鑑賞ログ|美を紡ぐ 日本美術の名品@東京国立博物館

鑑賞ログ|美を紡ぐ 日本美術の名品@東京国立博物館

紡ぐプロジェクト

この展示と、3~4月に開催されていた「両陛下と文化交流展」は「TSUMUGU紡ぐプロジェクト」として開催されています。 紡ぐプロジェクトとは?

皇室ゆかりの優品や国宝・重要文化財をはじめとする日本の美を、広く国内外へ、さらに未来へ紡ぐために、文化庁、宮内庁、読売新聞社が協力して進めていくプロジェクトです。 特別展覧会の開催に加え、フォーラムなど関連事業や、日本美術・文化の魅力を発信するポータルサイトの開設、文化財修理事業をプロジェクトの柱として実施します。貴重な文化財・美術品の公開を通じて得た収益を修理に充てることで、文化財・美術品を後世に紡いでいくために欠かせない「保存、公開、修理」という一連のサイクルが永続する仕組みを作っていきます。

https://tsumugu-exhibition2019.jp

ということで、民間企業も協賛して文化財の保護を進めて下さるんだそうです。 今回の展示2室には保護に関する展示も多くあって、修復の様子や修復に必要な伝統工芸(紙漉きなど)の後継者不足問題などが紹介されていました。 予算だけだと難しいでしょうから、こういったプロジェクトで作品を守って頂けるのは本当にうれしいです。

美を紡ぐ日本美術の名品展

前回同様、お目にかかる機会の少ない「宮内庁三の丸尚蔵館」からたくさん出ています。 旧皇室所有の品が多いので、明治~の帝室技芸員の作品も多いですが、一般に出たら絶対国宝!といった名品も多く出ています。 他は、東京国立博物館と文化庁のもので構成されています。 国宝は5点。

前回の「両陛下と文化交流」は、この先お目にかかる機会の絶対になさそうな大嘗祭の屏風などありましたが、特別展にしては品数がちょっとさみしかったんです。 が、今回は会場が倍ほどになって、これだけのクオリティの作品を観せて頂けるなら大満足です(もちろん国宝展なんかに比べるとコスパはイマイチですが)

美を紡ぐ日本美術の名品展 @東京国立博物館

第1会場 T5室(1F正面階段奥)

まず三の丸尚蔵館の唐獅子図屏風が出迎えてくれます。 とても大きな屏風で、右隻は安土城や聚楽第の障壁画を描いた狩野永徳が、左隻は家光~綱吉あたりまでの江戸幕府に仕えた狩野常信が描いたものです。 永徳の方は、秀吉が陣中に携えたとか。 この展覧会のメインビジュアルにも使われていて、さすがの大迫力です。 常信のものは、永徳のものありきで後からあわせて描いたようですね。

永徳が続いて、国宝の『檜図屏風』ですが、これは八条宮の御殿の襖絵だったものが八曲屏風になっていたのが、修復で四曲一双に直されてその際につながりの悪かった松の枝もうまく繋がったんだそうです。 こちらも狩野派の重厚さでいかにも立派です。

この重々しい作品に挟まれて、長沢芦雪の「花鳥遊魚図鑑」があるんですが、花鳥遊魚と言っておきながらお得意の子犬を混ぜちゃってます(笑) 例のあの犬達がじゃれあっていますよ。 あぁずっとこれを観ていたい、でも次の人に譲らなきゃで横にズレたらダメ押しで更に子犬が2頭。 右側の黒子犬はちょっと宗達の子犬みたいで芦雪には珍しい子犬のタイプですね。

他には光琳と乾山兄弟の「八橋図」が並んでるのが見もの。 光琳は品のよい“やまと絵”風で、乾山のはデフォルメで洒脱な雰囲気でオシャレですね。 その他、定家や道風の書などもあって、全会場の中で目玉品が集中しているお部屋です。

第2会場 T4室(SHOP内側)

こちらは作品が4点のみ。 いずれも明治の“超絶技巧”と呼ばれるような帝室技芸員の作品です。 パリやシカゴ万博に出展され喝采を浴びたものだそうで、ものすごい職人技を持つ素晴らしいアーティストの作品。 

この部屋は「修復」についての展示が多くあって、漆の色見本や和紙の産地による質の違いなど説明されています。 修復保存に必要な技術のうち、かなりの数が「技術保持者1名」となっていて本当に心配になりました。 ちょっとの研修で出来ることでもないでしょうし、こういったプロジェクトで人材育成もして下さるといいのですが。

第3会場 T2室(T4の2階部分、浮世絵展示の内側)

入って右手には令和で話題の『万葉集』で、こちらは国宝だそうです。 残念ながらあの部分ではないんですね。 書の国宝では『寛平御時后宮歌合』も出ていました。 他にも公任の書など、和様の柔らかい書が何点かあって、最近特に仮名文字好きなのでじっくり拝見しました。

この部屋も絵画が多いですが、第1会場とは打って変わって軽めで和やかなものが中心。 入ってすぐ右手は狩野探幽の屏風ですが「唐子遊図屏風」で、中国の風俗をした子供達が、様々なお正月の遊びをしています。 品は良いのですが愛嬌にあふれてかわいらしい屏風。 そしてちょっと先には国宝の『納涼図屛風』がありますが、こちらも実にのどかでいいですね。 ♪狭いながらも楽しい我が家ってことでしょうか。 お父さんの着物の透け具合やヘチマの力強さなどじっくり堪能できました。

第4会場 T1室(2階の大階段反対側)

今回、狩野派や尾形兄弟など関係の深いものや“双璧”と言われるようなものを並べてあるような気がします。 文人画からはもちろん池大雅と与謝蕪村。 蕪村のは新緑の中を小さいホトトギスが飛んでいるかわいらしいもの。 大雅のはレッドクリフを描いた大作と思ったら、よく見ると赤壁を小舟で観光しているのどかな雰囲気。 こちらはまた明治期の作品が増えて、黒田清輝・横山大観・竹内栖鳳など有名どころの作品も並びます。

この部屋で特に気に入ったのが、俵屋宗達が画を、烏丸光広が詞書を担当したという「西行物語絵巻」です。 公達がズラリと並んでいますが、宮中の廊下の襖絵まで細かく華やかに描かれています。 同じ「西行物語」で光琳のものが隣にあって、宗達に私淑していた光琳が書写したんだそうです。 宗達のは文化庁で光琳のは三の丸尚蔵館なので、遠い年月を経て隣に並ぶなんて微笑ましいですよね。

全体の感想

会場は前回の倍ほどで、国宝5点重要文化財14点を含む全40点を観られて大満足です。 国宝室などで観た作品もありましたが、こちらの方が照明が明るいので、また違った雰囲気や見方ができました。 それから修復の状況も見せて頂けたのも良かったです。 今年度は、知恩院の『早来迎』や東京国立博物館の『普賢菩薩画像』がこのプロジェクトで修復されるそうで、ありがたいですね。 できるだけ長く続けて頂きたいものです。

展覧会 基本情報

出品リストはこちらをごらんください

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