華麗なる染織美術
素材にもよりますが、布の寿命は1,000年が限界だともいわれます。 後世で修理はされているのでしょうが、1,300年も前の奈良時代の布製品がこれだけ残っているのは、やはりすごいことなんです。
第3章 名香の世界
「蘭奢待」として有名な1mほどの香木で、正倉院宝物としては「黄熟香」となっています。 足利義政・織田信長・明治天皇と、各時代の権力者が切り取ったあとが残っています。 他に、香を焚くための調度などが展示されます。
第4章 正倉院の琵琶
前期には「螺鈿紫檀五絃琵琶」が、後期には「紫檀木画槽琵琶」が展示されます。 会場では、螺鈿紫檀五絃琵琶の模像を作る職人さんの映像が流され、細かい作業の様子を知ることができます。 模像の琵琶を奏でた音色が、BGMとして流されています。
第5章 工芸美の共演
正倉院より少し古い時代のもので、明治時代に皇室に献納され、戦後は東京国立館の所蔵になった「法隆寺献納物」も展示され、正倉院宝物との違いや共通点を見せてくれます。
第6章 宝物をまもる
正倉院がどのように守り伝えられてきたか、がテーマの展示です。 「塵芥」とよばれる繊維・糸くずや小さな破片なども、素材や色別に細かく保存してあります。 明治時代の写真やスケッチ、いくつかの模造品などが展示され、私たちが鑑賞できるのも文化財を守る方々の苦労あってのこと、と気付かされます。
後半の、正倉院のサイズを体感するコーナーや模造品の一部は写真撮影OKということで、とても賑わっています。
展覧会 概要
期間:2019/10/14~11/24
休日:毎月曜日(祝日は開館し、翌火曜が休館)
時間:9:30~17:00(金・土・祝前日は~21:00)
料金:一般¥1,700、大学生¥1,100、高校生¥700、中学生以下無料
ミュージアムシアター「VR 正倉院 時を超える想い」
東洋館の地下には「ミュージアムシアター」があって、凸版印刷制作の映像が上映されます。 ただ、大きいスクリーンで映像を眺めるだけではなくて、ガイドのお姉さんのナレーションがあるので、万博のパビリオンにいるようです。 有料なのですが、35分ほどで内容も濃いですし、映画館のような椅子なので休憩にもちょうどいいです。 今回は、企画展にあわせて「VR 正倉院 時を超える想い」が上映されるので、あわせて観ると良さそうですね。
期間:2019/10/9~12/22
休日:博物館休館日+火曜日
時間:12:00、13:00、14:00、15:00、16:00(正倉院展開期中と土日祝は11:00もあり)
時間:約35分
定員:各回90名
料金:高校生以上¥500、小中生¥300