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鑑賞ログ|神護寺 宝物虫払(5/1~5)

国宝鑑賞ログ

神護寺のこと

平安京の造営に尽力した「和気清麻呂(わけのきよまろ)」によって奈良時代末期に創建された「高尾山寺」が元になり、同じく清麻呂が河内地方に建てた「神願寺」と合併して「神護寺」となります。 清麻呂亡き後も子息らによって空海や最澄を招くなど、平安初期の仏教の中心地のようになっていきます。

唐への留学から戻った空海は十数年ほど神護寺に住し、最澄らへ灌頂(密教の儀式)を行ったのも神護寺でした。 平安後期には一時衰退しますが、鎌倉時代に文覚上人によって再興され、現在は高野山真言宗の「遺跡本山(ゆいせきほんざん)」となっています。

宝物虫払とは

「虫払(むしばらい)」は、気候のよい時期に宝物や書籍などを広げ、虫やカビがつくことを防ぐもので、寺社や文庫などで古来から実施されていました。 「虫干し」や「曝涼(ばくりょう)」「曝書(ばくしょ)」などとも呼ばれます。

神護寺宝物虫払特別展

神護寺 虫払特別展ポスター

毎年5月1日~5日の5日間だけ行われます。 会場は、神護寺の入口である「楼門」の真横にあって僧侶の方の生活の場である「書院」で開催されます。 公開される寺宝も貴重ですが、附属の茶室も含め書院は通常非公開のため、GWの青紅葉鑑賞とあわせて一度は行っておきたいです。 入山料と別に¥800かかりますが、博物館の特別展ができるクラスの宝物の質と量なので、これは高くないと思います。

展示は書院の3室が使われ、隙間なく絵画や文書類が並べられますが、絵画類はガラスもなくごく間近で観られます。 3室のうち奥の部屋が一番拡張が高いと思われ、床の間や違い棚があり国宝の絵画類が展示されていました。 すれ違うのもやっとの空間で、宝物類を傷つけないように荷物は入口に置かないといけないので、貴重品を持ち歩きやすいように小袋を持参するかポケットのある服装がおすすめです。 僧侶の方や係の方がおられるので、気になることは質問すると教えて頂けたり、面白いお話をきけることもあります。

このイベントで公開される国宝

『釈迦如来像』
平安時代の作で輪郭線が赤で描かれた釈迦座像は、衣も赤で描かれ上に截金で模様がつけられていました。 天井から吊るしてちょうどいい位の大きさで、大きな床の間の真ん中に掛けられていました。 穏やかな表情できらびやかな装飾の平安仏画でした。

『源頼朝像』『平重盛像』※神護寺三像のうち2幅
昔の教科書に「鎌倉幕府を開いた源頼朝」として載っていた画像の本物で、寄託されている京博からこの期間だけ里帰りするそうです。 3幅で国宝に指定されていますが、東博に寄託されている「伝藤原光能像」はここでは公開されません。 ごく間近で観られるので、黒い束帯に同色で描かれた織り柄の模様までしっかりと観られます。 位階の高い平重盛の方が模様の大きい束帯を召されていました。 平重盛像は何度かパリに出張していて、かわりにモナリザやミロのヴィーナスを日本に貸して頂けたとか。 上記の釈迦如来像の脇侍のように、向かって左に頼朝像、右に重盛像が掛けられていました。

『山水屏風』冷泉為恭筆
主要な宝物にはキャプションが付いていますが、この高さ1mほどの小型の山水図屏風には「模写したもの」とあり、てっきり「国宝のレプリカ」だと思ったら「冷泉為恭が模写したものが国宝に指定されている」ということでした。 帰ってから調べたのですが、平安~鎌倉期に描かれた国宝屏風の「附」として『絹本著色同模本〈/六曲屏風〉』が指定されているので、公開されているのは附指定の方だと思います。(作者となっていた冷泉為恭が幕末の画家のため) 灌頂の儀式の際などに用いる山水図で、山水の中に人々の暮らしが描かれています。

