令和7年(2025年)新指定国宝
2025年3月21日の文化審議会で、4件の美術工芸品が国宝に、42件の美術工芸品が重要文化財に指定を答申したことが発表されました。 実際に国宝や重要文化財に指定されるのは、官報告示のタイミングなので、まだ数か月先になります。 発表されたのは令和6年度(2024年度)ですが、指定される頃には令和7年度(2025年度)になっていると予想されますので、タイトルは令和7年度(2025年度)にしました。
内容は、絵画・彫刻・書跡典籍・考古資料が各1点ですが、絵画は写経に使われた紙が絵巻物の下書きというパっと見は絵画に見えない作品です。 例年、新国宝の発表から間もない時期に、東京国立博物館で新国宝・重要文化財の特別展示が開かれていましたが、今年は文化庁が移転してお膝元になった京都文化博物館で開かれるようです。 3月下旬時点では2件5点の公開情報しかありませんが、詳細が出たらまた追記したいと思います。 これ以外でも、伎楽面は毎週金土に東京国立博物館で公開されていますし、他の作品も公共の美術館博物館が所蔵しているので、今後も観られる機会はちょこちょこあるのではないかと思います。
京都文化博物館「新指定 国宝・重要文化財」4/19~5/11[京都]
国宝『伎楽面』「師子児」「治道または酔胡王」「呉女」「力士」[東京国立博物館]
国宝『太安萬侶銅板墓誌』[国/奈良県立橿原考古学研究所]
新しく指定される国宝
物語下絵料紙金光明経巻第二(目無経)[大阪市立美術館]
建久3年(1192年)に崩御した後白河法皇の菩提を弔うために、法王が生前に絵巻の制作を進めていた料紙を使用して、所縁の人物達が金光明経を書写しました。 下絵は経巻に関係なく、引目鉤鼻に平安時代の装束をまとった人物が書かれていて、人物に目鼻が描かれていないので「目無経」と呼ばれています。
一連の作品としては、以下の2件が国宝に指定されています。
国宝『白描絵料紙墨書金光明経』京都国立博物館
国宝『白描絵料紙理趣経』五島美術館

公開情報
2025/3/25~3/30 大阪市立美術館「What’s New! 名品珍品大公開!!」
2025/4/26~5/18 大阪市立美術館「日本国宝展」
伎楽面[東京国立博物館]
伎楽は、飛鳥~奈良時代に寺院で奉納された音楽劇で、伎楽面は演者がかぶったお面です。 お面と言っても能のような顔面部のものではなく、頭にすっぽりかぶる現代のゆるキャラの頭部のようなもので、正倉院宝物にもあるので、そちらを観たことがある方もいるかもしれません。 東博所蔵の新国宝は、法隆寺に伝来したものが明治期に皇室に献納されたもので、楠製が19面、桐製が9面、乾漆で作られたものが3面の、合計31面が一括で国宝に指定されます。
公開情報
毎週金土のみ、東京国立博物館 法隆寺宝物館の第3室で公開されています。
2025/4/19~5/11 京都文化博物館「新指定 国宝・重要文化財」4点を公開
2025/4/19~6/15 奈良国立博物館「超・国宝-祈りのかがやき-」で「呉公」を公開
2025/4/19~6/15 京都国立博物館「日本、美のるつぼ-異文化交流の軌跡-」で「酔胡王」を公開
和漢朗詠集[皇居三の丸尚蔵館]
ここ数年は毎年、皇居三の丸尚蔵館の作品が国宝に指定されていて、今年も料紙の美しい和漢朗詠集が国宝になります。 現存する和漢朗詠集では最多の詩歌が載っていて、三条西家や近衛家に伝来したものを、明治期に近衛家から皇室に献上されたそうです。 粘葉装というノートのような仕立てなので、一度に公開される分量が少ないのが残念ですが、公開される度に様々な料紙を楽しみにしたいと思います。

太安萬侶銅板墓誌[国(文化庁)]
太安萬侶(おおのやすまろ)は古事記を編纂した人物として有名で、萬は万や麻、侶は呂の字が使われることもあります。 太安萬侶の墓は茶畑から偶然発見されて、この墓誌は縦29.1cm、幅6.1cmの銅板に、住所、氏名、没日、位階など41文字が2行に刻まれています。 国の所有ですが、橿原考古学研究所付属博物館にが管理していて、同館には安萬侶墓の模型などもあります。

公開情報
2025/4/19~5/11 京都文化博物館「新指定 国宝・重要文化財」
国宝の追加
淳祐内供筆聖教(薫聖教)[石山寺/滋賀]
新国宝の発表と一緒に、すでに国宝に指定されたものに数を追加することが発表されました。
石山寺の中興の祖「淳祐」の記した経典類で、淳祐が若い頃に、高野山で入寂する空海の膝に触れると良い香りがして、淳祐の記すものからも良い香りがしたことから「薫聖教」と呼ばれています。 国宝の追加については解説文がないので詳細は不明ですが、83巻・1帖となっているので、これまで国宝に指定されていた73巻・1帖に10巻が追加されるのではないかと思います。