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鑑賞ログ|サントリー美術館「扇の国、日本」前期

国宝鑑賞ログ

扇の国、日本展

今回のサントリー美術館では国宝が3点出品されますが、『東寺百合文書』は通期で残り2点は期間限定。 特に大阪四天王寺の『扇面法華経冊子』は12/12~24までの2週間弱だけの展示です。 他の展示品も前半後半でかなり展示替えがあるようなので、迷う方はぜひ年間¥5,000のメンバーになって両方観ちゃいましょう(笑)

「扇」というわりと狭いテーマでサントリー美術館をどう埋めるのか少し心配なくらいでしたが、日本人は本当に扇(+扇のデザイン)が好きなんだなという充実の展示でした。

第一章「扇の呪力」※国宝出展

第一章は「扇の呪力」で、奉納された桧扇などの展示です。 こちらは後期になると国宝の『熊野速玉大社古神宝類』から檜扇が出展されるようですね。 神社に奉納されたり、仏像の中に納入されたり、日常品以上の感覚が持たれていたようです。

入ってすぐのインパクト勝負の「序章」は、パリ万博に持って行った100枚の扇の中から出展され、探幽の山水図、芦雪の雀図、豊国の遊女図とタイプの違う日本画の紙扇です。 芦雪の雀はなんと雀の正面顔!しかも口をパカーと開けています。 芦雪の動物は本当に愛嬌がありますね。

12/12~24だけ出展される国宝の『扇面法華経冊子』は、縦が20センチちょっとほどでしょうか、広がりの少ない扇型の料紙に、狭角の放射状に法華経が書かれています。 今回展示されていた第一巻は、源氏物語絵のような公家の風俗をした男女が描かれていました。 『目無経』に色をしっかりと付けた感じで、国宝にも「絵画」として登録されています。 絵巻のような華やかさで、細い字の流麗な字体で法華経が書かれていますが、女性の紙や男性の烏帽子など黒地部分は金泥に変えるという凝りよう。 鳥羽上皇の皇后である高陽院が四天王寺に奉納したものだそうです。

第二章「流れゆく扇」

このテーマでは、扇面流しや扇面散らしの障壁画や屏風などが中心。 扇のデザインのバリエーションという雰囲気ですが、ちょっと珍しいのが「源氏物語絵巻 湖水五十四帖」で、右端の始まり部分は石山寺で源氏物語を書く紫式部が、そこからは扇を始め様々な調度品が流されてそこに源氏絵が描かれています。 先日、石山寺の紫式部の部屋を観たばかりなので、感慨深い!

第三章「扇の流通」※国宝出展

続いて第三章は「扇の流通」で、国内はもとよりかなり古い時代から中国などに輸出していた記録が残っているようです。

ちょっと地味ですが、こちらにも国宝の展示があります。 『東寺百合文書』から扇に関する文書が出されていて、前期・後期で展示替えがあるようです。 前期は絵師の六角益継が東寺に納めた扇の代金を3回に分けて受け取った証文です。 扇30本で15,000文なので1本500文ということになりますが、当時一般的な扇は30文程度(約¥3,000)で買えたようなので、今の価値にすると大体¥50,000ほどとかなりの高級品です。

第四章「扇と文芸」

このコーナーは、和歌集や源氏物語絵に扇のデザインが多く取り込まれていたんですね。 百人一首のような絵が扇の中に描かれていたり、四季順に並べられた源氏物語絵など。 雅な雰囲気のコーナーでした。 

第五章「花ひらく扇」

ここが一番ボリュームのある展示です。 琳派・浮世絵・文人画ですが、酒井抱一が扇の両面に風神雷神を描いたものや、宗達の系統による屏風、蕪村や大雅も出ています。 池玉瀾が描いた扇もありましたが、玉瀾は大雅が亡くなった後は、扇に絵を描いて生計を立てていたんだそうです。 ここは前後で展示替えが多いので、ぜひ両方観たいですね。
浮世絵で気になったのは扇面を縦に使っているところ。 カーブの部分が左右どちらかにして画面を縦に長く使い、そこに役者絵などを描いていました。 その他の浮世絵では「扇売り」を描いた役者絵も多かったです。 優男の職業といえば!だったんですかね?

「ひろがる扇」

最後の「ひろがる扇」は、扇の様々なデザインが身の回りの色々ものに浸透していくところがテーマになっています。 絵画だけでなく着物や調度品、焼物など現在にもつながるような扇のデザインでした。 華やかな着物類は前後で展示替えがあるようなので、こちらも楽しみです。

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