『潅頂暦名』空海筆
弘仁3年11月15日に空海が行った「灌頂」の式で、参加者がどの仏と結縁したかなどを書いた名簿で、空海の直筆によるので書道の世界でも有名なものです。 博物館の特別展などで何度か観たことがありましたが、小型のガラスケースでこんなにじっくり観られるとは。 後宇多天皇直筆による潅頂暦名の施入状もあわせて展示されていました。

『文覚四十五箇条起請文』藤原忠親筆
神護寺中興の祖「文覚上人」が立てた45の誓いを藤原忠親が書いたもので、後部に朱で押された手形は「後白河法皇」のものだそうです。

神護寺 虫払特別公開2019年 出品リスト
神護寺 虫払特別公開2019年 出品リスト

その他に公開された宝物

2019年の公開は全67点で、この他に重要文化財多数を含む多数の宝物が公開されました。 特に印象に残っているものだけ書きとめます。

「虫払定文書」
寛永14年(1637年)に虫払いについて定められたもので、毎年6月に行うといったことが書かれています。 末尾には「一品親王」「二品親王」のサインがあり、これは仁和寺と醍醐寺(大覚寺だっけ?)に入寺していた御門跡の法親王の署名だそうです。

「仁王像」若冲筆
若冲による仁王像で、阿形・吽形がそれぞれ単独で描かれた2幅対の掛軸です。 途中から係の方の説明を聞いたのですが、阿形は手からネズミが飛び出すところ、吽形は手にネズミを握り締めていて、これは「若いネズミ=じゃくチュウ」だそうです。 重々しい宝物の中でちょっとほっこりの1点でした。

「和気氏三幅対」ほか
神護寺の開基である清麻呂やその一族を書いた肖像画の他、「和気清麻呂公伝記」なども展示されていました。 絵画類はそれほど古いものではないと思います。

「真言八祖像」詫摩俊賀筆、から数点
少し前に観た東寺の『十二天像』を描いた宅間勝賀が確立した「宅磨派」(詫摩・詫間・詫磨などとも書く)の「詫摩俊賀」による真言八祖像のうち数点が出ていました。 俊賀は高山寺を開いた栄西の時代に活躍したようですね。

書状類
「豊臣秀吉朱印状」や「徳川家康朱印」など公を帯びた文書や、源頼朝や夫人の政子からの書状など、有力者に関係する文書がたくさん出ています。

書院の庭園と茶室

荷物などを置く廊下からは「灌頂の庭」を拝見できます。 廊下の突き当たりにある扉から縁に出て、庭の写真を撮影させて頂きました。 この時期は青紅葉が本当に美しくて、階段の登り降りで苦労させられた雨も苔や緑がキレイになって結果良しでした。

受付で呈茶券¥500で販売していますが、これはお得ですよ! 書院併設の本格的な茶室で生菓子(今回は柏餅風の生菓子でした)付きのお抹茶が頂けます。 書院と反対側のお庭が観られますし、待つ間には床の間も拝見しました。 床の掛軸は、梅の枝と鳥が描かれた水墨画で「季節外れですが令和なので」ということで、令和の出典に因んだ梅の画が選ばれたようです。 そしてこの画が雪村!特別展67点+1点でお得な気分になりました。

神護寺へのアクセス

市バス8号「四条烏丸(地下鉄四条駅)」→終点「高雄」
平日・土曜は1時間に1本程度、日祝は40分に1本程度
バスは時間がかかるので、地下鉄「太秦天神川」でこのバスに乗るのが効率がいいと思います。
高雄は市バス一日券のエリア外ですが、「地下鉄バス一日券」¥900だと対象エリアなのでこれがオススメです(四条烏丸⇔高雄は片道¥520)

西日本JRバス「高雄・京北線」
「京都駅」→「二条駅前」経由(JR・地下鉄乗換)→「山城高雄」
1時間に2~3本あり、片道¥520

どちらのバス停も同じ場所(隣)にあります。 乗換検索などでは神護寺まで「徒歩10分」ほどで表示されますが、これは地図上の直線距離で計算したと思われ、石畳の坂を下りて橋を渡りまた坂を登るという道のりで、神護寺のサイトでは「徒歩20分」となっています。 それなりの覚悟で行きましょう。

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