智証大師円珍のこと
円珍は讃岐国(現在の香川県)に生まれ、母は空海の姪であったと伝わる。 比叡山で修行し僧侶になると、比叡山のほか熊野や葛城など修験道の霊場も巡礼する。 仁寿3年(853年)に入唐すると、6年に渡り中国各地を歴訪し、多くの経典類を携えて帰朝する。
帰国後は、清和天皇に潅頂を授けたり、皇太后の加持僧になるなど重く遇され、貞観10年(868年)には延暦寺の座主となる。 寛平3年(891年)に78歳で入寂し、延長5年(927年)には醍醐天皇から「智証大師」の諡号が贈られる。
国宝『智証大師関係文書典籍』
智証大師円珍に関する文書や経典類で、自筆の書や経典、唐へ留学した時の文書類や、日本に請来した目録など、日本と中国で書かれたものがある。 その中には、唐の国内を移動するためのパスポートのような2通の「過所」など、日本だけではなく、世界的に貴重な資料が含まれる。
三井寺に伝来したが、明治時代に北白川宮家の所有になった文書が8巻あり、これらは『円珍関係文書』として別に国宝に指定されている。 没後に醍醐天皇から諡号を贈られた時の勅書は、三跡の1人「小野道風」が書いており『智証大師諡号勅書』として国宝に指定されている。
2023年5月25日にユネスコの「世界の記憶」に、東京国立博物館所蔵の文書類と共に「智証大師円珍関係文書典籍」として登録された。 世界記憶遺産に登録された国宝は『慶長遣欧使節関係資料』『御堂関白記』『東寺百合文書』がある。
国宝の内訳
俗姓并僧位関係 6種
入唐関係文書
求法目録 5種
伝法関係 10種
将来経典等 8種
自筆本 3種
付法印信関係其他 9種
この国宝を観るには
三井寺には宝物館の「文化財収蔵庫」があるが、常設展示はされておらず、特別公開時に限られる。 博物館等の展覧会に出展されることもある。
公開履歴
2024/1/29~7/31 三井寺 文化財収蔵庫
2024/4/13~6/9 奈良国立博物館「空海 KUKAI」
2023/7/4~7/30 大津市歴史博物館「三井寺の唐時代のパスポート」
2023/4/22~不明 三井寺 文化財収蔵庫
2022/4/12~5/22 京都国立博物館「最澄と天台宗のすべて」
2022/3/19~確認中 園城寺(三井寺)文化財収蔵庫
2022/2/8~3/21 九州国立博物館「最澄と天台宗のすべて」
2021/10/12~11/21 東京国立博物館「最澄と天台宗のすべて」
2020/10/6~11/29 九州歴史資料館「福岡の至宝に見る信仰と美」
2019/10/1~12/8 三井寺 文化財収蔵庫「秋の特別公開」
文化財指定データ
【台帳・管理ID】201-795
出典:国指定文化財等データベース一部抜粋
【指定番号】00021-00
【種別】古文書
【指定名称】智証大師関係文書典籍
【ふりがな】ちしょうだいしかんけいもんじょてんせき
【国】中国・日本
【時代・年】唐~平安
【所有者】園城寺
【国宝指定日】1963.07.01