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鑑賞ログ|国宝の殿堂 藤田美術館展(前期)@奈良国立博物館

国宝鑑賞ログ

国宝の殿堂 藤田美術館展

藤田美術館は、明治時代の実業家で男爵にも叙せられた藤田傳三郎氏のコレクションが元になった美術館です。 文化財の海外流出を憂いて、私財をつぎ込んで蒐集されたそうです。 こういった方がいらして、海外流出が食い止められたものも多いんでしょうね。

戦火でも焼け残った蔵を利用した美術館が大阪城の北にありましたが、現在は建替えで閉館しており、2022年頃に再開されるそうです。 今回の企画は、閉館中のコレクションを観せて頂けるのですが、これだけの数まとまっては今後も難しいかもしれません。 国宝の曜変天目茶碗が3椀全て同時期に公開されることでも話題になっています。

国宝の殿堂 藤田美術館展@奈良国立博物館

第1章 曜変天目と茶道具

今回の目玉でメインビジュアルにも多く使われている説明不要の名品、国宝の『曜変天目茶碗』です。 入ってすぐに専用のブースが設けられ、これを最前列で観るための行列が別にできています。 ゆったり鑑賞のコツは後ほど。 

GWは曜変ツアーでこちらの曜変が3椀目です。 それぞれ展示が違うので何とも言えませんが、斑紋の色彩変化は稲葉天目ほどではありませんが、青系のオーロラ色で縁どられた斑紋がキレイです。 口部分に覆輪が付いているのも華やかですね。 この曜変天目は、内側だけでなく外側にも斑紋が出ているので有名ですが、今回の展示は照明が暗めだったせいか、わずかに斑紋の輪郭がわかる位でした。 光の中で角度を変えて観てみたいものです。

ここは茶道具の展示ですが、展示替えはなく全品が前後期通しての展示です。 全11品中、国宝1点重要文化財6点という充実した内容。 「交趾大亀香合」は小さな亀の香合ですが、“名物”として東の大関にもなったそうで、藤田翁の最後のコレクションです。 病床で手に入ったことがわかったけど、到着した時には亡くなられていたそうで、それでも最後に良いニュースが聞けて良かったですね。 天目茶碗の流行で日本でも作られた「菊花天目」など、中国・朝鮮・日本の茶道具の名品が並んでいます。

第2章 墨蹟と古筆

墨蹟は禅僧の書のこと、古筆は平安~鎌倉時代の和様の書ですが、このコーナーの出展品は全て国宝と重要文化財! ただ、書と絵画は保護のことがあって、前後での展示替えになるものや、通期でも巻替になるものがほとんどです。 近かったら両方行くのですが、残念。

墨蹟では、国宝の『柴門新月図』 が前期のみ出展されています。 これは下の方に別れのシーンを水墨画で描き、上部には僧達が寄せ書きのように別れについての漢詩を書いたもの。 他にも大燈国師の立派な書など出ています。

古筆では、やはり国宝の『深窓秘抄』でしょう。 平安時代に書写された和歌集で、漢字と仮名を混ぜた和様の柔らかい手跡で、“業平”や“つらゆき”など知った名前も多くありました。 ところどころに青と紫のボカシ模様が入っていますが、これは染めた繊維を漉き込んでいるんだそうです。 その他、有名な「高野切」なども観られますよ。

第3章 物語絵と肖像

国宝『紫式部日記絵詞』は残念ながら後期のみ。 このコーナーもほぼ全てが前後で展示替えがあるようです。 前期のみの国宝は『両部大経感得図』で、下調べせずに行ったのですが、元は襖に描かれたようでかなり大型の2枚の絵です。 「両部大経」は密教で重視される「大日経」と「金剛頂経」のことで、善無畏が祈ると空に経典が浮かび出たところと、龍猛が塔の中で守護神に守られた経典に近づくところを描いています。 隣には真言八祖像の大きな掛軸がかけられているのですが、善無畏・龍猛とも着ている袈裟の色がこの画と同じなんです。 決まりごとなんでしょうか?

もう一点の国宝『玄奘三蔵絵』は、前期は1・2巻が、後期に3・4巻が展示されます。 名前の通り孫悟空でおなじみの三蔵法師の絵巻物で、夢でお告げを受けた三蔵法師が西方へ経典を求める旅を描いたもの。 舞台は中国~インドですが、やまと絵で品よく描かれた絵巻物で、寝ている三蔵法師の顔の可愛らしさといったら。 鎌倉時代のものですが、剥落も少なく表情など細部までしっかり鑑賞できました。

絵巻では他に、菱川師宣の「酒呑童子絵巻」や、京博で特別展をしている「一遍上人絵伝」の摸本も出展されています。 

第4章 仏像

会場が変わって反対側の室に移ります。  入口では快慶作の重文「地蔵菩薩像」がお出迎え。 それほど大きいものではないですが、色彩がつけられて袈裟の截金も美しく残っています。 貴族的でとても品の良いお地蔵様です。

他の仏像は文化財指定はありませんが、全期間展示替え無しで観られるようです。 六波羅密寺と同じ様式で、体に対してちょっと頭大きめで愛嬌のある「空也上人像」や、北魏時代(6世紀)にまで遡る金銅仏など、ちょっと珍しい仏像を観られました。

第5章 尊像と羅漢

仏教関係が続き仏画のコレクションで、こちらにも国宝はなく重要文化財が何点かありました。 修法に用いた風の本尊像や、羅漢図は作者を変えて出ています。 珍しいところでは「地蔵菩薩像(マニ教)」で、地蔵菩薩として伝わっていたのですが、後世の研究によりマニ教の祖師像として描かれたと推定されるとのこと。 確かにちょっとエキゾチックな風貌をしています。 曼陀羅から仏画の描かれた柱まで、バラエティに富んだ展示は博物館の収蔵品くくりで展示されているからこそでしょうか。

第6章 荘厳と法具

引き続き仏教関連のものが多いですが、仏具や経箱など工芸品が集められています。 密教の法具一式が修法のように並べられていたり、厨子もいくつかありました。

国宝は『仏功徳蒔絵経箱』が出ていて、平安時代頃に作られたかぶせ蓋の蒔絵の箱で、経箱として使われたのではないかということです。 箱にも蓋にも四方に法華経の逸話が表されていました。 ちょっと素朴な雰囲気もあり、もう少し明るいところで観たいなと思いましたが、漆は難しいですよね。 後期は『花蝶蒔絵挾軾』に替わるようです。

第7章 仏典

後半も折り返しで、休憩コーナーもあるのでリフレッシュして臨みましょう。 最初に国宝の『大般若経(薬師寺経)』が出ていて、387巻も揃っているそうです。 薬師寺に伝来したので「薬師寺経」とか、書写したという人物の名前から「魚養経」とも呼ばれているそう。 楷書で力強く書かれた経典で、薬師寺の所蔵を示す印も押してありました。 このコーナーも半分以上が文化財で、装飾経などもあり様々な経典が少しずつ観られました。

第8章 面と装束

仏教関連の展示がかなり続きましたが、ちょっと俗っぽくなって飽きてきてたぽい人々がまた活気を取り戻しています(笑) 邸宅内に能舞台も構えていたという藤田翁のコレクションは、奈良時代の伎楽面、平安時代の陵王の面、江戸時代の能面や能装束まであり、様式の変化をダイジェストで見せて頂けました。

第9章 多彩な美の殿堂

いよいよ最終章、カテゴライズできなかったものを全部出しちゃいました的に、焼物から馬具、古裂や古墳出土品までありました。 曜変のところに出なかった焼物は、華やかな仁清や洒脱な乾山など。 光琳が絵付けをした乾山の角皿は、七福神の愛嬌も植物の線も良い味わいです。 辻が花裂の収集帳は前に根津美術館でも観ましたが、裕福な方の間でコレクションが流行った時期があったようですね。 疲れたところにバラエティに富んだ展示で、最後の力を振り絞れました。 

曜変天目の攻略法とコツ

どこの博物館もですが、展示の前半は皆やる気でキャプションをしっかり読むので混んでいて、後半に行けば行くほど空いてきます。 閉館30分前の入口近辺なんて、かなり快適に鑑賞できるんです。 そこでオススメなのが、第2会場→第1会場の順で回ること。 または前半はサラーっと流し見して、全て観終わった後に前半に戻って気になるところを重点的に再鑑賞。 これは美術館の構造やルールによるので、係の人に確認して下さい。

国宝の殿堂 藤田美術館展@奈良国立博物館

奈良国立博物館は、全部見終わった後に再度スタートしてもOKというだけでなく、当日限りなら外に出ても再入場可能だそうです。 入館の時に「再入場」と言うと、チケットの裏に日付印を押して頂けるので、念のためお願いしておきましょう。 私の訪問はGW10連休の真っただ中でしたが、16:45頃には曜変天目の列は10名ほどになっていて、ほぼ待ち時間なしで鑑賞することができました。 あまり混んでいたら、寺社巡りで時間をつぶして夕方戻ってくるのもアリですよ。

国宝の殿堂 藤田美術館展 基本情報

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